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第301話 無感情

 最初?

 最初から?

 最初からだと!

 ふざけるな!

 我の!

 我等の!

 存在が!

 そもそもおかしいだと!

 全否定など、認めん!

 認めんぞ、絶対に!

 くっそがあああああぁぁぁぁぁぁぁ!




 ラヴィの呟きへ反応し、勝手に怒り狂うジェーン。

 周りは完全に呆れている。

 わめき騒ぐだけの存在と化したジェーン。

 対して、慎重な姿勢のユーメント。

 さて、ここから。

 こいつの力をいで、捕らえなければいけないのだが。

 それは、普通の人間では務まりそうも無い。

 チラッとアンの方を見る。

 同様の事を考えていた様だ。

 ジェーンの様に、強力な技を持つ錬金術師を。

 五体満足で縛り上げるのは、不可能。

 致し方無い、手足をもいで抵抗出来なくする他無い。

 その際、気になる事が1つ。

 錬金術を行使しているのに、《賢者の石が何処にも見当たらない》。

 こいつも、兄様と同じ力を……?

 いえ、そんな筈は無いわ。

 兄様は金しか生み出せない、特殊な体質。

 でもこいつは、身体強化や催眠術を使っている。

 つまりは、一般の錬金術師と同等。

 隠し持った賢者の石で、術を発動させている。

 それさえ破壊すれば、最早抵抗するすべを無くす筈。

 その過程で、手足の1本や2本を貰うけど。

 自業自得よね。

 考えながら、じっとジェーンを観察するアン。

 ジロジロ見て来る、アンの視線に気付いたのか。

 発狂していたジェーンの表情が、ガラリと変わる。

 完全に無表情。

 感情が読み取れない程の。

 そして淡々とした口調へと変化し、ジェーンは告げる。


「石なら、ここだ。」


 右手を握り拳にし、親指を立てて。

 スッと、その先を持って行った場所は。

 心臓。

 へその下。

 そして、額。

 外からは何も無い様に見える。

 と言う事は……?

 行き当たる事実に、ギョッとするアン。

 更に、単調な口振りで話すジェーン。




「気付いたか。そう、【埋め込んである】のだ。これが何を意味するか、分かるか?」




 困った顔付きになるアン。

 歯ぎしりを立てそうな感じに見える、その表情。

 ラヴィがせっつく様に、アンへ尋ねる。


「知ってるの?どう言う意味か?」


「ええ。あいつを止めるには、賢者の石を破壊しなければならないの。つまり……。」


 残念そうな口振りで、アンが漏らす。




「殺さなくてはならない。完全に。」




 アンのその一言に、戸惑うラヴィ。

 残虐非道な敵とは言え、易々と命を奪う事を良しとしない。

 だから、更に尋ねる。


「賢者の石だけ壊す事は……?」


「位置的に無理ね。重要な器官が近過ぎるわ。」


「そんな……。」


 うつむくラヴィ。

 その態度に、またしても淡々と答えるジェーン。


「甘い。甘いな。敵に情けを掛けるなどと……。」


「そんなんじゃ無いわ!私のポリシーが許さないのよ!」


「不殺、か?」


「そうよ!命は、やたらに奪って良い物じゃ無い!たとえ敵対する者であっても!」


「そうか。」


「だから降伏しなさい!そして誓って!『もうこれ以上、悪さをしない』って!」


「悪さだと?ハハハ……。」


 笑うジェーンの声にも、感情は乗っていない。

 まるで、何か思い詰めたかの様に。

 それでも、ラヴィの説得は続く。


「もう良いでしょう!昔の事に振り回されなくても!」


「昔?」


「そうよ!遠い過去の事でしょ!そんなの忘れて、共に歩みましょう!」


「何を言っても無駄らしいぞ。もうその辺で……。」


 ユーメントが、ラヴィの説得を止めようとする。

 その時。

 ジェーンがまた変化を。


「【そんなの】?今、『そんなの』って言ったのか?」


「それがどうかしたの!」


 ラヴィが叫ぶ。

 それに対し、ジェーンは。

 ブツブツと呟き始める。




 そんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなのそんなの……。




 長い事、呟き続けるジェーン。

 眉やまぶたを一切動かさず。

 口のみを動かし続ける。

 その姿を見て。

 ラヴィの左肩に、軽く右手を添えながら。

 ユーメントが言う。


「お主の気持ちも分からんでは無いが、あれはもう駄目だ。精神が壊れている。」


「その様ね。」


 ボソッと発する、ラヴィの言葉は。

 空しさが込められていた。

 必死な説得にも、耳を貸さない。

 それどころか、自ら破滅の道を歩もうとする。

 自分の無力さを痛感する、ラヴィ。

 こんな事で、《世界統一》と言う野望を成し遂げられるのだろうか?

 人一人、説得出来ないのに。

 その右肩に左手を添える、セレナ。

 あなたの努力は無駄ではありません。

 もっと、自信を持って下さい。

 そう言った、無言の励まし。

 温かい周りの人達の気遣いに、感謝の言葉を心の中で呟くラヴィだった。




 暫くして、ぶつくさ言わなくなったと思ったら。

 今度は地面を、ジッと見つめている。

 ジェーンのその仕草に、異様さを感じながら。

 離れた位置で行方を見守る、兵士や傭兵。

 何時になったら、この事態は収束するのだろう?

 そう思い始めた時。

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