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第260話 殴る、躱(かわ)す、吹き飛ばす

「くそっ!ちょこまかとっ!」


 大幅な身体強化を得たセメリト。

 シュンッ!

 踏み込む一歩だけで、クライスの懐まで飛び込むが。

 フッ。

 その度に、クライスの姿が目の前から消える。

 クライスは周りの木々に、細かな金の糸を張り巡らせ。

 移動したい方向の糸を太くしては、クライスの身体を手繰り寄せさせる。

 木々が密集していればいる程。

 微細な調整が出来、素早い移動が可能。

 セメリトの攻撃を、軽々とけまくる。

 その原理にセメリトが気付いたのは、何回か攻撃を繰り出した後。

 相変わらず、周りからの魔力の吸収は続いている。

 よって、木々や草などの植物が枯れている範囲も。

 セメリトの移動によって拡大して行く。

 その枯れた地域へと、クライスは逃げない。

 初めは『隠れる場所が無いからだ』と思っていたセメリトだが。

 木々の間に、一瞬キラッと光る物を見つけ。

 錬金術によって体を移動させていると知る。

 糸を張る場所が枯れた地域には無いから、そこを避ける様に動いているのか!

 ならば、こうしてくれる!

 セメリトはクライスの方へ瞬時に移動。

 またしてもクライスは視界から消える。

 それと同時にセメリトが、右手のみでの逆立ち状態になると。

 ギュオンッ!

 地面から一気に魔力を吸い取る。

 魔力の枯渇範囲はあっと言う間に周りへと拡大し、半径50メートルの植物が一斉に枯れ果てた。

 その中で姿が浮かぶクライス。

 取り囲んでいた森がいきなり消滅したので、慣性に任せ後ろに飛んでいる状態。

 そこをすかさず距離を詰め、今度こそ顔面を殴ろうとするセメリト。

 しかしまたしても、クライスの残像を殴ってしまう。


「どこだ!」


 セメリトはきょろきょろ辺りを見回す事をせず、じっと意識を集中させる。

 すると。


「上かっ!」


 バッと見上げるセメリト。

 上空15メートル程の高さに、クライスの姿が。

 追撃するセメリト。

 クライス目がけ、右手拳を素早く突き出す。


「そこではかわせまいっ!」


 拳の先から、圧縮された空気の塊が。

 轟音を置き去りにして飛んで行く。

 捉えたっ!

 セメリトは確信する。

 だが、クライスの姿は既に無く。

 目の前から声がする。


「器用な芸当が出来るもんだ。でもまだまだだな。」


 クライスの渾身のパンチが、セメリトの腹筋へと入る。

 だがこちらも、びくともしない。

『いてててて……』と殴り付けた右手を振りながら、クライスは後ろへ飛ぶ。

 10メートル程距離を取った所で、両者はまたしても睨み合う。




 その構図が数十秒続いた後。

 セメリトがクライスに向かって叫ぶ。


「宗主家の力はそんな物か!」


 小馬鹿にする様な、挑発的な態度。

 相手を怒らせ、精神状態を揺さぶり。

 動揺を誘って、隙を作ろうとしたのだろう。

 しかしクライスには、その手の煽りは効かない。

 逆に、クライスから言い返される。

 残念がると言った感じで。


「お前こそ、大見得おおみえを切った割には大した事無いな。がっかりだよ。」


「何をーっ!」


 頭がカーッとなるが、すぐに落ち着くセメリト。

 吐き捨てる様に怒鳴る。


「その手は食わんぞ!」


「じゃあどの手なら食ってくれるんだ?え?」


「うるさいわ!」


「うるさいか?ただ尋ねただけだが?」


「うるさい!そんな事を言っても無駄だ!」


「じゃあ何で、そんなにカッカしながら怒鳴り散らしてるんだ?」


「うるさいって言ってんだろうが!」


 煽りなら、クライスの方が上手うわて

 怒鳴り散らしながら、クライスに殴り掛かるセメリト。

 左手拳が、クライスの脇腹を捕らえようとした時。

 ゴンッ!

 地面から急に、直径50センチ程の金の柱が伸びて。

 殴る為にかがみ気味の態勢となっていた、セメリトの腹を直撃。

 地面から突き出た金の柱は。

『ギュンッ!』と5メートル程の高さまで、1秒も掛からずに伸びた後。

『ジュッ!』と音を立てて即座に消滅。

 セメリトの身体も、同じ位の高さまで吹っ飛ばされる。

 魔力で防御力を高めているとは言え、金の延べ棒をもろに食らえば。

 流石にダメージが入る。

『グッ!』と思わず言葉を漏らし、腹の痛みをこらえながら。

 何とか地面へ着地。

 身体を叩き付けられずに済んだが。

 そこに待ち受けていたのは、金の人形の集団。

 外見は大人に近く、50体は居るであろうか。

 セメリトへ、群がる様に襲い掛かる。


「このっ!このっ!」


 手をブンブン振り回し、近付けさせまいと牽制するが。

 お構い無しと言った風に、次々と突っ込んで来る。

 殴っては吹き飛ばすセメリト。

 その飛沫が身体へと掛かり、膜となって覆い尽くそうとする。

 殴っても駄目、距離を取ろうとしても駄目。

 止むを得ん、多少消耗するが……。

 セメリトは胸の前で腕組みをし、ややしゃがむ体制を取って。

 うおおおおおっ!

 身体の表面へ魔力を集中させる。

 そして。




「ずりゃああああっ!」




 手足・体を一気に伸ばして、全方向へ魔力を開放。

 ドバーン!

 辺りに凄まじい衝撃波を発生させ。

 巨大な空気圧で、金の人形を跡形も無く消し飛ばす。

 セメリトの生み出した圧縮空気の塊は。

 周辺の地形を変える程の破壊力。

 地面は深さ3メートル程までえぐられ、まるで隕石が落ちて出来たクレーターの様。

 セメリトはその中心に降り立つと、辺りの気配を探る。

 よし、あいつの魔力は消えたな!

 フハハハハ!

 俺を馬鹿にする奴の末路だ!

 ざまあみろ!

 ハハハハハハハ!

 辺り一帯に、不気味なセメリトの笑い声が響き渡っていた。




「うわあっ!」


 セメリトがばら撒いた衝撃波は、結構離れたロッシェ達の所まで飛んで来る。

 吹き飛ばされそうになりながらも、地面に丸くなってやり過ごそうとするロッシェ達。

 波が通り過ぎた事を確認すると。

 すぐさまロッシェは、ルーシェの手を握って森から抜けようと走り出す。

 リリィを右肩に、フェイレンを左肩にしがみ付かせたルーシェは。

 グッと腕を引っ張られる。

 逃げながら、ルーシェがロッシェに声を掛ける。


「良いの?あなたのお友達が、まだあそこに……。」


 ルーシェはクライスの事を気に掛けるが。

 ロッシェは後ろを振り向かず、真っ直ぐ前を見据え。

 自信満々に言う。


「本格的に戦いが始まったみたいだ!だったら、ここに俺達が居るとかえって邪魔になる!早く離れよう!」


「で、でも……。」


 ルーシェはまだ、後ろめたい気持ちが拭えない。

 セメリトの様な凶悪な者と一緒に、置き去りにするなんて……。

 そんな気持ちを打ち消す様に、ロッシェが言う。




「こんな事態をことごとくひっくり返して来たんだ、あいつは!俺は信じてる!何たって、《仲間》だからな!」

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