表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/320

第52話 もうすぐパラウンド

 ノウに付き添うヘン。

 トワを連れて歩くロッシェ。

 クライス達と付き纏う盗賊団。

 三者三様、目指すのは。




 国境沿いの町、首都パラウンド。

 ここは、天然の要塞と呼ばれる条件を幾つか備えていた。

 まずは、背に位置する山脈。

 モッタの傍にある物より、規模が大きい。

 片側を山で包み込む様な構造。

 扇状地に近いが、それとは違う。

 寧ろ『カルデラの峰半分が切り取られた』との言い方が、適しているのかも知れない。

 それが城壁の代わりになっている。

 その対面には川があり、これも堀の代わりを成す。

 橋は架けられているが、ルートによってそれぞれ特徴がある。

 ケンヅに続く橋は、木製の跳ね橋構造。

 ライは、頑丈な石橋。

 イーソは、攻められた時崩し易い様に簡単な構造。

 たもとにはそれぞれ検問所が設置され、怪しい輩が通らない様に目を光らせていた。

 それが衛士の役目。

 近衛隊はそれ等軍隊とは別。

 あくまで領主を守る為の役職。

 だから、ヘンが魔物退治に出かけるのは秘密だった。

 行動が世に知れると。

『何故軍では無く近衛隊なのか』と言う疑問から、不味い方向へ推測が傾きかねないからだ。

 ヘンは領主の使いでちょっと留守にするだけ。

 そう言う事になっていた。




 このままノウを連れて行くと、〔領主の使いとは何ぞや〕と言う問いを投げ掛けられる事は必至。

 ヘンは悩んでいた。

 どう言い訳をするか。

 そこへノウが助け船を出す。


「領主様の命で周辺の視察をしていた所、領地境付近で異変発見。それを証言させる為に私を連れて来ている。これなら自然なのでは?」


「なるほど、それなら堂々と連れて行ける。済まない、学は余り得意では無いのでな。」


「ただの悪知恵です。ふふっ。」


 後ろ手に体を右へ傾けて笑う姿は、高尚な何かを彷彿させた。

 ノウは何者なんだろうか……。

 ヘンをそんな気にさせた。

 柔らかいノウの笑顔は、ヘンの心をときめかせるのに十分だった。




 対照的に、ボロボロの服に身を包んだトワ。

 ロッシェを風避けにして進むのは良いが、風が弱くなり進み易くなると逆に速度を落とした。

 まるで町に近付きたく無い様な姿勢。

 これまでの事をポツポツ話してくれるが、いまいち統一性が無い。

 訳有りなのは分かるが、これ以上遅れる訳にはいかない。

 途中でどしっと腰を下ろすと、指でそこに座る様促す。

 食べ物の件があるので、渋々従うトワ。


「何があった?きちんと話してくれないか?勿論出来る範囲で良い。」


「……。」


「黙ってたら、何も動かんぞ?そのままで良いのか?」


「……良くない。」


「だったら……。」


「捕まってたの。」


「何処に?」


「領主の屋敷。地下で。」


「何でまた……!」


「それは言えない。」


「……分かった。でも良く逃げ出せたな。」


「協力者が居たの。今どうなってるか……。」


「『自分の身代わりになった』と言う事か?」


 パラウンドの方角をジッと見るトワに問い掛けるが、返事は無かった。

 余程慕っていたのだろう。

 それでこんなに心配を……。


「トワ、ここまで来ればもう大丈夫だろう。パラウンドでは無い別の町へ行くと良い。」


 ロッシェはそう言って。

 荷物から食料の残りを半分に分け、トワに渡す。

 しかし、トワはそれを断る。


「外に出るまでは、逃げる事しか考えてなかった。でも……。」


「?」


「あんたみたいな人に出会った。見ず知らずの私に、親切に。そんな人をこれ以上……。」


 そう言って黙るトワ。

 首都でも何か一騒動が……?


「良いのか?やっと逃げて来たんだろ?」


 黙って頷くトワ。

 それなら。


「よし。じゃあ、捕まってる人も助けるか。」


「え!」


 そんなつもりで言ったんじゃ無いのに。

 そう言う顔付きのトワ。


「良いんだ。どうせ乗り掛かった舟。何人助けようが一緒さ。」


 何たって、騎士を目指してるからな。

 偉そうに威張るロッシェ。

『任せろ』とトワの頭を撫でる。

 力一杯なので、振り解こうとするトワ。

 でも顔は笑っていた。

 ロッシェも笑っていた。

 トワに、助けられなかった姉の姿をやはり重ねている様だ。

 今度は守る。

 絶対。




「何時までくっ付いて来るのかしら。」


 変なストーカーに呆れるラヴィ。

 大声で『目印を置いて行こう』とわざわざ宣言して、金に変換した石を置いて行くクライス。

 それを辿って、ついでに石を拾って行くリゼ達スティーラーズ。

 リゼはわざとクライスに乗っていた。

 意図に感付くのは、流石盗賊だけあって早い。

 何せ、人を殺す事もいとわない盗賊団。

 このまま引き連れては、通り過ぎる人達から金品を巻き上げかねない。

 だから、これをやるから人を襲うな。

 そう言う、クライスからのメッセージだった。

 こちらに損は無いので、黙っているのだ。

 納得行かないヘリックとボーンズ。

『恵んで貰っている情けない盗人』と、同業者から見られかねない。

 まあ人を傷付けずに懐を潤す事が出来れば、勿論良いのだが。

 プライドの狭間で格闘する2人。

 それを横見で見ぬ振りをするリゼ。

 気持ちは分かるけど、我慢をし。

 このまま付いて行けば、その内大きなヤマが来る。

 あたいの感がそう言ってる。

 その時は、絶対ものにするよ。

 見てな。

 不敵な笑みを浮かべるリゼだった。




 使者達がそろそろ到着しそうだ。

 彼等を待ち受けるのは。

 希望か。

 絶望か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ