表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
320/320

第320話(最終話) そして、再び……

 応接間に招かれる3体の妖精。

 エミルはウキウキで、周りを見渡している。

 オッディは流石年の功、落ち着いている。

 エミルより落ち着かない様子の、正体不明の妖精。

 私に一体、何の用が……?

 そう思いながらも対応するマリー。

 女中には残念ながら、妖精は見えないので。

 代わりにエリーが、お菓子を運んだりしている。

 2メートル四方の、宮殿では比較的小さいテーブルに。

 一杯に並べられたお菓子の種類を見て。

 ピョンピョン跳ねて喜ぶエミル。

 その愛らしい姿に癒されるエリー。

 ずっとニコニコしている。

 対して緊張した面持ちの、面会を申し出た妖精。

 さっさと用事を済ませたいらしい。

 エミルとの間に着席しているオッディへ、話を切り出す様っ付く。

 やれやれ、仕方無いのう……。

 オッディは。

 今日に限って重くなっている、その口を開いた。


「隣に座っているこの者は、儂の古い友で【クッピー】じゃ。」


 ほれ、紹介してやったぞ。

 挨拶せんかい。

 そう言った顔をするオッディ。

 シュッと少し浮き上がった後、ペコリと頭を下げる。


「クッピーだよ。宜しく。」


「ど、どうも……。」


 挨拶を終え、また着席するクッピー。

 それに対して、戸惑い気味のマリー。

 一通りお菓子を並び終えた所で、マリーの隣に着席していたエリーも。

 リアクションに困っている。

『老妖精の友達だ』と言うが、どう見てもかなり若い。

 エミルとエフィリアの中間位、いやエミル寄りか。

 やはりな……。

 オッディが想像していた通りの光景。

 だから曇りがちな表情だったのだが。

 何せ、自分が信じられないのだ。

 昔々、仲良く行動していた頃と。

 こ奴は、ほとんど姿が変わらないのだから。

 この場でもう一度、正さねばならない。

 この世界と、外の世界。

 時差がどれ位なのかを。

 オッディがクッピーに話し掛ける。


「あの草原に出かけた時の事を覚えておるか?」


「ん?綺麗なお花畑を見に行った時の事?再会した時も聞いて来たじゃないか。」


「この方々にも聞いて貰う為じゃ。あれはかれこれ、どれ程前じゃったかのう?」


「そう?ええとね……。」


 クッピーが発した言葉は。

 驚くべき事だった。




「200年ちょっと前だよ?確か。」




「200……ねん?」


「そうなのじゃ、マリー殿。こ奴は、儂が700年以上前に経験した事を『200年程前』と言うのじゃよ。」


「200年……。」


 考え込むエリー。

 これは偶然では無い気がした。

 分断された後の、この世界に。

 魔法使い達が漂着したのが、丁度その頃。

 まるで、その後の帳尻を合わせる様に。

 自分達が居た期間を、無かった事にするかの様に。

 タイミングを合わせるかの如く、時期が一致する。

 深層心理下で、それを望んでいたのかも知れない。

 この世界の住人の記憶からは、その存在が消え去る事は無いとしても。

 エリーが考えを話すと、オッディも同調する。


「自分で自分の事を、何処かでうとんでいたのかも知れませぬなあ。」


「そんな必要、無いのにね。」


 マリーはポツリと漏らす。

 魔法使いの存在が無ければ、マリーはクライスと出会っていない。

 それを無かった事にするなんて、自分には出来ない。

 だから、誇って欲しい。

 あなたに救われた思いも有るのだと。

『クライス』と言う名称を、無意識に口に出していたらしい。

『やっと本題に入れる』と、クッピーは話し出す。


「君が〔マリー〕だよね?まさか本当に会えるなんて、思ってなかったけど。」


「どう言う事?」


 聞き返すマリー。

 エヘンと胸を張り、クッピーが話す。


「ここが《帰って来た》事を教えてくれたのが、そのナントカって言う人なんだ。」


「え?」


 目を真ん丸くさせるマリー。

 隣でジッと、クッピーの話に耳を傾けているエリー。

 分析癖がすっかり付いていた。

 クッピーの語り口から、真実を探ろうとする。

 質問するエリー。


「『帰って来た』って言うのは?」


「ああ。変な奴が、『いずれ帰って来るから、安心して待っていてやって欲しい』って言ったんだ。」


「この世界が分離した直後に?」


「分離してたの?僕達の認識では、『何処かへ旅に出た』だったんだけど。だから、『帰って来る』って言葉に納得してたんだ。」


 そう言って、うんうん頷くクッピー。

 補足するオッディ。


「どうやらそう言い残したのは、他ならぬ《魔法使い》らしいのですじゃ。」


「じゃあ、こうなる事を最初から承知で……!」


「でしょうな。」


 うなる一同。

『考える癖を付けなさい』と母親に言われていた、次期妖精王は。

 一緒に唸るが、何に対して唸っているか分からず。

 結局空回り。

 考えた末に出て来た言葉が、これだった。


「うち達の事を伝えてくれたのは、クライスなんだよね?」


「そう!それよ!問題なのは!」


 ずっと行方不明だったかと思えば。

 こんな所から、急に名前が出て来る。

 どうなってるの?

 不思議がるマリーに、クッピーが伝える。


「君に伝言を預かって来たんだ。『あっちに行くなら、こう言っといて』って。」


 その言葉は。




 《先に行って、待ってるぞ。》




「何よ!抜け駆けのつもり!?」


 こちらは色々考え過ぎて、中々手が出せないって言うのに。

 独断専行で、未知の大地を冒険するって事?

 許さない!

 私を置いて行くなんて!

 絶対に!

 そう思いながらも、マリーの顔はほころんでいた。

 良かった!

 生きてる!

 クライスは確かに、この世界に居る!

 しかも『待ってる』って言ってくれた!

 感慨深げな表情のマリーに、エリーとエミルも笑顔。

 皆内心、心配していたのだ。

 クライスを、マリーを。

『やっと用事が果たせたよー』と、クッピーも胸を撫で下ろした。

 これで自由だ!

 探索するぞー!

 妖精の好奇心が、高まっていた様だ。

 腰を落ち着ける暇も無く。


「じゃあ!後は宜しくね!」


 そう言い残し、クッピーはオッディを無理やり連れて。

 シルフェニアへと向かって行った。

 ニヤリとして、エミルがマリーに問い掛ける。


「どうする?これから。」


「決まってるでしょ?追い駆けるのよ。あいつだけだと危なっかしいもの。」


「はいはい、そうですねー。」


 棒読みで返すエミル。

 でも嬉しそう。

『また旅が出来る』と言う思いからなのか。

 それとも、クライスがどんな姿になっているのか楽しみなのか。

 最後に姿を見せた時には、幼い少年だったと聞いたので。

 懐かしく思えたのだ。

 エリーも、これからの事に思いを馳せる。

 今度こそ、マリーの野望を成就させねば。

 柄にも無く、何故かワクワクしていた。

 そして、2人と1妖精は。

 これからについて、想像を膨らませながら。

 思うままに話し合っていた。




 〔幻の錬金術師〕が、既に未知の大地開拓へと動いている。

 その話は、すぐに両国中を駆け巡った。

 錬金術師達は、『負けていられない』と言う決意と。

『無事で良かった』と言う安堵に包まれた。

 クライスと関わった人々は皆、彼に憧れ。

 クライスに付いて伝え聞いた人々は皆、彼を目標とした。

 その志に、身分の差など無く。

 尊敬の的として、格別の敬意が捧げられた。

 そして……。




「やはり旅立つのですね。」


「はい、お母様。」


 マリーの母親は、未だ健在。

 実は、彼女こそ。

 クライスの正統な子孫を束ねる、一族の長だったのだが。

 ウェロムを欺く為、マリーにも内緒にしていた。

 漸く打ち明けられた事へ、ホッとすると同時に。

『血脈に縛られないで欲しい』と言う、母親としての願いから。

 1人の女性として、旅に出る事を許した。

 弟の〔ジュリエル〕は、大層寂しがったが。

『僕が王様になったら、絶対姉様を羨ましがらせる国にするから』と約束し。

 母親と共に、門出を見送った。




 こうしてマリーは、再び旅へと出る事になった。

 しかし、〔アウラスタ〕を出発し。

 世界の境目へ近付くに連れ。

 増えて行く、同行者。


「私も当然、お供しますよ?」

「うちは?うちは?」

「『兄様を任せる』と、まだ認めた訳じゃ無いわよ?一番近い場所で、見極めさせて貰うわ。」

「おいおい、俺だけ置いて行くつもりか?冗談じゃ無いぜ!あいつとはまだ、力比べして無いからな!」

「分かった!分かったから!もう……誰か、纏め役は居ないの?」

「「「「それは当然……。」」」」

「そうよねー。そいつを探しに行く旅だものねー。」


 ため息を漏らすマリー。

 また《ラヴィ》として、1人の旅人となる。

 くっ付いて来たのは、いつもの面々。

 女騎士となったエリーもとい、《セレナ》。

 天真爛漫な妖精、《エミル》。

 宗主家を別の者に任せ自由となった錬金術師、《アン》。

 近衛隊まで出世した騎士の、《ロッシェ》。

 それぞれ、託された思いを抱えながら。

 まだ見た事も無い土地へ、一歩を踏み出す。

 ヘンテコな旅人達がまた、こうして組織された。




 この世界の歴史は、続いて行く。

 《彼》を中心にして。

 “金しか生めない”、錬金術師。

 果たして彼は、凄いのだろうか?

 この結論は、まだ下せそうに無い。

 ラヴィ達の旅は、まだまだこれから。

 続きを語る機会が有れば、また付き合って頂けると有り難い。

 それだけを申し述べて。

 この物語は一旦、ここで終わりとしよう。

長い間お付き合い頂き、有難うございました。

主人公達の旅は、まだまだ続きます。

彼等の今後を描く機会が有りましたら、また宜しくお願いします。

感謝、感謝。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ