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第261話 どちら、か

『クライスを倒した』と、高らかに宣言するセメリト。

『クライスは凄い奴だ』と、勝利を信じるロッシェ。

 どちらが正しいか。

 その後すぐ、分かる事になる。




 クライスの気配を探った時、感じた魔力は。

 破壊したと思っていた、リリィ。

 支配したと思っていた、召喚後の魔物。

 それ等が連れ立って、あの女と一緒に逃げている。

 この俺から。

 ここはもう、けりが付いた。

 今から追い込んでやる!

 逃がさん!

 絶対に!

 セメリトはルーシェ達へ追い付く為、脚に力を溜める。

 ググッと膝を曲げ、飛び出そうと一気に伸ばした時。




『何処に行こうとしてる?もっと遊んでくれよ。』




 何処からか、そう声がして。

 何かに足を絡め取られる。

 勢い良く、『バタンッ!』と倒れるセメリト。

 思わずバッと足先を見やると。

 足の半分が、金で固められている。

 表に出ている部分は膝下までだが。

 どうやら相当深い所まで、金塊で埋め尽くされているらしい。

 足を上げようとしても、持ち上がらない。

 かなりの怪力になっている筈なのに。


「こんな物!こんな物!」


 両手で金塊を破壊しようとするが、上手く力を逃がされている。

 欠ける様子すら見えない。

 すると。

 セメリトの前方、約3メートル先から。

 ズズズと金塊が、地上へせり上がって来る。

 それは、直径1メートル程の円柱を成し。

 2メートル程の高さまで突き出ると。

 中央から左右へパカッと割れる。

 中から出て来たのは。




「貴様!何故生きている!」




 驚きの余り、大声になるセメリト。

 その姿は、紛れも無く。

 クライス。

 確かに吹き飛ばした筈だ!

 その証拠に、気配を全く感じなかったぞ!

 それがどうして……!

 クライスは『やれやれ』と言った表情を顔に浮かべた後。

 ポツリと言う。


「こんなの、初歩の初歩だぞ?気配を消すなど、容易たやすい事だ。」


 パチンッ!

 クライスが指を鳴らすと。

 セメリトの下に、大きな穴が開き。

 金塊によって、穴の底へと引きり込まれる様に落下。

 穴が何処まで続くか分からない。

 慌ててセメリトは、胸に在る賢者の石を左手で掴み。

 魔力を込める。

 ズシュッ!

 胴体から八方に鉄の棒が突き出て、横の壁を貫く。

 それでもまだ、落下の勢いは落ちない。

 棒が、横壁を削り取って行く。

 セメリトは更に賢者の石へ魔力を込め、棒を太くする。

 直径を3倍にし、腕の太さ程にして。

 ようやく落下が止まる。

 気が付くと、50メートル以上も落ちていた。

 それだけ虚を突かれたと言う事。

 セメリトは下を覗くが、やはり底が見えない。

 このままでは不味い。

 そう考えたセメリトは。

 靴を脱ぎズボンをひざ下から破り捨て、金塊を身体から切り離すと。

 壁に突き刺していた棒をしならせ、ばねの様にして。

 身体を上へ弾き、浮上しようとする。

 上方に向かって勢いの付いたセメリトは、『スボッ!』と穴から飛び出て。

 逆に、地面から30メートル程まで上昇。

 10階建ての建物に相当する位の高さから。

 うつむいて地上を確認すると、やっと現状を把握する。

 クレーターと化した範囲は、完全に縦穴へと変わっている。

 その直径、約400メートル。

 小さい集落がすっぽりと入る大きさ。

『我ながら、凄い力だ』と自画自賛しつつも。

 その下の地面を丸ごと金塊にし、すぐさま消し去ったクライスの力に対して手強さを感じる。

 そして北の方、約2キロメートル先に。

 ロッシェ達の姿を捕捉すると。

 シュルルルッ!

 魔力で形作っている右腕を、そこまで伸ばす。

 ガシッ!

 地面を確かに掴み取ると。

 縮める度合いを加速させる。

 ギュンッ!

 視界にロッシェ達を捉えたまま、一気に突っ込む。

 その先どうなるか、後先を考えないまま。




 体当たりして来るセメリトを、走り逃げるロッシェ達も知覚していた。

 どうする?

 咄嗟にロッシェは、『ズザザアアッ!』と急ブレーキを掛けその場へ止まり。

 リリィ達の突進を止めた時と同様に、右手を前へ突き出す。

 そして指輪〔アクアライト〕に左手を添え、ギュッと力を込める。

 頼む!

 力を貸してくれ!

 ロッシェは願う様に叫ぶ。

 すると、青い宝石がキラリと光り。

 ブワアッ!

 またしても水が噴き出る。

 今度は分厚い水の盾となり、セメリトの追突を垂直に受け止める。

 ドスンッ!

 衝撃が、厚さ3メートル程の水壁を伝わって来る。

 そしてセメリトの動きを相殺する様に、バアッと弾け。

 後方へ吹っ飛ぶロッシェ。

 それを止めようと、ロッシェの腰にしがみ付くルーシェ。

 ルーシェの肩に乗っている魔物2体も、飛ばされまいと必死。

 そのお陰か、吹っ飛ばされる距離が5メートル程で済んだ。

 背中から落ちる、ロッシェとルーシェ。

 辛うじて残った水が背中に展開し、クッションとなって傷付くのを免れる。

 姉さんがそう願ったからか……?

 ロッシェはそう思う。

 最初の時も、姉さんが発動させた。

 だから、今度も姉さんの深層意識が反応して……。

 そこまで考えた時、ルーシェの声が飛ぶ。


「こ、来ないで!」


 腰から上を折り曲げ、起き上がるロッシェ。

 その目の前には。




「ゆ・る・さ・ん・ぞー!」




 ゆらりと立ち尽くす、怖い形相のセメリト。

 怒りを隠す素振りすら無い。

 かなり逆上している様だ。

 ロッシェ達へ向けて振り上げた右手は、大きく膨らみ。

 拳が幅3メートル程までになっている。

 守らないと!

 姉さんを!

 みんなを!

 バッと再び、右手を突き出そうとするロッシェ。

 しかし、セメリトが拳を振り下ろすのが。

 僅かに早い。

 直撃する!

 咄嗟とっさに切り替え。

 ルーシェの上から覆い被さり、彼女の身を守ろうとするロッシェ。

 遅いわ!

 セメリトはニヤリと笑い。




 砕け散れーーーっ!




 ブンッと言う音がして。

 ズジャアアアッ!

 大量の水を含んだ土砂が、周りに弾け飛ぶ。

 その光景はあたかも、泥の洪水の如く。

 辺り一帯、40メートル四方を押し流す。

 その中心にそそり立つ、セメリトの姿。

 やった!

 今度こそ!

 その時ハッと思い直し、今度はきょろきょろと辺りを確認する。

 じっくりと、念入りに。

 姿は無い。

 気配も無い。

 念の為、賢者の石で生み出した鉄の棒を。

 地面に突き立て、『ズシュッ!ズシュッ!』と地中深く刺して行く。

 最後に辺りの泥を掻き混ぜた後、安心するセメリト。

 生体反応無し。

 勝った!

 破った!

 そう確信した時……。

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