表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/320

第41話 老婆、使者に名乗りを

「大婆様!困ります!」


 町長は慌てていた。


「儂が書いたんだから、儂じゃろ!お前等にはイライラするわ!」


 怒鳴り散らしている老婆。

 一行がメインダリーに入って最初の町、イーソ。

 そこで目にした光景は、けったいな物だった。

 ここでラヴィのお節介の虫が騒ぐ。

 取り巻きの人に聞いてみる。


「どうしたんです?」


「あんた、見かけない顔だが……。」


「はい、旅の行商人です。」


「関所は?」


「私達が通った後に閉じたみたいです。ラッキーでした。」


「そうか、でもすぐに立ち去った方が良い。あれを見ただろ?」


「何か騒いでいる様ですが……。」


「隣の領地からの流通がとどこおり始めたと思ったら、いきなり関所閉鎖だろ?俺達も何が何だか。あんた達、何か知らないか?」


「いえ、町に着いても商売はすぐ終わるもので。流れ流れの生活で、詳しい事は……。」


 ここは濁しておいた方が良さそうだ。


「済まねえな、こっちは不安で一杯なんだ。一体、どうなってるやら……。」


 困惑する取り巻きに会釈して、クライス達の所へ戻ろうとするラヴィ。

 しかし。




「あーーーーーっ!」




 老婆はそう叫ぶと、『ズザザザアアアアッ!』とラヴィに近付いて来る。

 年を取っているとは思えないスピードで。

 両肩をガシッと掴まれるラヴィ。

 老婆が言う。


「丁度良い!あんた、付き合っとくれ!」


 え?

 初対面でしょ?

 何言い出すの?

 呆気に取られるラヴィ。


「あ、あのー。何処かでお会いしましたっけ?」


「今会っとるじゃろう!こうして!」


 凄く面倒臭そうだ。

 適当に言って離れないと。


「ですから、面識無いでしょ、私達。礼節って物が……。」


「そんな事知らん!それに儂はボケ取らんわい!失礼な!」


 勝手にプリプリ怒る老婆。

 しかめっ面のラヴィ。

 露骨な表情にも、老婆は動じない。

 寧ろ、ぐいぐい迫って来る。

 そこに町長がやって来た。


「大婆様!旅の人は関係有りません!離れて下さい!」


 無理に、ラヴィから老婆を引き剥がそうとする。

 しかし、中々力の強い老婆。

 何処にそんな体力が?

 困ったラヴィは、クライスに『助けて』といった顔をする。

 いつもなら、さっさと割り込んで話を聞こうとするクライス。

 今回は何故か無視。

 と言うか、関わりたく無さそうな表情。

 苦手な物を見る様な。

 いつもと勝手が違うクライスに戸惑いながら、セレナが代わりに割り込む。


「あの!取り敢えず事情を話して下さいませんか!」


 ラヴィと老婆の間に下からスポっと入ったセレナが、キツい目をして老婆を睨む。

 老婆はニヤッと笑って、ラヴィの肩から手を放す。


「おいおいおい、聞いてくれるかい。儂の話を。」


「え、ええ。事情が分からない事には、こちらとしても……。」


「そうかいそうかい、トウヘンボクの町長とは違うねえ!ささ、こっちへ。」


 セレナの手を引っ張って連れて行こうとする老婆。

 大慌ての町長。


「ちょ、ちょっと!そっちは私の家では!困りますよ、勝手に何でも!」


 オロオロする町長に続いて、ラヴィとアンが付いて行く。

 クライスはその場を動こうとしない。

 あざとくそれを見つける老婆。


「何してる!あんたも来るんだよ!全く最近の若いもんは……。」


『しまった』と、渋々クライスは歩き出す。

 それを見て疑問が湧きまくりのラヴィとセレナ。

 どうしてそこまで毛嫌いするんだろう?

 その疑問も、老婆の行動力に掻き消された。




「そこに座っとくれ。」


「ですからここは私の家……。」


 町長は言いかけて、止めた。

 老婆に睨まれたのだ。

 町長がタジタジ。

 そこまでの権力者なのか、この老婆は?


「儂はこの町に住む、【ロール】と言うもんじゃ。」


『はあ……』と言った顔のラヴィ。


「ほれ!自己紹介せんかい!」


『何故怒られる?』と考えたが止めた。

 その思考は多分無駄。

 とっとと話を聞いた方がいい。


「旅の行商人で、ラヴィと申します。」


「同じく、セレナです。」


「アンです。どうも。」


 クライスは黙ったまま。

 ロールがギロッと睨むが、頑な態度。

『まあいわ』と言う顔をして、老婆が話し出す。


「あんた等行商人なら、町に来た時何か感じたじゃろう?」


「まあ、雰囲気が寂しいなとは……。」


 相槌を打つセレナ。


「何かがこの領地で起こっとる。それは間違い無い。」


「でしょうね。」


「それも、領主が何かやらかしたからに決まっとる!そうじゃろ?」


「私達に聞かれても……。」


「そこでじゃ。使者を立てて、陳情書を手に直談判する事になったんじゃ。」


「はあ……。」


「儂が陳情書を書いた。だから、儂が一番上手く事情を話せる。そう思わんか?」


「確かにそうでしょうけど……。」




「待ったーーーー!」




 無理やり町長が割り込んだ。


「話をややこしくしないで下さい!ただでさえややこしいのに!」


「それはお前のせいじゃろ。」


 ケロッとした顔のロール。


「で・す・か・ら!お体に触るでしょう!それに御老体を行かせたとなれば、町の評判が……。」


「それだからお前は、何時まで経っても小者なんじゃ。そんなもん気にせんで良いわい。」


 再びラヴィ達の方に向き直るロール。


「そこでじゃ。お前達、儂を連れてっとくれ。どうせ目的地は同じじゃろ?」


 〔護衛代わりをゲット〕と言う所か。

 確かに首都に行くつもりだが、作戦の邪魔にならないだろうか?

 ラヴィは思う。

 それを見透かす様にロールが言う。


「勿論、お荷物なんかになるつもりは無い。この通り元気じゃしの。」


 その場でピョンピョン跳ねてみせる。

 そう言う問題では無いと思うが。


「ああ、分かった!分かりましたよ!」


 町長は渋々同意した。


「済まないが旅の人、大婆様を案内しては下さるまいか?勿論、精一杯のお礼は用意しますが。」


 町長の余りの弄られっ振りに、ラヴィ達は同情せざるを得なかった。


「お礼は結構です。ロールさんをお送りしましょう。」


「そうですか!申し訳無い、何なら町からお付きの者を……。」


『余計な事をするな!』と言う顔で、またロールに睨まれる。

 すっかり委縮した町長。


「安心して下さい。不測の事態は慣れてますから。行商人なので。」


 慰めにもならないかも知れないが、ラヴィは声を掛けずにはいられなかった。

 大人気無く涙を見せる町長。

 セレナとアンも町長の肩に手を置く。

 お守りの辛さを知っているから。

 クライスは、最後まで話に加わろうとしなかった。


「では早速出発じゃ!」


『おー!』と手を上げるロール。

 慌ててロールの家へ荷物を取りに行く取り巻き。

 何度もラヴィ達に頭を下げる町長。

『大丈夫ですから』を連呼するラヴィ達。




 と言う訳で、一行に一時的ながらも1人加わった。

 常に憮然とした顔のクライス。

 ロールと何か関係が?

 そもそもロールは何者か?

 嵐を呼ぶ筈が、逆に嵐に巻き込まれる一行だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ