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第74話 主役、独り思う

 その日の夜は、町中どんちゃん騒ぎ。

 領主から一般人まで浮かれていた。

 緊張の糸が切れた様に。

 その渦に皆巻き込まれて行った。

 しかしその中に居なかった者、4人。

 3人はまだ沙汰が下りていない咎人とがびとのヴェード、ミセル、ヨウフ。

 そしてもう1人は……。




「あー、こんな所に居た。」


 ふよふよ飛んでいるエミル。

 城壁の一番高い場所。

 外が一望出来る所に、クライスが独り座っていた。


「みんな探してたよ。」


「……そうか。」


「苦手なの?あの賑やかさ。」


「俺には眩しくてな。」


「そうかなあ、うちはクライスが一番輝いてると思うけど。」


 そう言って、クライスの膝にちょこんと座るエミル。


「エミルは良いのかい?寧ろ好きな方だろう?」


「だって見えない人が殆どだもん。退屈だよ。」


「それもそうか。」


「えへへ。」


「……ありがとな。」


「ん?」


「俺が寂しがってると思って、来てくれたんだろ?」


「それもあるかな。」


 2人で、少しの間空を見上げていた。

 見えない存在と言う者は、くも悲しきもの。

 孤独を癒す様に、2人は星の瞬きを見た。




 暫くして、エミルが立ち上がる。


「そう言えば、紹介したい奴が居たんだ。」


「そうなのか?」


「うん。ちょっと呼んで来るよ。」


 エミルは、プーンと飛んで行く。

 クライスはまた一人になった。

 彼は考える。

 俺は何をしたい?

 何になりたい?

 この旅で、それが分かると思ったんだが。

 でも増えるのはあの《悪夢》ばかり。

 あれは何なんだ?

 これからの俺が進む道に、関係があるのか?

 だとしたら、行かねばならない。

 そこへ。

 たださねばならない。

 そいつに。

 これは、誰にも言えない。

 誰にも相談出来ない。

 己自身の問題。

 その時は。




「お待たせー。」


 エミルが帰って来た。

 良く見ると、トラ猫の様な者を連れていた。


「屋敷の地下で会ったんだ。この領地を見張ってたとか何とか。」


「あんたがクライスかい?ご主人から聞いてるよ。」


 猫が普通にしゃべった。

 と言う事は。


「使い魔の【メイ】よ。これでも乙女。宜しくね。」


 挨拶して、頭を下げる。


「こちらこそ。見張りだってんなら、情報はもう……?」


「安心して。暗殺を仕組んだ連中とは行動を共にしていないよ、ご主人は。」


「そうか。ほっとしたよ。後、《連中》と言う事は……。」


「単独犯な訳無いじゃない。根はもっと深いよ。」


「ご主人とやらは、黒幕の正体も知っている……?」


「さあね。『いずれ尋ねて来る』って言ってたから、直接聞けば?」


「やっぱりそうなるか……。」


「どう言う事?」


 横でエミルがハテナマークを浮かべている。

 メイが補足する。


「つまり、こっちに来る必要があるのさ。解決するには。」


「こっちって?」


「決まってるでしょ?ヘルメシア帝国よ。」


「えーーーーっ、面倒臭い。」


「仕方無いよねえ?」


 明らかに嫌そうなエミル。

 当然の事の様に言うメイ。

 クライスはメイに尋ねる。


「ご主人は、何故こちらの動向を探ってるんだ?」


「決まってるじゃない。自分の身を守る為よ。」


「ほう……?」


「ご主人の存在は秘匿されてるんだ。一部以外にはね。」


「ややこしいんだね。」


 エミルが相槌を打つ。


「この世界では異質な存在だからね。あんたなら分かるだろ?」


 そう言ってクライスを見るメイ。

 静かに頷いた。

 エミルに向き直って、メイは続けた。


「あんたも来るんだよ。かつての痕跡を見るのも悪くないさ。」


「え?何の?」


「聞いていないのかい?全く、今の妖精界は秘密主義なのかねえ。」


 少し呆れて、言葉を繋げる。


かつて妖精は、あちこちに住んでたんだよ。【或る事件】まではね。」


「そうなの!知らなかった……。」


「敢えて黙ってたのかも知れないけどね。『自分の目で確かめて来い』って意味で。」


 と言う事は……。

 少し考え込んだメイは、ポツリと言った。




「ご主人が言ってた【その時】が、来たのかもしれないね。」




「……。」

「?」


 クライスは薄々(うすうす)気付いていた。

 エミルはさっぱり。

 メイは思った。

 その為にここへ遣わされたのか。

 なら。



「あたいが付いてるから、何とかなるさね。」


「付いて来るの!」


「そう。文句は言わさないよ。良いね、クライス?」


「分かったよ。それがお望みなのだろうからな。」


 こうして、また一行に加わった珍客。

 宴の中、他の仲間は知る由も無い。




 これからの旅は、偶然なのか?

 それとも必然なのか?

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