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第86話 町の周りを炎が!

 町が火で囲まれている。

 少女の言葉に絶句する、ラヴィとトクシー。

 まだ上手く歩けない少女を背中に背負って、クライスは歩き出す。

 ウイムの町へ向かって。

 続く残り2人。

 3人のその足は、だんだん速くなっていた。




「あ!あれ!」


 前方を指差すラヴィ。

 街道の先には、赤々とした光が見えている。

 あれは炎か?

 トクシーは思わず駆け足に。

 それに続くラヴィ。

 クライスは一旦少女を降ろした後、薬を飲ませた。

 ガクガクしていた少女の足が、漸く止まる。

 それを確認すると、クライスは再び少女を負ぶって2人を追い駆けた。




 町が見えて来ると。

 恐らく、ぐるりと周囲を取り囲んでいるであろう。

 木で出来た柵が。

 赤々と燃えていた。

 いたのだが。


「おかしいわね。」


 ラヴィが気付く。

 炎に近付いても、熱くない。

 それに柵に近い民家がある様だが、延焼していない。

 トクシーも首をかしげる。

 少なくとも今、町中に人は出歩いていない様だ。

 それも妙。

 これだけ盛大に燃えているのだから、パニックになって混乱していても不思議では無い。

 柵の炎を消火しようとする動きも無い。

 これはどう言う事だ?

 あの少女は、《魔の火》との言い回しを使った。

 ただの火では無いのか?

 詳しく聞く必要がある。

 取り敢えず、クライスが到着するまで待機するしか無い。

 2人はじっと待った。



 少し遅れて、クライスが到着。

 少女を降ろす。

 クライスの処置で回復した所を見ると、命からがら逃げて来たのは本当。

 服に付いたすすも、燃えた何かによる物だろう。

 しかし合点がいかない。

 人気ひとけが無さ過ぎる。

 ラヴィは少女に問いただした。


「これはどう言う事?町が燃えているんじゃないの?」


 少女は答えた。


「炎が急にぐるっと柵を取り囲んだんです!それを見て、慌てて逃げ出して……。」


 そこで少女も気付く。


「あれっ?家が燃えて無い?」


 あちこちを見渡すが、一軒の被害も無い。

 ?

 混乱する少女。

 クライスが尋ねる。


「君が逃げて来たのは、町のどの辺からだい?」


「あれに見える、馬小屋からですけど……。」


 町の入り口近くに、馬を繋ぎとめ置く小屋が確かにある。

 しかし繋がれている馬は、あくびをするだけでのんびりしたもの。

 ラヴィが言った。


「クライス、これってもしかして……幻?」


「それに近いな。」


「え!どう言う事です!」


 少女が驚く。

 クライスが解説する。


「恐らく君は、発火地点の傍にいたんだろう。服が汚れたのはその為だ。でも……。」


「でも?」


 オウム返しの少女。


「それは演出で、実際に燃え広がりはしていない。かと言って、魔物による幻でも無い。だとすると、こんな事が出来るのは……。」


「?」


 訳が分からなくなる少女。

 クライスはラヴィに話を振った。


「前に『土の精霊に会った』って言ったよな?」


「ええ。力を回復させる為に来たとか何とか。」


「同じ様な事が起きてるんだと思うよ。」


「そ、それじゃあ原因は……。」


「【火の精霊】と呼ぶべきなんだろうな、ここは。」


「精霊!ですか!」


 目を真ん丸にして声を上げる少女。


「何らかの理由で、文句を言いたくなったんだろうよ。町を取り囲んでいると言う事は、〔町民共々、支配者のコンセンス家に〕だ。」


『あくまで仮定だけどね』と、クライスは付け加える。

 そこで『あっ!』と声が出る少女。

 思い当たる節があるらしい。


「そう言えば……。」


「何?」


 ラヴィが相槌。


「最近、兵士が慌ただしく町中を動き回ってました。町ではみんな、『戦でも始めるんじゃないか』と噂して。」


「いや!そんな事、勝手に出来る筈が……。」


 トクシーはそう言いかけて、止める。

 コンセンス家の立ち位置が分からない以上、変な詮索は無用。

 クライスは少女に言う。


「その話、もう少し詳しく聞かせてくれないか?ええと……。」


「あ、申し遅れました。私、馬小屋で世話係をしている【シェリィ】と申します。」


「じゃあシェリィ、馬小屋の中で話そうか。」


 そう言って、入り口のアーチをくぐろうとするクライス。

 咄嗟とっさに止めようとするシェリィ。

 しかし逆に、炎はクライスを歓迎するかの様にさっと離れた。

 頭を下げるクライス。

 手を振る様にゆらゆら揺れる炎。


「さあ、行きましょ。」


「え?え?」


 ラヴィに手を引っ張られ、続いて潜るシェリィ。

 トクシーも続く。

 スタスタ歩くクライスに、不思議な力を感じるシェリィ。

 傍でラヴィが囁いた。


「相手が精霊なら大丈夫よ。あいつは世界で一番、そういうのに愛されてるみたいだから。」


「?」


 頭がこんがらがりながら、現実を受け入れようと必死なシェリィだった。

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