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第69話 リゼの憂さ晴らし

 新しく一行に加わった仲間。

 改めて自己紹介。


「俺は【ロッシャード・ケインス】。姉さんを探して旅をしていた見習い騎士だ。宜しく頼むよ。」


「宜しく、ロッシェ。」


 握手を交わすセレナ。

 ロッシェと気質が合うのだろう。

 すぐに意気投合した。


「セレナの方が戦士として先輩なんだから、戦闘に関する技術を教えて貰うといいわ。」


 ラヴィのお墨付きを貰い。

 ロッシェはセレナから、剣捌けんさばき等の手ほどきを受ける事となった。

 お互い『宜しく』と再び挨拶。


「早速相手してくれよ、《師匠》。」


「その呼び方は止めて!恥ずかしいじゃない。」


「良いから。あっちに行こうぜ!」


「もう、強引なんだから……。」


 それでも悪い気はしないセレナ。

 屋敷の庭の方へ出て行った。


「くれぐれも、植え込みの木などを傷付けない様にして下さいねー。」


 念を押すユシに対し、『分かったー!』と生返事のロッシェ。

 不安になるトワ。

 背中をポンと叩くラヴィ。


「セレナが居るから大丈夫。あれでも宮中では凄腕なんだから。」


 剣でも弓でも何でもこなす。

 そうでなければ、王女は守れない。

 なので、木までも練習相手に見立ててシゴく事は朝飯前。

 男なら、立派な騎士になっていただろうに。

 宮中ではそう言う声も聞かれたが、『同性だからこそ守れる者もある』とセレナは前向きだった。

 現に今こうしている事。

 それが証拠。

 そんなセレナにロッシェは付いて行けるのか?

 そっちの方を心配するラヴィだった。




 町中では、ぶつくさ文句を言いながら歩いている女性。


「スカばっかり!ほんっと、スカばっかり!」


 錬金術師の隠し部屋と聞いて乗り込んだは良いが、金銀財宝の様な物はわずか。

 これなら、クライスが置いて行く金の石を拾った方がまし。

 ただ働きをさせられた気分で、納得が行かないと考えているリゼだった。

 子分を質屋に行かせ、自分は気分転換に町中を散歩。

 何処にこのイライラをぶつければ……。

 その時。


「お前はあの時の……!」


 声の方を振り返ると、暇を持て余してふらついているミセルだった。

 ぶつかったのに謝らない事を、未だに根に持っていた。

 こいつを相手に憂さ晴らしをするのも、悪くないねえ。

 さささっと傍に近付くリゼ。


「おいおいあんた、どうしたんだい?折角の色男が台無しだよ?」


「い、いきなりおべっかか!良い加減にしろ!」


「そんなに邪険にしなくても良いじゃないかい。前の事は謝るからさ、ねえ。」


 両手を合わせて『ごめんね』と拝むリゼ。

 色香に惑わされたのか、まんざらでも無い顔になるミセル。


「わ、分かれば良いんだ、分かれば。」


「でさあ、何うろついてるんだい?」


「記憶が飛んでいる上に、部屋に閉じ込められていたからな。面白い物はないかと思ってな。」


 ミセルのその言葉に、リゼは何か思い付いた様だ。

 憂さ晴らしついでに、金ぴかを困らせてやろうかねえ。

 リゼは不敵な笑みを浮かべる。


「じゃあさあ、あたいが連れてってやるよ。面白い所にさ。」


「……本当か?」


「ああさね。その前にちょいと寄る所があるけど、良いかい?」


「……分かった。でも面白くなかったその時は……。」


せい々、あたいを好きにするが良いさね。」


 そう言って、ミセルの手を強引に掴み、引っ張っていくリゼ。

 その顔はかなり怪しいが……?




「どうだい?自分じゃ無いみたいだろう?」


 リゼが満々の笑みをたたえる。

 どちらかと言うと、笑いをこらえている感じだが。


「何だこれは!侮辱する気か!」


 貴族には似合わない、継ぎぎだらけのドレス。

 頭は、金色の長髪かつら。

 強引に女性の格好をさせられたミセル。

 この女、どうしてくれよう……!

 怒りが込み上げて来る。

 そこへ、リゼがひそひそ。

 その言葉を聞いて、ミセルの怒りが収まる。


「そう言う事なら……。」


 そして2人は、或る所へ向かう。




「ここさね。」


 着いたのは、トンネルの入り口だった。

 リゼは、ガセを掴ませたクライスに。

 報復として、敵国の者を逃がそうと考えた。

 逃亡が発覚すれば、クライスの評価はがた落ち。

 悔しがる顔を一目拝んで、後はとんずら。

 ヘリックとボーンズは、まあ何とかなるさ。

 あの生意気な坊やに赤っ恥を掻かせれば、それで良い。

 リゼもちゃっかりと老婆の変装をして、準備万端。

 意気揚々とトンネルに入ろうとした。

 そこで早速、入り口を護衛している近衛隊に捕まる。


「ここは立ち入り禁止だが?」


「どうもどうも、あたい等はこの中の調査を頼まれましてねえ。」


 適当な嘘をつくリゼ。

 しゃべると男だとバレるので、頷くだけのミセル。


「そんな話は聞いていないがなあ。」


「追って、お達しが来ると思いますよ。さあさあ、行こうかねえ。」


 首をかしげる近衛兵の横をすり抜け、2人は入って行く。

 後ろから何か声を掛けられたが、無視して進んだ。




「どうやら無事に入れたみたいだな。」


 ミセルがやっと喋る。

 黙っていると息が詰まりそうだった。


「あたいにかかれば、何て事無いさね。」


『ふふん』と得意気なリゼ。


「よし、このまま突っ切るぞ!我が領土に戻れた時には、何か褒美をやろう。」


「そいつは豪気だねえ。」


 しめしめ、これで胸がスウッとしたよ。

 じゃあね、坊や。




「俺にも褒美をくれよ。」




「げっ!」


 前からの声にひるむ2人。

 そこには例のスカした男。


「何であんたが……!」


 思わず口走るリゼ。


「何でって……お?その女装、似合ってるじゃないか。」


「あたいの自信作さ……って、分かるのかい!」


 ビビるリゼ。

 あっさりとした返しのクライス。


「俺が何者か、忘れたのか?」


 言われて気付く。

 ミセルの首に、不自然に付けられた金の輪。

 ただの貴族のおしゃれだと思っていた。

 しまった……!


「何ならお前さんにもあげようか、それ。」


「いやいやいや!遠慮しとくよ!」


 イライラ解消のつもりが、余計にイライラ。

 底知れぬ実力に、恐れをなすリゼ。


「そんなに引かなくてもなあ。まあ良いや、その女装男を町に戻しといてくれ。」


 クライスはそう言うと、ズンッとリゼに手渡す。

 両手で抱える程の大きさの金塊を。

 駄賃の代わりの様に。


「しょ、しょうがないねえ。」


 やっぱりこっちの方がましか。

 楽に手に入る財宝で牙を抜かれて行く、盗賊の頭。

 結局逃げられないと悟るミセル。

 ミセルにクライスは言う。


「そうがっかりしなさんな。事情によっては国へ戻れるだろうよ。」


「信用ならんな。」


「判断は、旅先でしてもらおうか。」


「何処かへ連れて行くのか?」


「ああ。《お友達》を連れてな。」


 浮かれ上がって、何の事やら分からないリゼ。

 釈然としないミセル。

『はいはい出るよ』と、2人の背中を押すクライス。




「あ、出て来た。『先客が居るよ』と声を掛けたのに。」


「ご苦労様。」


 近衛兵に挨拶するクライス。


「どうです?」


「まあ手は打ったよ。これで、怪しい奴は向こうから来れないさ。」


 リゼの様な奴が出て来る事を想定して、クライスはトンネル内に何かを仕掛けた。

 内容は誰にも教えない。

 仲間にさえも。

 でないと効力が薄れてしまう。


「何があっても中に入らない様に。良いね?」


「分かりました!しかし強引に通ろうとする者はどうします?」


「『何が起きても知らないよ』と、口添えをしておけばいいさ。自己責任だからね。」


「了解!」


 敬礼してクライス達を見送る近衛兵。

 屋敷に向かうクライス達。

 丁度その頃、護送されていた《お友達》が到着しようとしていた。

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