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第291話 作戦は〔奇襲〕

 国境付近に集まって来る、ヅオウ軍。

 その陣形は、横へと広がっている。

 一点突破の縦型は、攻撃に特化しているが。

 奇襲には向いていない。

 その場を押さえられれば、一巻の終わりだからだ。

 寧ろ、面で一気に襲い掛かる方が。

 防衛側も、対処しようと戦力を分散し。

 結果、何処かに穴が開く。

 そこを起点に、次々と敵を打ち破る。

 こちらは軍勢約1,000。

 敵を圧倒している筈。

 何せ、『敵襲!』と叫びながら通り過ぎて行ったのは。

 3人1組の敵兵士達、それもたったの2組。

 知らせた所で、どうしようも有るまい。

 この戦力差は引っ繰り返せない。

 ヅオウ軍の兵士達には、確かな勝算が有った。

 だから。

 横に500人、等間隔でズラリと並び。

 その後ろにも、各自兵士が付く

 そうやって2列を形成し、ゆっくりと進む。

 敵に対して圧力を掛ける様に。

 幅約500メートルの人の波が、国境へ押し寄せる。

 そして、誰かが叫んだらしい。


「突撃ー!」


 声を切っ掛けに、『わあぁぁぁーーーーっ!』と。

 ヅオウ軍が、一斉に突入。

 その時。




 ヒュルルルルーーーーーッ!

 パアンッ!




 突然敵側から打ち上がった、花火の様な物。

 上空高く舞い上がったかと思うと。

 眩しい閃光を放ち、辺りを照らす。

 そこで、ヅオウ軍は目にする。

 意外な光景を。




 木々が生い茂っていた筈。

 鬱蒼としていた森が。

 綺麗さっぱり無くなっている。

 地面には、真新しい切り口の切り株が残されたまま。

 その範囲は。

 縦30メートル、横1キロメートル以上。

 ヅオウ軍の隊列より長い。

 空き地となった場所、その真ん中には。

 2人の少女の姿が。

 1人はしゃがみ、両手を地面に付いている。

 もう1人は、その左隣に仁王立ち。

 背丈程の長さの茶色い棒を右手に持ち、地面へブスリと突き刺している少女。

 こちらをジロッと睨み付けている。

 何だ、こいつ等?

 死にたいのか?

 大軍を目の前にしても、身動みじろぎ1つしない。

 良い度胸じゃないか。

 望み通り、殺してやる!

 ヅオウ軍が一斉に、一歩前へ出る。

 すると、少女達の後ろに広がる森から。

 ヌッと出て来る者達が。

 それを見て、足を止めなかった事を後悔する兵士達。

 弓を構えた兵士達が、ヅオウ軍と同じく等間隔に並んでいる。

 端が何処なのか分からない程の長さで。

 3人に1人の割合で、兵士には見えない人間も混ざっている。

 その正体は、これから嫌と言う程思い知らされる事となる。

 弓兵が並ぶ列の中、少女達の真後ろに位置する箇所。

 そこにも、革の鎧を着た少女が。

 右手を掲げ、声を上げる。


「総員、弓を構え!」


 チャッ!

 すぐさま弓に矢をつがえ、つるを引き。

 射る体制に入る兵士達。

 矢の形を見て、ヅオウ兵は警戒心を緩める。

 ただの木の棒。

 先がキラッとしているが、尖ってはいない。

 あれではここまで届かない。

 何だ、こけおどしか。

 びっくりさせやがって。

 倍にして返してやるわ!

 そこで油断したのがいけなかった。

 斜め上に向かって、少女の合図と共に。

 矢が放たれる。


「撃てーーーーっ!」


 ヒュンッ!

 ヒュンヒュンッ!

 第1の矢が、一斉にヅオウ軍の方へ。

 それもかなり上空へ向けて。

 前に居る少女達の頭の上、10メートル位の高さを通過しようとする時。




 ギランッ!




 急に矢の先端が膨らみ、鋭い矢じりとなる。

 しかも重みを増しているらしく、放たれた瞬間よりスピードが速くなっている。

 矢じりは結局、大きさが大人の握り拳程になり。

 勢い良く、ヅオウ軍兵士の頭上から落下して来る。

 これは不味い!

 不用意に近付いてしまった為、より到達地点へ接近してしまっていた。

 その場にうずくまって、何とか避けようとする兵士達。

 それでもかわしきれない者が居たのか、『ドスッ!』と言う鈍い音と共に。

『うっ!』と呻き声を上げる者が現れる。


「固まれ!固まれーっ!」


 誰かが叫んだかと思うと。

 中心に向かって縮こまって行くヅオウ軍。

 内側へ何とか入り、誰かを盾にして。

 その場を凌ごうとする作戦。

 我先に内側へ入る者有り。

 冷静に弓兵を観察し、矢が後1本しか無いのを見付け。

 飛んで来た矢を拾っては振り回し、敵へ向け投げ返す者有り。

 色々な行動が、ヅオウ軍の中から見られた。

 そして、凌ぎ切ったと確信し。

 塊のまま、突っ込もうとする。




 それは、とても浅はかな考えだった。

 何故なら。

 弓兵の中に混ざっていた人間は。

 地面に手を付くと、何かを生み出した。

 そしてそれを、2本目の矢を射終わった弓兵に渡すと。

 弓兵は、再び射る体制を取る。


「撃っちゃってーーーっ!」


 弓兵の中に混ざっている少女が、再び命令する。

 ヒュッ!

 今度はより鋭い、空気を切り裂く様な音を立てて。

 矢らしき物体が飛んで来る。

 2人の少女の頭上を通過する時に。

 その物体は、直径5センチ程の金属球へと変化し。

 あられの様に、ヅオウ軍兵士達の頭上へ降り注ぐ。

 またしても、頭を抱えて蹲るヅオウ軍。

 今度は固まっているのが仇となり、手の甲へ金属球を食らう者が続出。

 痛っ!

 イタタタ!

 悲鳴の様な、怒号の様な。

 叫び声が、辺りに響き渡る。

 撤退しよう!

 ひそひそ話が、兵士達の中を駆け巡る。

 そして敵に気付かれない様、こっそり反転し。

 退却の態勢を取った時。




 ドドドドドド!




 国境の東側から、味方兵士の姿をした大軍が駆けて来る。

 おお!

 やっと分隊が、合流するか!

 兵の数を見るに、我等よりも多い。

 これは、押し返すチャンスだ!

 誰もがそう思った。

 そこで、諦めておけば良かったものを。


「形勢逆転だ!一気に突っ込むぞ!」


「「「「「「おーーーっ!」」」」」」


 高らかに雄叫びを上げながら。

 国境をまたぎ、突入するヅオウ軍。

 最早、作戦が奇襲前提である事を忘れていた。

 数で押し切れば!

 何としても突破する!

 ヅオウ軍の士気は、一気に上がる。

 それに続く様に、駆け付けたらしき帝国軍が追う。

 更に矢をつがえ、今度は直接兵士へ向け放つ弓兵。

 何本か食らうが、形状が細すぎたのか。

 大した威力では無かった。

 威嚇のつもりか?

 もう、通用しないぞ!

 そう思い、足を出そうとした時。




 つまづいた様にすっ転ぶ、ヅオウ軍の兵士達。

 足が急に重くなり、上げる事が出来ない。

 そのまま地面へ倒れ込み、もがき出す。

 仰向けの者、うつ伏せの者。

 息が苦しいのか、必死に起き上がろうとし。

 体制を立て直そうとするが。

 足が上がらないのには変わり無く。

 その間に、援軍らしき帝国軍が到着。


「な、何とかしてくれ!動けないんだ!」


 援軍に向かって叫ぶ兵士。

 しかし。

 持っていた木の棒は、ヅオウ軍へと向けられる。

 そしてジリジリと、周りを囲まれて行く。


「な、何の真似だ!」

「仲間だろう!味方だろう!」

「まさか!裏切ったのか!」


 横たわりもがき苦しむヅオウ軍、その方々から声が上がる。

 そこへ、馬に乗った或る騎士が駆け付け。

 ヅオウ軍兵士へ向け、はっきりと言い放つ。




「分からんのか!今や逆賊なのだよ、ヅオウ軍は!」

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