第310話 真実を白日の下(もと)に その2
ウェロムが『あいつのせい』と発言した、メグに原因がある様な物言いと。
エフィリアが話した内容の、『おかしい点』とは。
深い関係が有る。
それは。
一方が情報を足で稼いでいる、その間。
もう一方は、特別な空間に拠点を構えようとしていた。
時空の揺らぎの影響からか、この世界を漂う存在だった空間は。
隠れ蓑には持って来い。
この世界の歴史を探る内、滞在が長くなると知ったので。
定住する地を確保する必要があった。
それが、幻の湖。
家を造り、辺りの森を整備した。
生活環境を整えると、次に行った事は。
この世界の歴史を、本格的にサーチする事。
或る世界に入った瞬間、その世界の歴史を全て掌握出来る訳では無い。
時間軸を自在に移動出来るので、どの年代の出来事も知り得る事が出来るだけ。
だから歴史を辿り、全容を把握する事から始まる。
世界によっては、膨大な長さとなる為。
退屈凌ぎには丁度良かった。
しかし、そこで不思議な事に気付く。
この世界の歴史は、尋常では無い位短かった。
初めて足を踏み入れてから、過去へは200年。
未来へは500年程しか無いのだ。
おかしいと思い、過去のとある時点で。
歪んだ空間から降り立ち、住人へ尋ねようとする。
そこが偶々、妖精の集落だった。
人間で無くても、まあ良いや。
情報が得られるなら。
尋ねてみると、妖精から返って来た答えも変だった。
何でも。
昔は、別の場所に住んでいた妖精達と交流が有ったのに。
或る時から、パッタリと途絶えた。
何度も連絡を試みたが、見えない何かに阻まれた。
異様な感じがして。
これ以上関わると、こちらにも変な影響が出るかも知れない。
話し合いの結果、そう言う結論となり。
交流を諦めたとか。
そこで、考える。
曽て、世界の分断が起きた。
ここは、切り取られた世界なのだと。
では、それは解消するのか?
歴史の期間を把握する為、前は適当にサーチしたが。
今度は本格的にサーチ開始。
妖精が見つめる中、じっと目を閉じている。
そして漸く、事の次第を把握。
そこで思わず、近くの妖精に話してしまったのだ。
何時か遠い未来に、金色の騎士の格好をした者が。
君達を救ってくれる。
錬金術を使って。
そう言い残し、妖精の集落から去ったそれは。
再び、幻の湖が有る空間へと戻って行った。
お分かり頂けるだろうか?
妖精達に金色の騎士の話をしたのは、過去へ顔を出したメグだった。
未来へ希望を持たせる為、思わず言ってしまった事なのだが。
それを真に受ける者が居た。
錬金術?
何だ、それは?
人間が使う術なら、自分にも使える筈。
そうやって、メグから聞いた大体の情報を元に。
試行錯誤の結果、とうとう錬金術を完成させる。
それが、老妖精の〔オッディ〕。
その元へ、後にウェロムが訪れる事となる。
明らかにおかしい点とは、正にこの事。
【錬金術が存在しない時代】に、【錬金術師が救いに来る】と。
うっかり、口を滑らせてしまった。
完全に、メグの失言だった。
つまり、錬金術が生み出された切っ掛けは。
未来から訪れたメグに因る物だったのだ。
すぐその過ちに気付くが。
良く良くこの世界の歴史を、未来へ辿って行くと。
これが自分の、この世界での最初の仕事。
果たすべき義務。
そう理解した。
だから悪びれる事無く、平然としている。
メグのミスに巻き込まれた、ウェロムを目の前にしても。
結果ウェロムも、長き観察の為の手段を手に入れたのだから。
ウェロムが手に入れた《手段》とは?
それは、《反転の法》。
半永久的に、若さを保つ事が出来る。
年寄りから若者へ、年を取ればまた若返る。
そうやって、長寿を保ってきた。
その術は、ソーティに掛けられた中途半端な物とは違い。
ウェロムのニュートラルな性格も相まって、人格破綻を起こさず。
粛々とこの世界の観察を続ける為、何度も行われた。
そう、反転の法は元々。
ウェロムが如何に長生きするか追及する中で生まれた、ウェロムの為の術だったのだ。
長生きの手段を得たウェロムは。
『この世界が不安定化していないかを探る』と言う、当初の目的からドンドン逸れ。
己の目的の為に、命を長らえる事となる。
それが、《この世界の人間が存在するに値するかを量る事》。
この世界が、『自分の居た、元の世界の一部だ』と知ってしまった以上。
それを確認する必要がある。
そんな使命感に駆られ。
今の今まで生きてきた、と言う訳だ。
ウェロムが観察する中、メグが見守る中。
この世界で、色々な動きが起こって来る。
その中で、社会に刺激を与える為。
時には、直接関与するウェロム。
妖精を滅ぼうそうとした者達が返り討ちに合い、その血脈が途絶えそうになった時。
匿った者の子孫がヘルメシアの王族へ入り込んで、暗躍し始めようとした時。
そして今回、ヘルメシア帝国皇帝の暗殺計画が遂行されようとした時。
スパイスとして、歴史に口を挟む。
こうして、ウェロムの目論見通り。
人間同士の争いは止まず、存在価値を推し量る材料として陳列され続ける事となる。
だが1つ、ウェロムに予想もしない事案が有った。
それは、【メグとクレイドの結託】。
出会う筈も無い者達が出会い、自分の存在を排除する為に動き出すとは。
流石のウェロムも、予想だにしなかった。
メグとクレイドの結託。
その成果の1つが、【クライスの存在】。
ウェロムの正体を知る者が、その動きを阻止する為に暗躍する。
なので、マリーを政略結婚へと追い遣った頃から。
ウェロムの目算より明らかに、人の動きが変わって行った。
『存在価値を高めよう』と、自分達からその様な行動に出るとは。
思っていなかった。
しかしその実は、クライスが陰から方向性を指し示していたのだ。
そして、1つは……。
これも、マリーにとっては。
いや、エリーやその他の者達にとっても。
残酷な事実だった。
それを告げる役目は、クライス。
ここで語り部が、再び彼へと交代した。




