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第288話 傭兵の本質により

 進みに進んだ傭兵達。

 そこで目撃した光景は。

 キャンプファイア。

 正確に表現すると。

 大きな焚火の周りを、大勢の人間が取り囲んでいる。

 大体、100人程だろうか。

 楽しそうに、笑い声を上げながら。

 何だよ、あいつ等。

 こちとら大変な思いをして、ここまで来たってのに。

 1発ブン殴らせろ。

 そう文句を言いたくなって。

 傭兵達は皆、そこへ近付いて行く。

 焚火に照らされて、人間の格好がおぼろげながら浮かび上がって来ると。

 途端に、ピタッと足が止まる。

 そして、無警戒で接近してしまった事を後悔する。

 それは村の住民などでは無く。

 兵士達。

 しかも、グスターキュ軍の格好をした。

 不味いっ!

 一番接近していた傭兵が、後ろに居る仲間達へ。

 下がる様、手で合図を送る。

 しかし一瞬遅かった。

 気付いた相手兵士が、大声で叫ぶ。




「敵襲!敵襲!」




 焚火はそのまま残され。

 兵士達はあらかじめ決められていたかの様に、3人1組で森の中を散り散りに去って行く。

 お互いに『敵襲!敵襲!』と叫びながら。

 そしてすぐに、敵兵の姿は見えなくなった。

 バレてしまったが、仕方無い。

 せめて換金出来る様な物が落ちていないか、漁りに行く傭兵達。

 間隔狭く植わっている木々をすり抜け、ようやく広い所へ出ようかと言う時。

 傭兵の1人が、不意に声を上げる。


「うわあっ!」


 ブワサァッ!

 地面から何か跳ね上がり、傭兵が何かに包まれる。

 間近でその光景を見ていた同僚が、ジッと見つめると。

 土色に塗られ、枯葉も付けられ。

 巧みに隠された、狩猟用の網。

 どうやら狩りの対象は、ヘルメシア軍の様だ。

 その証拠に、警戒心が薄く欲に目が眩んだ傭兵が。

 次々と網に捕らえられて行く。

 もがけばもがく程、網は傭兵の体を締め付けて行く。

 これは堪らん!


「一旦撤退だー!」


 誰かがそう叫ぶと。

『わーっ!』と一斉に、波が引く様に傭兵共が前線から下がって行く。


「こ、こらっ!俺達を見捨てる気か!」


 捕まった傭兵達が、逃げて行く同僚の背中へ向けそう叫ぶが。

 空しい程に無視される。

 所詮、傭兵達はそう言う集まり。

 自分の保身が第一。

 スザザザザァァァァッ!

 坂を下るかの様に、地面を滑りながら慌てて逃げる。

 入れ替わりに、傭兵達を追い駆けていた分隊の兵士達が。

 焚火付近へ辿り着く。

 そこで目にした情景で、危険を察知。

 腰に下げたナイフを取り出し、網を切って傭兵を助けようとするが。

 鉄線の様な物が編み込まれているのか。

 中々切断出来ない。

 仕方が無いので、木の幹に捕まってスルスルと登り。

 網を吊るしている、複数の枝を切り倒して。

 網ごと、傭兵を地面へ叩き落とす。

『ぐっ!』と漏らしながら、その場にうずくまる傭兵達。

 このまま剥がそうとしても、丁度良い道具を持ち合わせていない為。

 兵士達は網を掴んで、引き摺って傭兵達を回収した。




「話が違うぞー!」


 そう大声を上げながら、ジェーンの居る馬車へ向かって駆け寄る傭兵達。

 馬車は、司令部と共に拠点を出て。

 一度到達した、道の途切れている付近へと差し掛かっていた。

 それ程軍が膨れ上がり、縦長になっていたとも言える。

 馬車の近くに居たティスが、『何事か!』と問い掛けても。

 必死な傭兵達の耳には届かない。

 そこへ慌てて、前線から戻って来た兵士の1人が。

 ティスの前でかしづくと、こう報告する。


「申し上げます!先行していた傭兵達が、敵の罠に掛かった模様!それにより、奇襲が敵へ発覚してしまった様です!」


「何っ!」


 驚くティス。

 声を聞きつけて、その傍へ駆け寄って来るモーリア。

 どうやら魔法使いが送って来た手紙通りに、事が始まったらしい。

 互いの顔を見合わせ、頷く2人。

 すぐに、報告に来た兵士へ問うティス。


「前線にはハヤヒが居る筈だ!彼はどうしている!」


「はい!散り散りに逃げて行った兵士を捕らえるべく、各方面へ兵を向かわせております!」


「そうか!」


 ハヤヒも《予定通り》行動しているらしい。

 ならば。

 ティスは兵士へ命ずる。


「全軍に伝えよ!『逃げた敵兵を追え』と!何としても全員捕らえ、奇襲が敵本体へ伝わるのを阻止するのだ!」


「ははーっ!」


 兵士は早速、軍の中を駆けずり回る。

 やや進行速度を落としていた軍全体が、うねる様に国境目がけて動き出す。

 一方で、馬車の周りに辿り着いた傭兵達は怒りを隠さない。

 中はもぬけの殻。

 辺りを探しても、ジェーンの姿は何処にも無い。

 に、逃げやがったなー!

 俺達を騙したまま!

 報酬はどうなる!

 ふざけやがって!

 踏んだり蹴ったりの傭兵達。

 この場を治めようにも、何て声を掛ければ……。

 そこへ、ハッと気が付くモーリア。

 あ奴がここから消えた目的。

 それが、《あれ》だとしたら……。

 モーリアは咄嗟とっさに、傭兵達へ声を掛ける。


「報酬が欲しいか!」


「当たり前だ!このままじゃあ、割に合わねえ!」


 そう答えが返って来る。

 続け様にモーリアが言う。


「欲しくば、雇い主である〔あ奴本人〕を捕まえる事だな!」


「何を他人事ひとごとみたいな口を!」


 反抗心丸出しの傭兵達。

 強欲さを前面に押し出している。

 何かを貰うまでは帰れない。

 何なら、お前等の装備品を奪ってでも……。

 そう言った目付きへと変わる相手に。

 モーリアが力強く告げる。




「あ奴は豪華な装飾品をまとって、森の中を進んでいる筈だ!ならばドレスは破れ、木や草に引っ掛かっているだろう!それを辿れば、お前達の足なら追い付ける!」




 なるほど!

 確かにあいつは、戦に似合わない程の豪華なドレスを着込んでいた。

 それを馬車の中で脱ぎ捨てたり、着替えたりした形跡は見られない。

 かと言って、傷1つ負わずに。

 深々と茂ったこの森の中を移動する事は、ほぼ不可能。

 良し!

 森へ入った痕跡を探せ!

 それを合言葉に、傭兵達は辺りを捜索。

 しばらくして、傭兵の1人が声を上げる。


「見つけたぞ!」


「本当か!」


 他の傭兵達が集まって来る。

 その中心で。

 親指程の大きさの、布の切れ端を掲げながら。

 見つけた者が叫ぶ。


「間違い無い!これは奴の物だ!」


 布は表面がつやつやに加工されているのか、真っ暗な中でもキラキラ輝いている。

 そしてそれと同様の物が、森の奥へと点々と続いて落ちている。

 傭兵達は、『行くぞー!おーっ!』と掛け声を張り上げる。

 一斉に森へと突入する傭兵達。

 ワンテンポ遅れて。

 主人を守る為に、ジェーンが率いて来た約300ものダイツェン軍も後へ続く。

 その方向は、モーリアが予想した通り。

 帝国軍本隊が拠点から出て。

 一心に向かっているであろう方角へと、真っ直ぐに向いていた。




 分隊はこうして、二手に分かれた。

 ジェーン絡みのダイツェン軍と傭兵達は、後を追い駆けて。

 森の中をやや南西へ。

 ティスとモーリアが率いて来た連合軍は、敵兵を追走して。

 国境に沿って、東西方向へ。

 その頃。

 同じく奇襲を掛けようと進んでいる、帝国軍本隊は……。

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