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第24話 山の盾を越えて

 一行はズベート卿に会う為、シウェから街道を辿ってヨーセに向かっていた。

 領地モッタは、隣国ヘルメシア帝国とは山脈を挟んで向かい合っていたので。

 領地内はほぼ盆地なのだが。

 今通っている街道だけは、何故か山を1つ挟んでいた。

 迂回ルートも無しに。

 確かに直線ルートだが、少し様子がおかしい。

 それに気付いたのは、2つの町の中間辺りに着いた時だった。




「やっと山のふもとね。」


 休憩したいとばかりに、ラヴィがそう言って座り込む。

『しょうがありませんね』と、セレナも付き合う。

 アンはランチの用意をする。

 そこでクライスは、何かに気付いたらしい。


「ラヴィ、ここで休憩を取って正解だった様だ。」


 クライスは、ランチをそっちのけで辺りを調べ始める。

『いつもの事よ』とアンは知らん振り。

 その方がクライスははかどるのだ。

 もぐもぐ食べながら、ラヴィがその様子を眺めていると。


「やっぱりそうか……。」


 十分堪能した顔でクライスは戻って来た。


「何か分かったの?」


 ラヴィのお腹は膨れて、眠気まで来ていた。


「迂回路が元々在ったんだよ、この街道には。」


 そう言ってクライスが指差した先には。

 街道沿いの草むらに、いびつな凹みが有った。


「道だった所にわざと草や木を植えて、通れなくしたんだ。」


「そんなの、町に行くのが面倒になるでしょうに。」


「そう。面倒にして、ヨーセに行く気をいでいたんだ。」


「兄様、それを命じたのはズベート卿絡みの……?」


「間違い無く部下だな。簡単に来られては困るんだろう。」


「それでは、助けの者も来辛きづらいのでは……?」


「そう言う事なんだろう。『要らぬ心配をするな』ってね。」


 この様子では、とても臆病な領主様らしい。

 目の前の山を盾にして、引き籠るつもりだろう。


「それじゃあ困るのよねえ。無理にでも引きり出さないと。」


「まあ待て。長たる者皆、ラヴィみたいに心が強い訳じゃ無いよ。」


「でも民衆に示しが付かないでしょ、それだと。」


「良い言い方をすれば、《引き際をわきまえてる》と言う所かな。」


 それって間接的に私を馬鹿にしてない?

 意地っ張りって。

 まあ否定はしないけど。

 思っても口には出さないラヴィ。

 表情でバレバレだが。


「ではどうするので?ここまで手が込んだ事をして来るとは、中々会っては貰えないのではありませんか?」


「セレナの心配は良く分かる。でも、手土産があれば別だろ?」


「手土産、ですか?」


「滅多に無い珍品を持って行けば、必ず会えるさ。」


 そう言って、クライスはアンと相談を始めた。

 ごにょごにょ。

 ごにょごにょ。

 ピコーン!

 錬金術師2人はふふっと笑う。

 その気味の悪さはもう慣れっこだが、人には見せられない代物だと思うセレナだった。




 えっちらおっちらと山道を進む一行。

 元は獣道だったのか、やたらと動物に出会う。

 タヌキ、ウサギ、リスなど。

 熊やオオカミは、こちらを警戒してか現れなかった。

 他の動物を狩る者程、クライスの怖さが分かる様だった。

 そうしている内に山頂へ着いた。

 程良い広場があったが、天然には見えない。

 時々誰かが訪れるのだろう。

 テーブルとベンチが置いてある。

 もしかすると、ズベート卿の憩いの場なのかも知れない。

 折角なので、綺麗に掃除したセレナ。

『つい癖が……』と頭を抱えたのはご愛敬。

 ポンと肩を叩いて、フッと笑うアン。

 アンを追い駆け始めるセレナ。

 これからどうなるのか分からない。

 これが息抜きになれば。

 そう思ってクライスは止めなかった。

 ひと時の和みの時間だった。




 下り道は、道幅が登りより広かった。

 明らかに誰かが何度も足を運んでいる形跡。

 それを乱すまいと、淡々と進む一行。

 下りきった場所には、検問の様な見張り櫓が建っていた。


「そこの者、止まれ!」


 兵士らしき者が、槍を向け一行を待ち受けている。

 山を下って来る人間は珍しいのだろう。

 かなり慌てていた。


「俺達は旅の行商人です。モッテジンへ行く為に、山を越して来た次第です。」


「山越えと言う事は、シウェからの使いか!」


「ですから俺達は……。」


「ええい、黙れ!」


「ちょっと、私達の話も聞いてよ!」


 ラヴィがイライラして、つい怒鳴ってしまった。

 兵士はビクッとなり、声が震え始める。


「お、お前等なんか怖くないぞ!本当だぞ!」


「あなた、戦った事が無いですね?」


「そ、そんな事どうでも良いだろ!」


「いいえ。ここもすぐに、戦場になるかも知れないんで。」


 動揺した目付きの兵士に、クライスが付け込む。

 兵士の格好を無理やりさせられている、ただの一般人。

 そうクライスは見た。

 なので。

 何をして来るのか分からない、得体の知れない者。

 そんな奴から早く解放されたい。

 そう言う思考が駄々漏れだった。

 そこを脅してやれば、簡単に屈服する。

 案の定そうなった。


「ほ、本当に行商人なんだな!ならさっさと通れ!俺は知らん!」


 兵士は一行に街へ入る様促した後、速攻で見張り櫓に上る。

 クライスの涼しい顔に、苦笑いするラヴィ。

 心の中で兵士に謝って、スタスタと歩いて行った。




 町と言える程、中は広く無かった。

 家並みが辛うじてそれを保っている。

 その中に、やたら小綺麗な家が。

 人が出入りする様子も無いのに。

 歩いている人を見かけてはその家の事を尋ねるが、誰もはっきりとした事は言わない。

 それは逆に、そこがズベート卿の住まいだと言う事を示していた。

 試しにクライスが家の前に立ってみる。

 すると。

 地面から、からくりの様に鉄の門が現れた。

 横から回り込もうとすると、ススッと門が移動した。


「ズベート卿の部下の中に、錬金術師が居る様だな。」


「間違い無いわね。こんなの、初歩の初歩だもの。」


 そう言ってアンが門に触れると。

 一瞬バッと棘が飛び出したが、アンに触れる間も無く掻き消えた。

 異変を感じたのか、家の中から誰かが出て来る。

 それは、立派な口髭を生やした男だった。


「誰だ!あのトラップを破るとは!」


「いきなり怒鳴るなんて、失礼ね。あなたがあれを作ったの?」


 アンが一行の前に立った。

 アンに任せよう。

 クライスにそう言われて、後の2人は見守る事に。


「そうだったら?」


「せめて、これ位はして欲しいわね。」


 アンが地面に手を付く。

 すると、家を取り囲む様に。

 バリケードみたいな鉄格子が、『ズアアアアッ!』とせり上がった。

 驚く男は、アンの指にある賢者の石に気付く。




「あーーーーーーっ!」




 思わず大声を上げる男。

 家の中から『何事だ!』という声。


「まさか、あなたは……。」


「気付いたわね。では、入れて貰えるかしら?」


「も、勿論です!どうぞ!」


 錬金術師の宗主って、相当な地位なのね。

 あんなにびっくりする位。

 改めて、錬金術師の連携の深さを感じるラヴィ。

 しかし、そう簡単にズベート卿に会える訳では無かった。

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