表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/320

第65話 新領主、顔見せ

 パラウンドの町では、まだ混乱が収まらなかった。

 怪物が現れて暴れ出したと思ったら、今度は急に人間の姿に戻った。

 そしてノウからの、ビデオレターめいた映像。

 民衆は半信半疑だったが、牢から解放された人々が屋敷から降りて来て事態が一変。

 あの光景は事実だったと分かると、敵国の協力者を探し出す暴徒と化した。

 混乱に乗じて逃げようとしていた人間をことごとく捕らえ、中央の広場へと連行した。

 その中に、或る者が立って叫んだ。


「反逆者には死を!」


 そんな事まで望んでいなかった民衆も。

 煽り立てる者が群衆の中から次々と現れると次第に流され、最後には大合唱になっていた。


「「殺せ!殺せ!」」


 連呼される残酷な言葉。


「まず俺がやる!俺に続け!」


 言い出しっぺが木の棒を叩き折り、尖った先を捕らえた人間に突き付ける。

 振りかぶり、刺そうとした瞬間。




「待ちなさーーーーい!」




 甲高い声がこだまする。

 民衆が声の元を見ると、ちょっとおしゃれに着飾った少女が立っていた。

 あれは……まさしく!

 幻の中で見た姿。

 元領主の忘れ形見。

 それに控えしは、近衛隊隊長のヘン。

 縄で縛られたサーボを連れていた。

 そして……誰だ、あの娘達?

 もう2人付いて来ていた。

 1人が石畳の広場に手を付く。

 すると、捕らわれた人間の居る場所が『ズアアアアッ!』とせり上がった。

 高さ1.5メートル程の壇が出来上がり、横に付いた階段を少女が上がっていった。

 昇り詰めた少女は言う。


「この人達は被害者よ。脅迫されて嫌々従っていただけ。」


「そんなの分かるもんか!」


 言い出しっぺが文句を付ける。

 同じく壇上に登ったヘンが、サーボに繋がる縄をグイッと引っ張って言う。


「お前が命じた。そそのかされて。そうだな?」


 サーボは顔を強張こわばらせながら証言した。


「そ、そうだ。言われて指示したんだ。」


「嘘付け!俺達は騙されんぞ!」


 言い出しっぺが叫ぶ。

 それへの同調者だろう、群衆の中から『そうだ!そうだ!』とヤジが飛ぶ。

 悔しかったのか、サーボが言い出しっぺに向かって怒鳴る。


「何でお前等が自由なんだ!お前等、《敵国の兵》のくせに!」


 一瞬ギョッとなる言い出しっぺ。


「な、何を言い出すんだ!」


「黙れ!領内に手引きしてやったのに、お前等だけ逃げる気か!」


 そのやりとりに、ざわつき出す群衆。

 焦る言い出しっぺ。


「お、俺達は!この国から出た事なんて無いんだぞ!」


「それだって証拠が無いではないか!この大嘘付きめ!」


 罵り合う2人。

 その中で及び腰になる者が何人か。

 不利な状況と判断したのか。

 ヤジが収まる。

 少女が言った。


「ヤジが止んだのが、あんたが怪しい証拠よ。さあどうするの?」


 言い終わるかどうかと言うタイミングで、ダッシュする言い出しっぺ。

 しかし、その場ですっ転んだ。


「適当に裏切者をまつり上げて、自分だけ助かろうなんて了見。そんなの、通る訳無いでしょ。」


 言ったのはラヴィ。

 そして、群衆の中でバタリと倒れる者が何人か。

 皆、足に金の縄が巻き付いていた。


「本当の敵は捕らえたわ。それ等を前へ引き出して!」


 少女が命じた。

 群衆は大人しく従う。

 壇の前にずらりと並べられた連中。

 逃げおおせる算段だったが、何処からか狂ってしまった。

 逆に少女は、壇上の人間の縄をヘンに解かせた。


「もう大丈夫。これからは私の為に尽くす事。良いわね。」


 そう優しく言うと、助かった安堵感からか涙を流した。

 何度も頷き、感謝した。

 続けて少女は、群衆に向かって宣言する。


「苦難の時期は終わりを告げる!私、《トワイニング・エルス・ハウロム》が領主になるからには!」


 新しい領主の就任宣言。

 その姿は少女ながら、とても力強かった。

 途端に観衆は湧き立ち、新領主への期待の歓声を上げた。

 皆に祝福され、嬉しそうなトワ。

 これを以って、正式にハウロム卿となった。

 壇上から縛られた人間は降ろされ、代わりにラヴィが上がった。

 ハウロム卿とヘンは後ろに下がる。

 何だ?

 まだ何か有るのか?

 群衆は静かになる。

 すうううーーーっと息を吸う。

 そして大声を張り上げ、ラヴィは叫んだ。




「グスターキュ帝国第1王女、《マリアンナ・グスタ・アウラル》の名に於いて命じる!領地メインダリーを復興せよ!」




 ラヴィの両脇から銀の塔が1対、ズヲッとせり上がる。

 そこには、《王女この地を訪問、これにて記す》と書かれていた。

 ハウロム卿とヘンが頭を下げる。

 サーボは呆気に取られている所を、ヘンに頭を押さえ付けられた。

 その仕草を見て、本物の王女と確信する群衆。

 かしこまり、かしこまり。

 或る者は膝間付き、或る者は土下座した。

 ラヴィは言った。


「聞こえなかったのですか!私が命じたのは《頭を下げる》事では無く、《頭を上げ前を見て進め》と言う事ですよ!」


 ははーーーっ!

 返事する群衆。

 そして勢い良く各地へ散らばった。

 ふうと一息付いて、『やっと儀式が終わった』と脱力するラヴィ。

 そして、アンの力に感心する。


「いつ見ても効くわね、銀の塔って。」


「まあね。ある意味権力のシンボルみたいな物だから。」


 アンが自慢気。

 近衛隊の面々が集まる。

 ヘンの号令に従って、金の縄で拘束された敵兵を連行する。

 サーボも連行されたが、その間ずっと足掻いていた。


「なあ?ちゃんと協力したろ?俺だけは助けてくれるよな?な!」




「この壇、作ったのは良いけどこの後どうするの?」


 ラヴィはアンに聞く。

『それを決めるのはあの娘よ』と、アンはハウロム卿に振る。

『えっと』と戸惑いながら言う。


「このまま残そうと思う……ます。教訓とする為に。」


 さっきまでラヴィにタメ口を聞いていたので、敬語には慣れていなかった。


「良いのよ、今は私的な〔ラヴィ〕と言う行商人だから。但し、正式な会談の時には敬語でお願いね。これでも一応、世間体を気にする方なの。」


 チャランポランなお姫様のイメージは避けたいラヴィ。

『それは手遅れじゃ……』と思うアン。


「それにしても、良く群衆の中から敵のスパイを探し出せたものですね。」


 ヘンが、ラヴィとアンに感心する。


「あれは、兄様が仕込んだ小人の仕業ですから。」


 私の手柄では無い事を、殊更ことさら強調するアン。

 ヴェードがパラウンドで接触する配下の敵兵全員に、襟に忍ばせた金の小人をこっそり潜り込ませていた。

 ヴェードの首にめられた金の輪は、小人が変形した物。

 クライスにしか外せない代物。

 ついでにミセルにも仕掛けた。

 これで2人はクライスに逆らえない。

 大人しいもんだった。

 尋問に、素直に答えるかは別だが。


「さあ、町に向かわないと。」


 アンはこの様子を見届けたので、安心して報告の旅へと行く事が出来る。

 ロール婆さんの待つ、あの町へ。




 こうして無事、メインダリーを奪還した。

 でもまだやり残している事がある。

 その対応に忙しくなる一行だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ