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第283話 足掻(あが)き

「わる……す?それか!それが、お前の言っていた《友人》の名か!」


 悪びれる様子も無く、高笑いを続けるルビィに。

 大声で問い掛けるブラウニー。

 その声に、ギッと睨み返し。

 ルビィが告げる。


「友人などと言うレベルでは無いわ!我等の崇高なる思想の体現者!それがワルス様だ!」


「な、何だと!」


「無礼者!我はケミーヤ教幹部のトップ!ワルス様の一番の配下!ワルス様に楯突く者は容赦せぬ!」


「ケミーヤ教?何だそりゃ?そんなのはどうでも良い!これからお前、一体どうするつもりだ!」


 ルビィの妖艶で強い語り口に臆せず、問い続けるブラウニー。

 その間にノーレンが、王女達を救おうとジリジリにじり寄る。

『させん!』とすかさず、ルビィが左手のひらを地面へ叩き付ける。

 すると、薬指に嵌められた指輪から光が放たれ。

『ズアアアァァァッ!』と王女達を囲む様に、地面がせり上がる。

 2メートル程の高さの土壁に阻まれて、王女達の救出に失敗するノーレン。

 再び後ろへ飛び退き、ルビィの様子をうかがう。

 そのルビィと言えば、土壁を背にして死角を封じている。

 上から見れば、壁は円形をしているのか。

 スススッと土壁の前をスライドして行くルビィの背後が、中々取れない。

 東からは、ブラウニー。

 西からは、ノーレンとシーレが挟み込んでいる。

 にも係わらず。

 その真ん中でそびえ立つ土の円柱を背に、余裕な顔のルビィ。


「シーレ様!何とかなりませんか!」


 後ろにシーレを庇いながら、ノーレンが叫ぶ。

 しかしシーレから返って来る返事は、弱気そのものだった。


「彼女は直々に、ワルス様から錬金術を習ったと聞きます!幹部とは言え末席の私には、どうしようも……!」


「フハハハ!当然!我は、ワルス様の寵愛を一身に受けていたのだ!お前如きに勝てる筈が無かろう!」


 勝ち誇るルビィ。

 打つ手が無い、ノーレンとシーレ。

 こうなれば!

 覚悟を決めた様に、真剣な面持ちとなるノーレン。

 荷車へ向かって叫ぶ。


「報酬は上積みする!だからこの局面を打開してくれ!」


「何をほざく!そんな方へ叫んだ所で、何も変わら……。」


 ノーレンの必死の思いを打ち消す様に、ルビィが否定する。

 その時。




「約束したからね!ちゃんと守るんだよ!」




 荷車の方から、聞いた事が無い者の声。

 何っ!

 声のした方へ、ルビィが振り向くと。

 そこには老婆では無く、若い女が立っていた。

 ルビィの足元を指差し、女が叫ぶ。


「そこへ向かって炎をぶつけな!」


「え?で、でも……。」


 姿の見えないシーレの後ろから、躊躇ためらい交じりの声がする。

 大人に成りかけの、少年の声が。

 女が声の方角へ、けしかける様に怒鳴る。


「あんた、《相棒》を信用して無いのかい!さっさとおし!《あいつ》なら迷わないぜ!」


「もう!どうなっても知らないからね!」


 そう返事が聞こえると。

 続け様に。


「頼んだよ!えーいっ!」


 少年の声が、再び辺りへ響く。

 シーレの背後に、いきなり浮かび上がる炎。

 青白くメラメラと揺れる、人間の胴体程の大きさ。

 それは現れたと同時に、『ビュンッ!』と飛んで行き。

 ズガンッ!

 ルビィの足元へ打ち付ける。

 そして『シューッ!』と、勢い良く消えて行く。

 地面が凹んだ箇所を、ゾリゾリと左足でなぞりながら。

 ルビィがゲラゲラ笑う。


「威勢良く放った割には不発かい!無様だねえ!惨めだねえ!ギャハハハハ!」


 腹を抱えて笑うルビィ。

 そこへ、またしても女のげきが。


「今だよ!お前達!さらっちまいな!」




「「へい!《姉御》!」」




 街道の傍の木陰から。

 急に、男2人が現れたと思うと。

 土の円柱へ向かって突進。


「馬鹿め!無駄だと……。」


 そう言い掛けて。

 口が止まる。

 完璧に作り上げた筈の土壁は。

 街道の外側へ向いた方が、呆気無あっけなく破壊され。

 王女達を2人ずつ抱えた男達が、どっと出て行く。

 その後すぐに、円柱は青白い炎に包まれ崩れ去る。

 その光景を、呆然と立ち尽くし見送るルビィ。

 炎が消えるまでの間。

 街道沿いに植えられた木々、その後ろに紛れながら。

 男2人は王女達を抱えたまま、荷車の後ろへ回る。

 そして1人1人、王女達を素早く荷車の上へと乗せて行く。

 女が、王女達それぞれの顔を覗き込むと。

 深く溜め息を1つ。

 そして呟く。


「やっぱり、暗示を掛けてたのかい……。」


「あ、暗示?」


 女の言葉に、ブラウニーが反応。

 女が説明する。


「この子達は、そいつの思い通りには動かなかった。だから催眠術でも掛けて、精神的縛りを付けてた。そんな所だろうね。」


「な、何て事を……そうか!だから無口で……!」


 ようやく1つ、謎が解けた。

 王女達は、自分の意思で逃げていたんじゃ無い。

 そう動く様、ルビィに命令されていただけ。

 話す自由さえも奪われていた。

 助けを求められない様に、正体を喋られない様に。

 でもそれは、新たな謎を呼ぶ。

 ブラウニーは、軽蔑の眼差しでルビィを見たまま。

 問う。

 謎の答えを得る為に。


「そこまでして、この子達に固執する理由は何だ!自分の娘も居るんだろう!」


 ニヘラ。

 ルビィは半笑いのまま、ブラウニーの方を見ると。

 ケタケタと笑い出す。

 精神が壊れたのか?

 疑いの目に変わるブラウニー。

 すると。




 エヒャ。




 エヒャヒャヒャヒャ!




 エギヤアアアァァァァァ!




 奇妙な声を張り上げながら、頭を抱えてうずくまるルビィ。

 完全におかしくなってしまった様だ。

 これでは、答えは返って来まい。

 目線を落とすブラウニー。

 そこへ、代わりに。

 シーレが答える。


「彼女は子供達を、生贄に捧げようとしたのです。ワルス様の魔力源として。」


「生贄だって!何でそんな物騒な……!」


 呆れた声を出すブラウニー。

 対して、女は。


「まーたワルスかい。どいつもこいつも……。」


 辟易へきえきした感じの声を上げ。

 荷車からスタッと飛び降りる。

 ブラウニーの傍までスタスタとやって来ると。

 その左肩に右肘みぎひじを付いて、がっつりと寄り掛かり。

 吐き捨てる様に言う。


ろくでも無いね、ワルスって奴は。全く……。」


 ピクッ!

 ルビィの耳が微かに動く。

 そして瞬時に、両手を地面へ付ける。

 左手の指輪がまたしても光り、土が或る物の形に変わって行く。

 それは『龍』と呼称されるモノ。

 魔物のフェイレンが、負の魔力に当てられ変化へんげした。

 その姿より、よりゴツゴツした感じ。

 荷車がすっぽりと入る程の、巨大な頭だけが形作られ。

 その天辺てっぺんに、ルビィが乗った状態で。

『バクンッ!』と一口で、ブラウニーと女を捉えようと。

 バネを使って打ち上げられた様に、『ビヨンッ!』と空中を飛んで来る。

 咄嗟とっさに女は、ブラウニーの襟を掴んで。

 グッと後ろへ引っ張りながら、飛んでかわそうとする。

 つられてブラウニーも、後ろへ飛ぶ。

 バクッ!

 土の龍が2人を食べ損ねる。

 勢いが付き過ぎたのか、女を背中で押し倒す格好となり。

 ブラウニーは女共々、荷車の前へドサッと倒れ込む。

 そこへ再び。

 食い千切らんと襲い掛かる、頭だけの土の龍。


「ワルス様の悪口を、言うなあああぁぁぁぁ!」


 怒鳴るルビィ。

 目は完全に血走り。

 抱いている感情は〔怒り〕、それだけ。

 我を失っている。

 誰から見てもそう思える、常軌を逸した表情。

 そのまま、ブラウニー達を捉えんとする。

 駄目だ!

 避けられない!

 ノーレンもシーレも、思わず『うわあーーっ!』と叫ぶ。

 ブラウニーは、思った。

 ここで終わりか。

 俺の人生も。

 ああ、情けない。

 もっとやりたい事が有ったのに。

 意外と短かったなあ。

 一瞬で、そこまで考えたブラウニー。

 走馬灯に近い感覚。

 しかし一方で、女は気付いていた。

 自分達を救ってくれる、《或る物》に。

 だからここを敢えて、戦いの場に選んだのだが。

 それは。

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