表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/320

第43話 泊まりますか?取られますか?

 男にはキツいが、女には優しい。

『お調子者』と言う言葉が一番似合う。

 そんな使い魔。

 でも、指定席は何故かクライスの左肩だった。


「ちょこっと耳にしただけで、私も会った事が無かったの。」


 歩きながらアンは、オズをちらちら見る。

『よせやい、照れるぜ』と言う顔のオズは、アンがクライスに対する自分の態度を怒っているとは思わない。

 都合の良い様に解釈する。

 前からこいつはそうだ。

『だから敬遠してたんだがな』と呆れるクライス。

 何と無くオズのキャラを掴んで来た、ラヴィとセレナ。

 そうなると、不思議なのは……。


「じゃあ何でクライスは、オズを肩から降ろさないの?」


 誰もがそう思う。

 返って来た返事は、そっけない物だった。


「こいつが使い魔だから。」


「ちょっと、それじゃ分かんない!ちゃんと言って!」


「うーん。」


 クライスは頭を掻いた。

 躊躇うなんて珍しい。

 それでも言葉にしようとするが。


「余り言えないんだ、済まん。」


「お嬢ちゃんを困らせるとは、お前もまだガキだな。」


 バンッ!

 クライスが左肩を叩くが、使い魔なのでダメージゼロ。

 ケッケッケッ。

 変な笑い声を発するオズを、ムカーッとした顔で見るアン。

 でも気付かない。

 それが使い魔。


「それよりほれ、村があるぞ。行ってみようぜ。」


 主導権を握りたがるオズ。

 知らん振りのクライス。

 ラヴィとセレナは、顔を見合わせて何とも言えない表情をする。

 これからどうなっちゃうのかなあ?

 少し不安だった。




 村に入る直前。

 妖精と違って、使い魔は人に認識される。

 なのでオズは、手乗り文鳥へと変身。

 これなら、人間の肩に留まっていても不自然では無い。

 クライスは久し振りに、自分からオズへ話し掛ける。


「村から魔力を感じるか?」


「いや、何かが通った形跡は有るけどな。」


「人か?物か?」


「両方だろうな。どうせ、錬金術で生み出した乗り物に乗ってたんだろうよ。」


「そうか。」


 錬金術師より魔力には敏感。

 それが、オズを肩に乗せている理由の1つ。

 ラヴィはそう認識した。

 そうなると、魔力って何?

 具体的には聞いていなかった。

 後、魔法使いに付いても知りたいな。

 ラヴィの頭は聞きたい事だらけ。

 でも今は我慢しておこう。

 オズが言った《錬金術》と言う言葉で、クライスが嫌な顔をしたからだ。




 一行は、今夜泊まる宿を探した。

 結構小さな村だったので、宿があるかどうか微妙だったが。

 幸いにも、泊めてくれると言う家があった。

 そこは農家らしく、農耕器具が家の外壁に並べられていた。


「ささ、遠慮無く入って下さい。」


 40代に見える女性が家へ招き入れた。

 様子を探りながらも、まずセレナが入る。

 安全を確認した後、残りが入って行った。


「済みませんね、行商をしていると物取りに出会う事があるもので。」


 適当な言い訳を付くセレナ。


「いえ、こちらこそ。すんなり入れてくれるなら、大抵の人は警戒しますから。」


 女性も応じる。

 小さい四角のテーブル。

 その周りには椅子が無い。

 代わりにクッションの様な物が置いてある。

 仕方無く、一行はその上に座った。

『どうぞ』と、女性はお茶を出してくれた。


「この村は、何が特産なんですか?」


 ずずずとお茶をすすりながら、ラヴィは女性に尋ねる。

 女性はニヤリとして言った。




「勿論、物取りですよ。」




 しまった、これには薬が……!

 気が遠くなるラヴィ。

 バタンと倒れるセレナ。

 アンも。

 クライスは……?

 確認する間も無く、ラヴィも眠ってしまった。




「上手く行きましたね、姉御。」


 身長の低い鼻の伸びた太っちょ男が、玄関のドアを開ける。

 一緒に、ひょろ長い痩男も入って来る。


「甘い、甘い甘い。こいつ等、甘過ぎですよ。」


「まあ良いじゃないか。こうして、あたい達に物を貢いでくれるんだからさ。」


 高笑いをして変装を外す。

 女性は、20代前半へと若返った。


「相変わらず見事な変装ですねえ、惚れ惚れしまさあ。」


 太っちょがよいしょする。


「当然だろ?こちとら稀代の盗賊、【リゼ】様だよ?」


「そうだぞ【ヘリック】。お前の長い鼻でも分かるだろ?」


「鼻の事は余計だろ、【ボーンズ】。」


 彼女等は、この村をアジトにしている盗賊団。

 村に宿が無い事を利用して。

 家に招き入れては薬で眠らせ、身包み剥いで村の外に追い出す。

 それが常套手段。


「お前達、さっさと仕事をおし!」


 リゼが命ずると、『はいはい』と生返事をして部下の2人が一行へと近付く。

 さて、どいつからやろうか。

 ……お、この姉ちゃん良い体してんじゃねえか。

 こいつにしよう、そうしよう。

 そう言ってヘリックがラヴィに触れようとした時。




 むくっ。

 ラヴィが起き上がった。

 ビクッとして後ずさりするヘリック。

『何だ情けない、夢に反応しただけだろ』と、今度はボーンズ。

 信じられない事に、ボーンズはラヴィにグーで顔を殴られた。

 それも強い力で。

 身体の軽いボーンズが吹っ飛ぶ。

 家の壁に打ち付けられる。

 対照的に、ラヴィはゆっくり起き上がる。

『イタタタ』と顔を押さえるボーンズと、更に後ずさりするヘリック。

『だらしない部下達だねえ』とリゼが大きな木槌を持ち出す。


「あたい等の為に、逝っとくれ!」


 容赦無く、ラヴィの腹を目掛けて木槌を振るう。

 それをサッとかわすラヴィ。

 そしてボソッと呟いた。


「まだ逝かせる訳にはいかんのでの。」


 低くしわがれた口調。

 明らかに少女のものでは無い。

 異質な感じ。

 それが、リゼに危険を知らせていた。

 それでも再び腹を狙うリゼ。

 あわあわして、見ているしか無い部下達。

 木槌をまた難なく躱すと、ラヴィはリゼの首根っこを掴んで投げ飛ばした。

 ヘリックへ向けて。

 咄嗟とっさに木槌を離すリゼ。

 ぶつかる両者。

 そこにラヴィが近付く。

 ベタンと重なり合ってもがいている2人を見下して言った。


「この程度か。ふん、大した事無いのう。詰まらんわ。」




 何だ、この圧倒的な威圧感は!

 リゼは甘く見ていた。

 油断していた。

 慢心していた。

 それ故に、恐怖が半端無く心に襲って来る。

 リゼの様子を見て、『これは勝てない、やられる!』と思った部下達。

 ブルブル震え出す。




「その辺にしといてやれ。《人の体》だぞ。」


 のっそり起きたのはクライスだった。

 この様な類の薬には耐性がある。

 それはアンも同じ。

 遅れてゆっくり起きて来た。

 錬金術の基礎、解毒。

 当然の結果。

 正体が知れない者同士ではあったが、自力に差が有り過ぎた。

 クライスの言葉に、フッと力が抜けるラヴィ。

 その体を抱きかかえるクライス。

 アンの錬金術で起こされるセレナ。

 一連の光景を、あんぐりと口を開けて見ている盗賊団。

 クライスの腕の中で目が覚め、顔を赤らめるラヴィ。

 顔を背けてボソッと呟く。


「やり過ぎなのよ、もう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ