プロローグ 〜 変身物語 〜
わたし、魔斗華12歳、魔法少女。
春から國立千葉魔灋大學魔灋敎導學部附属中學校の一年生。
三歳の時、要町内魔法少女大会で6位に最年少で入賞してから魔法少女街道まっしぐら。
あ、そうだ。魔斗華というのは、勿論、魔法名。
某魔法少女アニメのヒロインとK-1ミドル級チャンピオンの名からインスピレーションを受けてつけました。
旧魔法名は、7ー8。これは、別の某魔法少女アニメのヒロインと千葉の県花から、当時所属していた外記団の主宰がつけてくれたんだけど、ダサいので辞めました。
春休みなのでMPを貯めようと街を散策。
MPっていうのは、マジックポイントのこと。
Mポイント、っていったほうが馴染みがあるかな?
そうそう、提携しているお店で商品購入とかサービス利用すると付与される、アレ。
わたし達、魔法少女にとってMPは、ただのポイント還元とかじゃなくて、もっと重要なモノ。
呪文とか魔道具とか購入するのに使える唯一の仮想貨幣、それがMP。
魔法少女の場合、代金支払い以外でもポイント付与されます。
その方法が、冥世の仝儕を退治した後、“組合”から受け取る報酬、これがMP。
わたしは、変身デバイスがスマホなので、ガマぐちケータイ機能をそのまま利用、とっても便利。
個別のマジックショップから世界最大のショッピングモールAmazing.comでの購入にも使えるから超便利。
冥世の仝儕っていうのは、お化けみたいな、幽霊みたいな、ゲームに出てくるようなモンスター。
結構厄介な連中で、人間に危害を加えるような危険なモノも多いので、わたし達、魔法少女が出番になるの。
魔法少女がみんなの憧れの存在なのは、これが大きな理由なの。
今日もいつもと同じコースを徒歩。
院内から栄町に抜け、ハミングロードを通り、千葉中央公園へ。
ここで折れて信号を渡り、富士見のナンパ通りを進み、スクランブル交差点を渡って国道14号へ。
千葉トヨタを右折、JR千葉駅西口迄北上、西口階段を上って北口ロータリー、千葉公園方向に進み、池尻地下道を抜けて東口。フクロウ交番方面から左折して千葉市民会館方面に歩き、要町に到着。
このJR千葉駅時計回り周回ルートは、わたしが作った粗製龍脈で「万葉要街路巡り」と呼んでます。
比較的人通りが多く、小学生の足でも何とか回れ、しかも、冥世の仝儕との遭遇率も高い、魔法少女に打って付けのコース。
いつも利用してるから封縛を自動発動させるためのポイントを幾つか設置済み。
封縛っていうのは、魔法少女特有の一種の結界のようなもので、これを張った範囲内では魔法少女の魔力と身体能力は平時の約3倍になり、この空間内の造物主に近しい存在になるの。だから、封縛内であれば、冥世の仝儕との闘いで街が傷付いても修復可能だし、聖職者特有の奇蹟を起こすことも叶うの。
冥世の仝儕も封縛に似た鬪洞を発生させるんだけど、これは要注意。
──という訳で散策、散策。
栄町公園の方で封縛が自動発動。
“なに”かが引っ掛かった。
栄町公園っていうのは、公園とは名ばかりの金網に囲まれた雑草だらけの空き地。
この辺りは、環境がよくないので大人達は行ってはいけない、っていわれてるんだけど、魔波探知アプリが示す方向には、凄いMESがあるみたい。名うて等並の魔力。
今の装備品だと若干不安はあるけど、行かなきゃ、だよね!
怪しげな街角に走り込みながら変身スマホMagiPhoneを取り出すの。
見窄らしい公園に飛び込みつつ、魔法の合言葉!
『リリカル・マサクル・グリモワール♡』
魔法少女アプリをポチッ。
起動音──メタモルフォーゼッ
両目を閉じて吹き上がる風を全身に受ける。
続いて、 大音量のBGMと共に光のマジカルエフェクト発生。
あらゆる角度からのカメラアングルを伴い伸身捻り、一瞬だけ素っ裸。
体の各種部位が輝き、磨かれた宝石を鏤めた稀少金属の鎧が出現。
全ての部位の装甲が装着されたら目をカッと開いてポージング。
かっこよく決めた背後ではピンクのスモークを上げる爆発。
──チェーンジ・ウィッチ・アームド・フェノミナン!
魔法少女具足流妓完成!
そして、名乗り口上。
「蓮池に咲くピンクの大輪の花、魔法少女魔斗華、悪者殺す!皆殺す!大正義執行の為、舞い殺します!」