第282話 運命の交差点
ブラウニーとルビィ、そして4人の王女と老婆。
何とも奇妙な組み合わせ。
それがひと塊となり、スコンティを南進する。
痛みがぶり返したのか。
老婆は運転席で蹲り、うんうん唸っている。
気の毒に思ったブラウニーは、話し掛けずそっとしておく。
そうやっている内に、ブラウニー達は例の十字路へと到達した。
東へは、復興途中の町〔ドグメロ〕。
西へは、〔ウイム〕を通りワインデューへと。
そして南は、関所を兼ねている町〔ブロリア〕。
迷わず南へ行こうとするブラウニー。
すると突然、ルビィがおかしな事を言い出す。
「早く向かいましょう。【西】へ。」
「西?いや、ブロリアだろ?目指しているのは。」
ブラウニーがおうむ返し。
しかしルビィが続ける。
「友人が西に向かったのです。早く追い付かないと。」
「だから。その友人とやらが居るのが、ブロリアなんだろ?」
すると、意外な答えがルビィから返って来る。
「『ブロリア』とは、一言も言っていませんが?」
「え!俺が『このままだと国境を越えるぞ』って尋ねた時、『そこまで行ければ十分だ』って答えたじゃないか!」
段々、話がかみ合わなくなって来る2人。
良く良く、話を思い出すブラウニー。
会話の流れからして。
ルビィが『友人が居る』とした町は、ブロリアとなるのが自然。
予め『国境に向かうけど』と、ブラウニーが告げた続きで出て来たからだ。
でも確かにルビィは、町の名前までは明言していない。
どの町を指すかは曖昧なまま。
ブラウニーが勝手にそう思い込んだと、ルビィ側の主張。
それには、到底納得の行かないブラウニー。
何かがおかしい。
怪しい……。
荷車を十字路で止めたまま、2人の話し合いは続く。
だがこのまま長引けば、言い争いに発展するのは確実。
そう感じたからなのか。
蹲っていた老婆が、2人の間に割り込んで。
或る提案をする。
「でしたら、荷車に乗っている方々は一旦降りて。別の荷車へ乗り換えては如何?」
ブラウニーはブロリアから国境を越えて、故郷へ戻りたい。
ルビィ達は西へ行きたい。
進みたい方角が違うのだから、老婆の提案は正論ではある。
ブラウニーも、その提案を受け入れる。
「仕方無いな。俺が協力出来るのも、どうやらここまでらしい。」
「お、お待ち下さい!それでは約束と違うではありませんか!」
「違うも何も。俺が国境に向かう事を了承したじゃないか。さっきの発言だと。」
「で、でも……。」
「それに、俺はこの国の人間じゃないしな。あんた等がそれなりの身分だとしたら、他国の一般人が介入して良いレベルじゃ無い。」
「見捨てると言うのですか!」
「そうじゃ無い!内政干渉になって、国レベルの争いへと発展する事になっちゃうだろ!」
結局言い争いになる2人。
『もう良いです!分かりました!』と吐き捨て。
ルビィは、4人の王女達を荷車から降ろすと。
十字路から西側へと歩き出す。
荷車などが通り掛かるとは思えない中を。
その時、老婆が運転席から大声で叫ぶ。
「そちらは危ないですよ!《お迎え》が来ていますから!」
「何を戯言を!」
老婆の方へ向き、キッと睨むルビィ。
その表情から、ブラウニーが出会った頃の穏やかさは感じられない。
必死さは伝わって来るが。
それは何処から来るのか?
すぐにその理由が分かった。
西側の景色が揺らめき。
何も無かった街道に、或る姿が出現すると。
こんな声が飛んで来る。
「娘を返して下さい!」
ギョッとするルビィ。
そこに現れたのは。
馬の背中に乗った、騎士と女。
ブラウニーは覚えていた。
その女は、ルビィを必死に追い駆けていた女と同一人物。
しかも発した言葉が、『娘を返せ』。
「どう言う事だ!4人共、あんたの娘なんじゃないのか!」
説明を求める様に、ルビィへ向けて叫ぶブラウニー。
もう何が何だか分からない。
頭の中がグチャグチャ。
モヤで、はち切れんばかりの状態となる。
胸糞悪い、スッキリしない気持ちで一杯。
くそう!
もう良い!
どうせここで別れるなら、全てをはっきりさせたい。
続けて叫ぶブラウニー。
「答えろ!でないと、ここから去らせはせんぞ!」
我慢ならず、とうとう運転席から降りる。
近くに丁度良い看板が有ったので、急いで馬を繋ぎ止めると。
ルビィの元へ駆け寄ろうとする。
すると。
フハ、フハハハハハ!
両手を思い切り空へ掲げ、高笑いをし出すルビィ。
『気が触れたか!』と、ブラウニー。
対して馬上の騎士は、『本性を現したか!』と叫び。
颯爽と馬から降り、続いて女を素早く馬の背から降ろす。
対峙する両者。
ルビィが騎士に向かって叫ぶ。
「我は先代皇帝の妻、【ルビシア・メジン・シルベスタ】なるぞ!頭が高いわ!」
「それは知っておる!この御方、【シーレジア・ヘルム・シルベスタ】様から聞かされたからな!」
シーレを指して、ノーレンがルビィを威圧する。
ルビィに向かって、シーレが声を上げる。
「この〔ノーレン・ドラン〕様に、全てをお伝えしました!王女を渡して投降して下さい!今ならまだ間に合います!」
「投降?何故?」
「罪を重ねるのは、もう止めて下さい!」
「罪?罪だと?笑わせるな!」
『ハハハハハ!』と、再び高笑いをしながら嘲るルビィ。
シーレを指差し、逆に指摘する。
それはとんでもない事実だった。
「罪深きはお前ではないか!《ワルス様》を裏切ろうとする、愚か者め!」




