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第29話 敵軍の将と小人、仲良しの2人

 《取り込み中に付き面会謝絶》


 男はテントの入り口に、そう書かれた札を下げた。

 そして窮屈そうに、豪華に飾られた椅子に座る。

 小人族の男も隣に座る。

 良く見ると。

 元々、小さい椅子がそこに置いてあったらしい。

 と言う事は、小人族の中に内通者が……?

 エミルの不思議は深まるばかり。

 考えるエミルの顔を見ている小人。

 小人族には妖精の姿が見えるのだ。

 特殊な種族同士。


「うぬう、どうしたものか……。」


 男は考える。

 普通は、こんな所まで妖精がやって来ない。

 誰かの使者か間者と考えるのが妥当。

 その者に話して良いものか。




 その切っ掛けを与えてあげよう。

 エミルはそう思った。

 妖精が見える人間は珍しいし。


「うちは妖精のエミル。宜しくね。」


 飛びながらペコリと頭を下げる。


「ああ、気を遣わせて済まない。」


 男は慌てて、小さい椅子をもう1つ持って来る。

 エミルはそこにちょこんと座る。


「名乗られては仕方無いな。俺はこの軍を指揮している【アリュース】と言う者だ。」


『え!』と言った顔の小人族。

 どうやら本名に近い偽名らしい。

 クライス達を見て来たから分かる。

 本名そのものがはっきりしたら不味いのだろう。


「俺はこの通り、小人族で【ホビイ】だ。おっさんじゃ無いぞ。」


 顎髭を生やしていたので、エミルはそう思っていたのを見抜かれた。


「ホビイには使いをして貰っている。かなり世話になっているんだ。」


 アリュースは、はっきりとした物言いの人物の様だ。

 説得力の有る話し方は、クライスに似ているな。

 エミルは感じた。


「その使いの内容って、教えてくれないよね……?」


 妖精特有の甘えで、アリュースを釣ってみる。

 しかし、はぐらかされてしまう。


「そっちこそ、何かの使いか?用が無いならさっさと帰ってくれ。こっちは忙しいんだ。」


 ホビイがプンプン怒り出す。


「せっかくの珍しい客人だ。もう少し良いではないか……。」


 アリュースがなだめるが、まだ怒ったまま。


「それだから《作戦》に支障をきたすんだろ?優し過ぎるんだよ、お前は。」


 作戦?

 攻める相談なんかしてたのかな?

 形跡が無いんだけど……。

 エミルがジッとアリュースを見つめる。

 それを鋭く察知したらしい。

 アリュースは慌てて誤魔化す。


「おい!適当な事を言うな!」


「あ、ついうっかり。」


 頭をポリポリ掻いて、アハハと言った顔のホビイ。

 その様子を見て、エミルは違和感を覚えた。

 小人族はセントリアにしか住んでいない筈。

 つまり攻めて来ている敵軍は、こんなに仲良く話せる相手では無いのだ。

 自分達の居場所を奪おうとする相手だから。

 なのにタメ口で雑談をしている。

 怪しい。

 これは探る必要が有りそうだ。

 エミルは話題をアリュースに振る。


「ええと、アリュースはこの軍の人なんだよね?」


「そうだよ。」


「で、〔ホビイはその使いをしてる〕と。」


「そうだ。」


 えっへんとした顔のホビイ。

 そこに、クライス譲りのえげつない質問をぶつける。




「だとしたら、敵同士で仲良くしてるって事だよね?どっちかが《裏切ってる》の?」




 天真爛漫な妖精だと思って油断していた2人。

 痛い所、つまり核心をズバリ突かれてあたふたし始める。


「いや、それはだな……。」


「アリュース!何か言い返せよ!」


「でも……。」


『ううっ』とうずくまる2人。

 じっとしている。

 しばらくして、アリュースは覚悟を決めた様だ。

 この妖精はかなり頭が回る。

 このまま逃がしては、作戦の支障が本当に出かねない。

 何処まで話すか……。

 アリュースは探りを入れる。


「なあエミル、君はどうしてここまで来たんだい?」


「飛んで来たんだよ。」


「いや、《方法》じゃなくて《目的》だよ。それによっては、話しても良いよ。」


 来た!

 クライスならそう言うだろう。

 エミルは、結構長い事クライスと暮らしていたので。

 クライスが取りそうな行動をすれば、情報を引き出せると考えていたのだ。

 絶好の機会、逃す訳には行かない。


「目的?そうだね……。『外の様子を見て来い』って言われたの。」


「誰に?」


「妖精の女王様だよ。何か国の中が騒がしいからって。」


 敢えてクライスの事は出さずに、シルフェニアの都合にした。

 さあ、どう出る?

 クライスの真似をして、エミルはワクワクしていた。


「なるほど、女王様の命か……。」


 納得しかけるアリュースに突っ込むホビイ。


「素直に信じるなよ!こいつは妖精だぞ!」


『騙してナンボ』と言う妖精への観念が、ホビイに有るのだろうか。

 もう少しの所だったのに、邪魔をされてしまった。

 しかし、アリュースを惑わせた。

 ここは押せ押せだ。


「うちに出来る事は有る?作戦の途中なんでしょ?内容次第では、協力しても良いよ。」


 譲歩するエミル。


「国内の騒がしさの元が解決されれば、女王様も喜ぶだろうし。」


 さらに譲歩するエミル。

 一般人に姿が見えない妖精の力、人間にはとても魅力的だ。

 特に妖精が見えるアリュースにとっては。

 どちらが得か。

 偽の情報を掴ませて泳がせても良い。

 しかし、女王が嘘だと知ったら妖精全体を敵に回す事に……。

 アリュースの頭の中で、グルグル巡る展開。

 最適解は何だ……?

 ……?




「分かった。出来るだけ正直に話すよ。詳しくは喋れないが。それで良いかい?」




 やった!

 何かしらの情報が出て来る!

 エミルは一瞬喜んだ。

 悟られる事無く、心の中で。

 でもすぐに、それが使える情報かどうかを見極める必要が有った。

 なので、真剣な顔付きをする。

 さあ、何でも来い!


「実は……。」


 アリュースが話し始めた内容は。

 セントリアの現状を理解するのに、十分な物だった。

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