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第34話 交渉はまず砦の門番と

 フチルベから事情を聞かせて貰う事となった3人。

 一方でクライスは……。




 エプドモの本拠地に近付いて来たのだろうか、人影が減って来る。

 そして。

 やたら強固な造りの、砦の様な建物に行き着いた。

 門らしき入り口には。

 騎士の格好とした人間が、両脇に1名ずつ配置されていた。


「こんな事だろうと思ったよ。」


 物々しい雰囲気。

 まるで市街戦が始まる前。

 普通の人間は近付き辛い。

 そんな一般人お断りの様相は、或る程度想像していたが。

 果たして、エプドモは面会してくれるだろうか?

 まあ当たって砕けろだ。

 歩みを進めると。


「こら!そこ、止まれ!」


 案の定、門番に止められる。


「俺は流れの行商人でして。こちらの主様に、耳よりの情報を持って参ったのですが……。」


 まずは探りを入れるクライス。

 どう対応するか。

 と言うより、門番にどう対処しろと命じているのか。

 それで少しは、人となりが分かる。


「エプドモ様は忙しい。話は我等が聞く。文句を言うなら帰れ。」


 なるほど、マニュアル通りだ。

 門番でワンクッション置いて、有益かどうか量る算段。

 護衛の騎士らしき判断だ。

 どうやらエプドモは、古いタイプの騎士の様だ。

 ならば、ここは。


「確かに。通りすがりの行商人が、いきなり面会をお願い致しても無理な話ですね。分かりました、お話ししましょう。」


 従順な態度を取るクライス。

 相手の指示通りに動く事としよう。

 奇をてらっても、警戒心を増大させるだけ。


「何処か、ゆっくりお話し出来る場所は有りますか?」


 尋ねるクライス。

 応談室の有無を確認する事で。

 エプドモは〈問答で聞く耳持たず〉なのか、それとも〈内容によっては交渉しても良い〉なのか。

 人物像が絞り込める。

 交渉する気が無いのなら、強引にでも突破するが。

 出来ればそれは避けたい。

 さあ、どっちだ?


「こっちに来い。まだ中に入れる訳には行かないからな。」


 門番に、門の横に取り付けられた小さなドアを指差された。

『ここから入れ』と言う事らしい。

 クライスは素直に従った。




 中へ入ると、周りがレンガで出来た小部屋になっていた。

 勿論、砦には通じていない。

 人が通れない、ぎりぎりの大きさの小窓が2つ。

 全て、ここから侵入されない為の措置。

 ほほう、守りと言うのを分かってるじゃないか。

 クライスは感心する。

 門番2名の内1名は、見張りへと戻って行った。

 真ん中に置かれたテーブルと、質素な木製の椅子2つ。

 そこに門番とクライスが座り、話し合いが始まった。


「それで?耳寄りな情報とは?」


「はい、実は……。」


 わざと声を小さくし、聞き取りにくい喋り方をするクライス。

 必然的に門番は。

『もっと大きな声で話せ』と言うか、クライスに近付いて聞こえ良くしようとする。

 これでこの門番の性格も分かる。

 そこまで知った上で、話の内容を決めようとするクライス。

 交渉は、相手の心理面を把握して置く事が重要なのだ。


「聞き取りにくいな、仕方無い。」


 門番は、クライスに近付いて来る。

 なるほど、相手の意見を聞く耳は持っている様だ。

 なら強気では無く、丁寧な対応の方が良さそうだ。


「繊細な話になるので、詳しくは主様以外には申し上げられませんが……。」


「そうか、なら出来る範囲で話せ。」


 会話が成立している。

 頭が回るタイプか。

 敵対しない方が良さそうだな。


「リンゴの販売権を、領主様に《簡単にお認め頂く方法》をお持ちしました。」


 その言葉に門番はハッとする。


「簡単にだって?待て!そもそもお前が何故、販売権の事を……?」


「行商人ですから。旅の途中にそう言った情報は入ってきます。そこから感じたんですよ、『これは金になる』と。」


 あくまで行商人を装うクライス。

 しかも強欲な面をちらつかせて。

 金次第で動く人間だと印象付ける為に。


「やはり商人は金で動くのか。あの野郎もきっと……。」


「それはどなたの事で?」


「その情報を掴んでるなら知ってるだろう?豪商フチルベの事だ。」


「なるほど。」


 フチルベの事を誤解している様だ。

 少なくとも、フチルベ邸で得た情報とは違う。

 誰かが嘘を吹き込んでいるのか……?

 ここにも黒い影を感じた。


「で?方法とは何だ?」


 やっと本題。

 門番がどこまで知っているか分からないが。

 そう考えながらクライスは取り出し、門番に見せる。


「これなんですが……。分かりますか?」


 途端に門番の目がギョッとする。

 あの噂、一応騎士界隈まで届いているみたいだな。

 やはりこの小道具は使える。


「そ、それは……!」


「見ての通り、金銀のリンゴです。これがどの様な物か、ご存じで?」


「ま、まさか……!」


 枝の部分をマジマジと見る門番。

 滑らかに繋がった金の枝と銀の枝。

 ただの工作品では無い。

 素人目にも分かる。


「そ、そこで待っておれ!」


 慌てて部屋の外に出る門番。

『何事か』と入れ代わりに入って来るもう1人。

 例の物を見て同様に驚き、何故飛び出して行ったかを理解すると。

 慌てて出て行き、クライスが出られない様ドアを閉めた。


「済まぬが、そのままそこで待たれよ!」


 ドアの向こうからそう話す門番。

 掴みは上々。

 狙い通り。

 砦の方から、大声が何度も響く。

 ドタドタと走り回る足音も。




 待たされる事30分程。

 ようやくドアが開いた。


「エプドモ様が、直々にお話しされたいそうだ。付いて参れ。」


 門番にそう促され、クライスは腰を上げる。

 そしてニヤリ。

 ここまでは順調。

 しかし、何が起こるか分からない。

 周りを常に観察しながら、門番の後に付いて行くクライス。

 エプドモとは、どの様な人物か?

 クライスはこんな状況にも係わらず、心がうきうきしていた。

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