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第97話 そして再生都市へ

「分かったわ、兄様。」


 クライスと連絡を取るアン。

 帰還祝いから一夜明けて。

 これからの事を伝達する。

 アンも、クライスの真似をして銀のインカムを付けていた。

 クライスの金の糸と連結可能。

 アンだから出来る芸当。

 格納庫にあった金の模様は、地下倉庫へ作り替える時に消してしまったが。

 クライスから延びる金の糸の先を、アンが作り出した銀の物質に付けておいたのだ。

 なので、何時でもやり取りが出来る優れ物。

 正に連携技。


「セレナ、ロッシェ、メイ。出発の準備よ。」


 アンが声を掛ける。


「やっとかよ。待ちわびたぜ。」


 右肩をグルグル回し、荷物選びに入るロッシェ。

 選別を手伝うセレナ。

 黙って見ているだけのメイ。

 使い魔は人の言う事をあまり聞かない。

 クライスが特別なのだ。


「さて、問題は……。」


 アンは少し出払った。




 アンとの通信を終え、一息付くクライス。

 水をコップで持って来るラヴィ。


「はい、お疲れ様。」


「ありがとう。」


 そう言って、水を一気に飲み干す。

 空のコップを渡して、クライスは言った。


「それで、例の件はどうなった?」


「あんたの考え通りに動くみたいよ。本当に、良くそんな事を思い付くわね。」


「適材適所、だろ?」


「それはそうなんだけど。」


 感心するやら、呆れるやら。

 ラヴィの感情は複雑だった。




 クライスの考え。

 そして出払ったアンが向かった先。

 それは1つの流れとなった。




 ウイムに住む、かつてのドグメロの住人。

 騙されたと知って寝返った、ウイムへ侵攻したダイツェン軍。

 そしてアンに土下座させられた騎士を含む、マキレスへ侵攻したダイツェン軍。

 このまま戻っても、失敗した責任を取らされるのは確実。

 死をもって。

 騎士道にとって、それは望む所では無い。

 民の為に死ぬ事は有っても、支配者の尻拭いの為に死ぬなんて考えは無い。

『それなら』と、クライスが提案した事。

 壊滅状態にある、ドグメロの町。

 その復興に参加すれば良い。

 マキレスから来て、ウイム行きとダイツェン行きへ別れる三叉路さんさろ

 実は、前はドグメロへ続く街道も連結していた十字路だったのだ。

 見捨てた訳では無いが。

 行き辛い空気があって、誰も暫くは近付かなかった。

 コンセンス家がこっそりと墓参りする位。

 その内に道がすたれたのだ。

 ならば、この機会に蘇らせれば良い。

 幸い、人足は十分。

 しかも軍事力がある。

 ウイムに居る者は〔ウイミアン〕、マキレスに居た者は〔マキレシアン〕と呼称され。

 マキレシアンはウイミアンの傘下に入った。

 その上に、元のドグメロの住人〔ドグメリアン〕が位置する事となった。

 しかしこれは復興の際、便宜上区別する必要が有ったから付けた名称で。

 決して階級制度を敷いた物では無い。

 マキレシアンの内騎士10人は、特別に監督役としてドグメリアンと同等の扱いを受けた。

 後で分かった事だが。

 騎士の内3人は馬から降ろされ、兵士と行動を共にしていた。

 代わりに馬にまたがっていた者は、ナセルと同じとんずらギルド所属の盗賊。

 逃げて行く影は、そのうちの1人。

 道理で逃げ足が素早い筈。

 逃走に慣れていたのだ。

 もしかすると、この事態を親父とやらは想定していたのかも知れない。

 万が一の伝令役を残す為に、騎士と入れ替わらせた……?

 騎士なら簡単には処刑されない事を、考慮に入れていた可能性。

 相当切れる奴だ。

 クライスは感心した。

 そしてデュレイ将軍に帯同しているかも知れない未知の脅威へ、気を引き締めた。




 大体の事を騎士達に話したアン。

 従わざるを得ない状況ではあるが、これは一種のチャンスでもある。

 ダイツェンでの騎士の称号は剥奪されるだろうが、スコンティで再び騎士に返り咲く事も出来よう。

 働き如何いかんでは。

 そう前向きに考えて、アンの提案を受諾した。

 元ダイツェン軍もそれに従った。

 死ぬよりはまし。

 兵士はその事を痛感していた。

 そうすれば、何時かは家族の元へも帰れるだろう。

 それまで生き延びなければ。

 こちらも前向きに取っていた。




 フサエンやシェリィに見送られながら、クライス達とドグメリアン・ウイミアンが出発。

 同時にアン達とマキレシアンも出発。

 そして2つが、三叉路で合流。

 一行以外は、ここでドグメロに向かった。

 再建物資や食料をたんまり持って。

 簡単では無いだろうが、険しい道でも無い。

 何時でもウイムから助けが来る。

 密に連携し、共に歩んで行けば。

 必ず前に道はある。

 そう信じさせる物を、一行から皆感じていた。

 ここから、再生都市ドグメロが誕生した。

 再生技術はここで発展し、各地で利用される事となる。

 良い技術者がここで育っていった。

 技術を学びたい者が増え、町は栄えた。

 しかし、それはまだ先の話。




「そういや、1つ気になってるんだけど。」


 ラヴィが、思い出した様にクライスに尋ねた。


「何だい?」


「シェリィって、エミルが見えたんだよね?」


「そうだよ。」


 エミルが代わりに答える。


「でも普通の人はさ、声までは聞こえないんだよね?シェリィはエミルと会話したんでしょ?何で出来たんだろう……?」


「そう言われれば、そうだな。」


 クライスも、ふむと考えた。

 町の復興にも参加せず、ウイムに残るみたいだし。

 そんな事、エミルにはどうでも良かったが。

 今、は。

 それより。


「前見て!」


 エミルが叫ぶ。

 目の前に、鬱蒼うっそうとした森。

 横にずらりと広がっている。


「またあ?」


 うんざりするラヴィ。

 国境を越えた時よりも、奥が深そうだった。

 なるほど、盗賊が住処すみかにする訳だ。


「仕方ありませんよ。急ぎましょう。」


 セレナはもう、たじろがなかった。

 ロッシェの手前と言う事もある。

 でも先の戦闘で、セレナも成長していた。

 それはロッシェも一緒。

 ラヴィもああは言ったが、心底からでは無かった。

 皆一皮むけていた。

 それを頼もしく思う、トクシーだった。

 そして、森へと差し掛かった。

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