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第317話 “終わり”は“始まり”に

 この世界は、〔居た世界から分離した、時空の欠片〕。

 ウェロムはそう考えた。

 色々な状況証拠が、それを指し示していたからだ。

 メグも初めは、同じ想定を行った。

 でもそれでは説明の付かない事が、幾つか有る。

 例えば、魔境。

 例えば、幻の湖。

 その他にも。

 ホオタリの様な、地続きで渡って来た人間の存在。

 天空を移動する星々。

 それ等を総合して、考え直した時。

 ウェロムの仮説から、メグの思考がズレ出した。

 そして新たな仮説を打ち立てる事となる。

 ではまず、ウェロムの仮説を検証してみよう。




 ウェロムは思った。

 この世界は、〔ミカンを食べる時にかれた皮〕と同じだと。

 又は、〔リンゴを食べる時、ナイフでシャリシャリ切り捨てられた皮〕だとも。

 本体から分離した、果実の表皮。

 それが孤立して、次元の狭間を漂流している。

 一見、納得出来る気はするが。

 でもそれでは、天空をぎる太陽の動きが説明出来ない。

 ならば、天空だけ元の世界と繋がっていて。

 ブラーンと、次元の狭間にぶら下がっているのか?

 振り子の様に揺れ動き、時たま元の世界と接触して。

 僅かに繋がったその時に、渡って来る人間が現れる。

 都合の良い解釈の様な気もする。

 しかし魔境の存在が、幻の湖の存在が。

 それを阻止する。

 振り子の様な挙動を、この世界がしているなら。

 魔境は何時、どうやって出来た?

 幻の湖は何故、この世界で漂っている?

 そしてそれ等は、どうやって存在を維持している?

 こうやって考えて行くと、ウェロムの説には限界が有ると言える。

 一から考え直すしか無い。

 その前提条件から。




 見直す前提条件とは。

 〔元居た世界〕の箇所では無い。

 《分離》の方。

 そう、『分かたれた』と言う表現。

 そこがそもそも違うとしたら……?

 メグは思考を巡らす。

 そして行き着いた答えは、こうだった。




 ウェロムの元居た世界では。

 幾つもの文明が栄え、そして滅んで行った。

 しかし滅んだのは文明だけで、人間そのものは生き残って。

 再び数を増やし、文明を復興する。

 そして驕りからまた文明を滅ぼす。

 その繰り返し。

 あちこちで起こった戦争が一連の流れとなり、全世界を戦闘の海に追いった事も有れば。

 強力な兵器一発で、全世界を壊滅させた事も有った。

 そんな中。

 地球表面を通り越して、内核までダメージを負わせる様な兵器が開発された。

 流石にそれを許せば、地球本体が死滅してしまう。

 ガイア理論によれば、地球は1つの生命体の様な物。

 恒常性を示し、それを崩そうとする要因を排除しようとする。

 だから、生命の危機を想起させる現象に対しては。

 地球自身が行動を起こす。




 兵器は空へ放たれ、成層圏まで舞い上がった後。

 あらゆる箇所へ打ち込める様に、無数に分裂する。

 そして一斉に、上空から電子線が降り注ぎ。

 閃光と熱線、そして巨大な振動が星の表面を襲う。

 簡単に言えば、『地球丸ごと電子レンジに放り込んだ』と同じ。

 真面まともに食らえば、地球のありとあらゆる分子・原子が強制的に振動させられ。

 そこから生まれる膨大な熱エネルギーによって、大気や水の循環が止まり。

 地殻は溶かされ、マントル対流も乱され。

 外核も内核も、その動きを狂わされるだろう。

 そうなれば、ポールシフトや極ジャンプと言ったたぐいでは済まない。

 大気は剥がれ落ち、水は蒸発して四散。

 火星の様な、死の星と化す。

 それだけは避けなければならない。

 そこで地球が取った行動は。

 電子線を、大量に生み出した雲で散乱させ。

 急激な大気の渦で、更に拡散する。

 電子線のスピードを或る程度殺した後、〔地脈=レイライン〕で1箇所へ集める。

 レイラインが複数交わる場所で、しかも破壊されても大して影響の出ない部分。

 そこへ集められたエネルギーが、大気を通り越して成層圏外へ一気に放散させられる。

 天に向かって、ぶっといレーザーを放つ様に。

 こうしてダメージを極力減らす事で、地球内部の破壊を免れた。

 かと言って、人類が無傷で終わった訳では無く。

 散乱させたとは言え、地表で暮らす生命体には深刻な影響を及ぼした。

 武器を使用した者の意図通りに進んだのかは、定かでは無い。

 とにかく、その《電子線放射兵器》により。

 また文明が、壊滅状態となった。

 しかし地球自身の、咄嗟とっさの機転によって。

『星の死』と言う最悪な結末は、どうにか避けられた。




 では。

 地球からエネルギーが放たれた場所は、その後どうなったか?

 表面上は、何も変化は無かった。

 動植物も無事で、特に影響は見られない。

 しかし、それは極太の地脈の交差点上だったから。

『点』と表現はしたが、一定の範囲を持つ地域である。

 そこは無事だったと言うだけ。

 天に向かって勢い良く放出されたので。

 高エネルギー帯とその外側との境には、多大な負荷が掛かり。

 打ち上げられたエネルギーの反動で、空間が歪んで。

 その地域だけ【3、4次元的にへこんだ】状態となった。

 想像して頂きたい。

 金属製のヤカンの表面を、金槌で思い切り殴ったらどうなるか?

 普通は、凹む。

 しかしそれが凹んでいると確認出来るのは、3次元的に捉えている為。

 平面(2次元)的には繋がっているが、空間(3次元)的には歪んでいる。

 凹んで生まれた地域、それが。

 《マリー達の暮らす世界》と言う訳だ。

 つまり、切り取られた世界なのでは無く。

 高次元のレベルで歪められ、繋がりを遮断された。

【分断された世界】だと言う事。

 これは同じ次元では視認出来ず、高次元側からしか観測出来ない為。

 メグはそれを【高次元断裂】と呼んだ。

 膨大なエネルギーにより負荷が掛かって、縦・横・高さ・時間の4軸が少なくとも曲げられた。

 それが、世界の孤立を生み。

 まれに波長が有った時、外と繋がって人などが紛れ込んで来る。

 時間軸も歪んでいるので、同じ時間を歩んだ場所と繋がる保証は無く。

 結果、紛れ込む人間の時系列も滅茶苦茶。

 過去の者、未来の者。

 混在する事となる。

 マリーの住む世界で、複数の言語が混ざり合っているのも。

 色々な種族が暮らしているのも。

 このせいだろう。

 そして高次元のレベルで垂れ下がっている、この世界は。

 次元の狭間で漂う空間も引き寄せる。

 こうしてくっ付いたのが《魔境》であり、《幻の湖》である。

 これなら、空を行き交う星々も。

 数千メートルもの絶壁と化した地表も。

 説明が付く。

 そしてこの仮説が正しいなら。

【元に戻せる】。

 メグはそこまで考えた。




 凹んだなら、同等の力で反対側から叩けば良い。

 クライスを通じて、メグが行った事は。

 地球が、トンデモ兵器から身を守る為にやった事と同じ。

【高エネルギーにる、高次元帯への干渉】。

 クライスは、言わば《魔力の塊》。

 エネルギーを通し易い体質なのだ。

 それを生かして。

 メグが境界面へ、膨大な魔力を一気に注ぎ込む。

 クライスが展開した金の蓋は、それを供給する為のルートに過ぎない。

 もちろん、それだけの金の糸を張り巡らすからには。

 クライスの身体にも、かなりの負荷が掛かる。

 次元の狭間にジェーンを突き落とす時、自身に内在する魔力を放出し過ぎて。

 クライスは身体が縮んだ。

 更に放出すれば、クライスは人の外見を保てるか怪しかった。

 それでも、この世界を元に戻せるなら。

 メグの仮説を信じ、協力した。

 結果それは成功し、元の世界と繋がった。

 但し、同じ時系列を歩んで来た空間と繋がったかどうかは。

 調査してみないと分からない。

 これから出会う人達の、保有する文明は。

 こちらの世界よりも発達した物かも知れないし、逆に劣る物かも知れない。

 そこまでメグには制御出来無い。

 魔法使いはあくまで傍観者であり、観測者である。

 歴史に易々と介入出来る程の力は持っていない、そう前に記した通りだ。

 だからこれからは、この世界で生きて来たマリー達自身が。

 行動を起こし、あちこちと接触する必要がある。

 切迫した状況とは、この事。

 今まで入れなかった空間へ、入れる様になった訳だから。

 あちらの世界から、すぐにでもアプローチが有ってもおかしくは無い。

 今まで触れて来た世界とは桁違いの範囲を、相手にしなくてはならないのだ。

 国家レベルの協議になるのも頷ける。

 メグの仮説が実証された以上、最早猶予は無い。

 〔マクリラ〕の町建設と同時並行で、トップ会談が行われたのは。

 以上の、急を要する事情が有るからだった。




 メグとクライスによって。

【始まりに起因する事項】への干渉が行われ、結果として《世界の孤立》と言う事象の【終わり】を迎えた。

 《終わりは始まりにある》と言う、メグの言葉通りとなる。

 この世界で暮らした時の恩義を、この様な形で返し。

 魔法使い“メグル”は、旅立って行った。

 その後、これから世界が歩んで行く道を。

 もう少しだけ記そうか。

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