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第85話 特別製の地図を手に入れよう

 デュレイ将軍に成り代わっている〔魔物ラピ〕から得られた情報は以下に。



 国内は王族擁護派、王族反対派、どれにも属さない日和見派の3勢力に別れている。

 それらを構成するのは王族、12貴族、《それら以外》の支配者、その他大勢。

 それら以外とは、人間だったりそうでなかったり。

 土地の有力者だったり、賊だったり。

 放棄された地、アンタッチャブルな地もある。

 それが〔妖精の暮らした痕跡〕〔魔法使いが住む地〕などに該当する。

 国内の詳しい地図は、12貴族であるコンセンス家で貰えるらしい。

 コンセンス家は普段〔ウイム〕と言う町で暮らし、そこから各地へ指示を出しているそうだ。



 情報からクライス達が考えた事。

 詳しい地図は持っておいた方が良い。

 12貴族が所持しているのだから、恐らく最新版。

 こちらは帝都に向かうだけのつもりだったので、大体のざっくりとした地図しか持っていなかった。

 それに、この地域の支配者に面会しておくのも悪く無い。

 どの派閥に属するのか、それが分かっただけでも敵か味方か判別し易い。

 どの道、ヘルメシア帝国領内をを駆けずり回りそうな流れ。

 皇帝に謁見して〈はいお終い〉、とはならないだろう。

 ならば、自ら敵味方を判定した方が手っ取り早い。

 少し本街道から流れるが、仕方無い。

 結局、まずはウイムを目指す事にした。




 ブロリアから帝都ガティを目指すなら、真っ直ぐ北へ。

 その途中、スコンティ領内で西に行くとウイム。

 構わず北に行くと、途中でダイツェンへ入る事になる。

 スコンティとダイツェンの間にも領域があり、そこは高度な政治的戦略により一般人には知らされていない。

 ただポツポツと町はある様だ。

 因みに魔境は、帝都から北西の方角に位置する。

 それも記載されている様だ。

 12貴族と王族しか持たない、価値の高いその地図は通称【P】と呼ばれていた。

 ここで幾つか疑問。


 1.アリュースが持っているのでは?

 いや、それは国家機密に相当する。

 国外へ持ち出せる訳が無い。

 だから、使者の旅用として渡された地図はざっくりしているのだ。

 まあ、ラヴィが手に入れた時点で秘匿価値は無くなるのだが。


 2.錬金術師が探知すれば?

 それが出来れば、そんな地図は必要無い。

 支配が空白の地域は、何らかの事情を抱えている。

 錬金術が効かない土地も当然在る。

 そもそも、魔法使いが許す訳が無い。

 流石のクライスも出来ない相談。


 3.行商人はどうしてるの?

 彼等は街道沿いに移動すればいいだけ。

 そこにしか大きな町は無い。

 商売に影響しないのだ。

 街道の地図さえあれば良い。

 なので、行商人を通じて手に入れる事は出来ない。


 4.トンネルの出口からは?

 攻め易い様に街道が新しく整備された。

 なので問題は無い。

 一般の地図には記載されていないだけ。

 軍事上の機密事項だからだ。


 以上から、Pの価値は一般常識からかけ離れる程高いのだ。

 まあ、クライスが所構わず破壊しながら進めば。

 強引に突破出来無くも無いが。

 それでは使者として行動する意味を失う。

 軍事侵攻と変わらない。

 なるべく穏便に。

 それは、敵と対峙した時も同様。

 争いは、避けられるに越した事は無いのだ。

 だからこそ判定しに行く。

 それだけ。




 荷車を伴って寄り道するには、少々骨が折れる。

 なので、途中の町【マキレス】で荷車を止め置くしか無かった。

 荷車に付く留守番役を決め、ウイムへと向かう人間を絞る事にした。

 案内役のトクシー。

 交渉役のラヴィ。

 そしてクライス。

 残りは、荷車のお守りを兼ねながら。

 町を拠点として色々探る事に。

 勿論、不満を漏らす者も居る。

『折角旅に出たのに、また慰留とは……』と嘆くロッシェ。

 メイも、張り切っていた割に残される側へと回されるのを嫌がった。

 それぞれ。

 セレナは〔稽古を付けよう〕と、アンは〔聞きたい事がある〕と説得した。

 渋々納得する面々。

 それでラヴィはホッとした。

 残される嫌味か恨み節か、ロッシェはクライスに囁く。


『姫さんとの仲、ちったあ縮めて来いよ。何も進展が無かったら許さんからな。』


『はいはい』と適当に流すクライス。

『覚えてろよー!』と叫ぶロッシェを尻目に、町を離れるのだった。




「まさかこんな展開になるとは。」


 一筋縄では行かないとは考えていたが、トクシーにとっては誤算だった。

 一方。

 急な予定変更に慣れたラヴィとクライスは、限られた荷物を背負って淡々と進む。

 グスターキュ帝国内では、行商人と偽って旅をしていたのだ。

 本当に買い付けに来る人も居た。

 その度に適当にアンが錬成し、物を売っていた。

 突然出くわす本当の客に、最初は戸惑っていたラヴィもすっかり慣れた。

 だから、ちょっとやそっとの事態には対処出来る心構えを持っていた。

 生活の場を変え、流浪人の様な暮らしをしていたクライスは尚更。

 ピンチをチャンスに。

 自然とそんな考えが備わっていた。

 2人を見て、頼もしく思うトクシー。

 そして自分の柔軟性の無さを痛感し、ここで出来れば習得したいと考えた。

 トクシーにとって、2人は人生の師と成り得る者。

 大げさかもしれないが、その位のインパクトがトクシーにはあった。

 自分より幼い人達が、何故こんなに落ち着き払っているのか。

 そのバックボーンの一端へ触れる度におそれ、かしこまった。




 マキレスから離れる事半日。

 分かれ道に着いた。

 北へ行けば帝都。

 西に向かえばウイム。

 念の為、クライスは行先を示す看板に印を付けた。

 金で出来た小さな釘。

 目立たないが、異常を感知すればマキレスにいるアンへと連絡が行く様に。

 3人は顔を見合わせ、西へと歩いて行った。



 スコンティは緑豊か。

 なので街道は、木々の中を通っている。

 しかもきちんと手入れをされているのか、木々は一定の間隔で植えられていた。

 トクシーは自慢気に話す。


「この辺りは色々な意味で整備されています。何せ12貴族の住まう町へと繋がっていますから。」


「でしょうね。変な輩がひそまれては面倒ですもの。」


「あんな風にか?」


 クライスが指差した先。

 明らかに誰かが隠れていた。

 しかし、姿は弱々しい。


「誰だ!」


 トクシーが咄嗟とっさに槍を構える。

 すると、隠れていた影はバタッと倒れた。

 慌てて駆け寄るラヴィ。

 それは、自分と同い年位の少女だった。

 所々、すすけた服。

 譫言うわごとの様に何かを呟いている。

 ラヴィが耳を近付けると。


「誰か……助けて……町が……。」


 そう言うと、少女は気を失った。

『何事?』とギョッとするトクシー。

 明らかに異常事態。

 クライスがアン特製の水を無理やり飲ませると、少女の顔色が見る見る良くなった。

 少女は気が付くと、ラヴィを見てガッと掴み掛かり声を絞り出した。

 か細い声を。


「どうかお助けを……!」


「落ち着いて。」


 ラヴィは諭す。

 安心出来ると分かると、少女は『ハアーーーッ』と大きく息をした。

 ラヴィが促す。


「ここは安全よ。何があったの?冷静に話して頂戴。」


「はい、私はウイムと言う町から避難して来ました。今、町は……。」


 そして、眉間にしわを寄せて言った。




「魔の火で囲まれているんです!」

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