第316話 宴の後の静けさは、不気味に
お祭り状態だった外とは違い、アリュース邸の中は整然としている。
新しく出来たばかりの屋敷を、酔った勢いで傷付けられては堪らない。
だから祭の会場は屋外。
立食パーティー形式。
それなら身分を問わず、全員参加出来る。
アリュースの提言だった。
後始末がし易い事も有って、遠慮無く盛り上がる町内。
今は、その後片付けに追われている。
屋敷で働く予定の者も、そこへ駆り出されている。
屋敷内は、アリュース達だけ。
大勢の来客、それも突然となった為。
話をする場は、一番奥の会食テーブルが置かれた大広間で。
何も持て成しの品は無し。
それでも。
真っ新の椅子に、喜んで座るフサエン。
『はしたないでしょ』と怒りながら、しれっと隣に座るシェリィ。
入り口から一番遠い席、真反対の壁を背にした場所。
そこには、為政者としての2人が座る席が設けてある。
これだけは、やたらと豪華な造り。
職人が張り切り過ぎたらしい、その椅子の座り心地は。
大層歯痒い感じ。
大広間の入り口から見て。
右側にトウジ、左側にアリュース。
縦長のテーブルが置かれている部屋で。
トウジ側の席には、マリー達4人が。
アリュース側には、フサエン達客人4人が。
それぞれ着席する。
為政者に一番近い側から、マリー・エリー・アン・ロッシェ。
もう一方も近い側から、フサエン・シェリィ・リゼ・トワ。
本当はロッシェの隣が良かったトワだったが、並びの関係でロッシェと向かい側の席に。
子供達に囲まれた位置で、少し不満気なリゼ。
でもまあ良い、どうせ話を聞くだけだから。
不満を抑え込むリゼ。
そして早速、マリーに話す様強請る。
『自分が話すのが本筋なのでしょうけど、分かり易く話せそうに無いから』と。
説明係をアンに譲る。
最もこの中で冷静なアンへ。
補佐役はエリー。
アリュースもトウジも、それを受け入れた。
遂に全てを語り出すアン。
それをドキドキワクワクしながら、耳を傾けるフサエン達だった。
話は長時間に及んだ。
それでも、聞き手が飽きる事は無かった。
当たり前である。
壮大な冒険譚を聞いている感じだったから。
昔話を読む、子供の様に。
時に驚き、時に涙を流し。
一同は、話に聞き入っていた。
一番驚いたのが、最後に出て来た〔魔法使いの立てた仮説〕。
確かにその通りならば、昇る朝日を見ながら目に入った光景も納得が行く。
それは同時に、これからこの世界を襲う脅威・勢力と。
如何に接触し、対峙・対話して行くかと言う重い課題を示していた。
こればかりは、この場で一概に決められる事では無い。
国王と皇帝、及びその配下が一同に会し。
喧々諤々と話し合わなければならない事案。
アリュースとトウジは、トップ会談を開く様提案する事を決意。
場所はこの町。
建設中ではあるが、地理的にここしか無い。
まさか最初に使われる用途が、大規模会議となるなんて。
誰も予想だにしていない。
突貫工事へと切り替える為、慌ただしく外へ飛び出すトウジ。
現場責任者に話を通し、頭を下げて工期短縮を願い出る所存。
幸いにも、ここには〔ドグメロ〕を治める者が居る。
町建設のエキスパートが揃うドグメロから、人を派遣して貰う為。
フサエンとシェリイは、名残惜しそうな顔をしながら。
話を付けに、早々に町を離れた。
アンはグスターキュ側へ、リゼはヘルメシア側へ。
連絡網を通じて、事の次第を国全体へ流す事に。
本当に、聞かなければ良かった……。
リゼは辟易した表情で、そう漏らす。
〔アイリス〕の今後に危機感を覚えつつ、本拠地へと戻って行った。
アンも宗主家初めとして、錬金術師達へ真実を伝える為。
〔ケミスタ〕へと向かった。
マリーとエリーは、〔アウラスタ〕の宮殿へ。
アリュースは〔ガティ〕の宮殿へ。
トップ会談の申し入れの為、町を後にする。
アリュースの留守は、トウジが預かる。
ロッシェは、『折角だから、送って行きなさい』とエリーに言われたので。
トワの護衛に付いて、一路メインダリーへ。
それぞれが散った後。
この世界の《時》が進んで行く。
そして、それから幾らかも経たない内に。
『一刻の猶予も無い』と、双方が判断した為。
町建設と並行して、両国のトップが一堂に会し。
これからの話し合いが行われた。
【マクリラ】と名付けられたこの、中立の町で。
それ程皆を焦らせる、『メグが提唱した【仮説】』とは何だったのか?
今こそ、明らかにしよう。




