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第315話 証明

 雄弁に自分の仮説を語るメグ。

 それを黙って聞いている一同。

 メグが語り終えると。

 クライスがマリーの下へ近付き、真正面に向かい合う。

 マリーの右肩に左手を置くと、クライスは一言。


「後の事は頼んだぞ。」


「……うん。」


 それだけを呟くマリー。

 ロッシェ、エリー、アンに対しては。


「マリーをサポートしてやってくれ。彼女の野望の為に。」


 クライスがそう言うと、3人も黙って頷く。

 いよいよ時が来た様だ。

 マリーの傍から、後ずさりするクライス。

 手を伸ばしたいのを我慢して、ジッとクライスを見つめるマリー。

 その姿を、網膜へしっかりと焼き付ける様に。

 クライスは笑顔になり、マリーへ叫ぶ。


「もう会えないと決まった訳じゃ無い。きっと成功させるさ。だから……。」




 また、な!




 シュンッ!

 再会を期待させる様な一言を残し。

 クライスは、皆の前から姿を消す。

 その刹那、クライスの身体は。

 この世界を取り囲む山脈の頂点と同じ位の高さにまで、一気に上昇。

 空中でピタッと止まると。

 身体から山脈へ向け、金の糸を展開する。

 まず四方に、そして八方に。

 16本、32本、64本……。

 金の糸で区切られた天空を、更に分割する様に。

 金の糸が、クライスの身体から伸びる。

 それはどんどん増えて行き。

 最後には、天を覆う金色の屋根の様になった。

 そして地面から、虹色の柱が伸びて行くと。

 クライスの身体に接合。

 地面から一気に、魔力が注入される。

 それは一瞬で金の糸を伝わり。

 山脈のへりへと流し込まれる。




『機会が有れば、また会おうね!』




 天からメグの、お別れの一言の後。

 ゴゴゴゴゴ……!

 山脈の方から中央へ向かって。

 轟音を伴った振動が、この世界の住人を襲う。

 天が綺麗な金色、そして虹色へと変わった時。

 たま々見上げていた人達は、感じた事だろう。

 これから、とんでもない事が起こる。

 でもそれは、きっと素晴らしい事。

 天の色変わりは、吉兆なのだと。

 だから胸騒ぎはするが、不安から来る物じゃ無い。

 どちらかと言うと、ワクワク感からもたらされた物。

 寝ている者達には、天からの贈り物が。

 起きた時には、届いている事だろう。

 空に輝く虹色のカーテンが、そんな予感をより強く演出する。

 そして、轟音と振動が収まると。

 ズンッ!

 下から一瞬、突き上げる様な感覚。

 立っている者は踏ん張ろうとし、座っている者はそのまま耐えようとする。

 すぐにそれは収まったが。

 その後空を見上げた時には、綺麗な星々の輝きが見えるだけだった。




 それから数時間後。

 日がまた昇って来る。

 秘密の会談が行われていた空き地に留まっていた4人は。

 祭の会場だった、建設中の都市へと戻って行く。

 関所の役目を負った、町の入り口へと辿り着くと。

 すぐさま町の中へ。

 動いている者は、見回りの兵士達だけ。

 浮かれ過ぎていたのか、酒を飲み過ぎ酔いが回っていたのか。

 町の中に居た者達は。

 轟音や振動など、それ等の異変には気付かなかった。

 訪れていた客人達は、それぞれ早い就寝だった様で。

 空が金で覆われた事にも気付かなかったらしい。

 だから皆、日が昇る方向を見て。

 驚きの声を上げる。

 人々の歓声いや、びっくりした様な大声を聞いて。

『メグの仮説は正しかった』と、或る程度認識する4人。

 人々は何を見て、興奮したのか?

 それは。




 切り立った鋭い山脈で囲まれていた筈の、この世界。

 区画を示す様に、遠くの景色を邪魔していた物は。

 すっかりと無くなってしまい。

 代わりに、ツンと尖った様な山が所々に見られる。

 数千メートルと思われるそのいただきは、真っ白。

 斜面は険しそうだが、前に在った山脈とは違い。

 何とか乗り越えられそうだ。

 冒険心の強い者は、好奇心に駆られ。

 早速、登山の準備をする事だろう。

 そして、アンは確信する。

 あの先っぽを白く染め上げている物。

 あれこそが《雪》なのだと。




 起きて来る者が増えるに連れ。

 町が騒がしくなって来る。

 騒々しさが助長される為。

 客人も、為政者も。

『何事か』と気になりながら、外へ出て来る。

 そして、既に遠くの山々を眺める者同様。

 歓声を上げる。

 何だ!

 何が起こった!

 アリュースとトウジは、顔を見合わせたまま。

 不思議そうな顔付きで、考え込む。

 幼き客人達は、『凄ーい!』を連発。

 彼等は、考えても仕方が無いので。

 説明を求めようとする。

 町の南側で、兵士達の様子をジッと眺めている4人に。




 まず駆け寄ったのは、トワ。

 ロッシェに向かって、第一声を。


「知ってるでしょ?何が起きたか。誰がやったか。」


「どうせ、お前にも見当が付いているんだろう?」


「そりゃあ、こんな事が出来るのは《あの人》以外には思い付かないもの。」


「やはり、《あの方》なのですか?」


 今度はシェリィが、アンに詰め寄る。

 苦笑いをするしか無いアン。

 この娘って、少し狂信的な部分が有ったものね。

 興奮するのも、無理は無いわ。

 そう思いながら。

 その内。

 4人の周りに、段々と人が増えて行く。

 この方々が、どうやら事情を知っているらしい。

 そんな噂が、あっと言う間に町中へ流れ。

 4人の元へ、ギャラリーが殺到。

 そこへ。




「鎮まれ!鎮まらんかーーっ!」




 一喝するのは、馬で駆け付けたアリュース。

 遅れて、トウジも到着。

 周りへ向け、トウジが叫ぶ。


「まずは我等が聴取する!その内容は、すぐに国中へ知らせる故!暫く待て!」


『とにかく持ち場へ戻れ』と言われても。

 凄く気になる。

 後ろ髪を引かれながらも、それぞれ役目を果たす場所へと散って行った。

 馬から降りると、アリュースがマリーへ話し掛ける。


「事情を知っているなら、話しては貰えまいか?」


 戸惑うマリー。

 決意はしたものの、気持ちの整理は付き切って居なかった。

 しかし、何気無く見た自分の右肩が。

 物静かに語っている。

 大丈夫。

 俺が居る。

 勇気を持て。

 励まされている気がして、マリーはアリュースへ返答する。


「聞いて、腰を抜かしても知らないわよ?」


「またまた、冗談を……。」


 そう笑って返すアリュースだったが。

 マリーの目は真剣だった。

 それ程、壮大な内容なのか?

 逆に興味が湧いた。

 馬に跨ると、『後は屋敷で!』と叫び。

 アリュースが駆けて行く。

 続いてトウジも。

 その後ろ姿を見ている時。

 エリーの服の裾を、クイクイと引っ張る者が。

『ん?』とその方を向くと。

 フサエンだった。


「僕達も同席して良いかな?」


 そう言われてエリーは、マリーの様子をうかがうと。

 ニコッとした顔で返される。

 それを受け、エリーはフサエンへ返事をする。


「『良いよ』って。」


「やったー!」


 はしゃぐフサエン。

 トワとシェリィと共に、嬉しそうに騒ぐ。

 楽しそうな光景を見つめる4人。

 その背後から、スッと近付き。

 ボソッと。


「あたいも良いわよねえ?」


「あ、あんた!来ないんじゃ無かったの!」


 ビクッとなって、思わず振り返り。

 そう大声を出すマリー。

 しれっと紛れ込んでいたのは、リゼ。

 何やかんやで、お祭り好きらしい。

 そのお陰で、大層な物が見られた訳だが。


「《金ぴか絡み》なんだろう?是非聞きたいものだねえ。」


「……『聞かなければ良かった』と、思いたいなら。ね?」


「大口を叩くねえ。上等だ。後悔させて貰おうじゃないの。」


 その事実が、国家レベルの問題で有る事に気付かないリゼは。

 この時、まだ余裕が有った。

 一連の出来事の、報告をする為。

 マリー達は、完成したばかりのアリュース邸へと向かう。

 メグの語った、仮説の内容も。

 そこで明らかとなる。

 ドキドキが止まらないまま。

 マリー達へ付いて行く、客人達だった。

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