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第233話 エッジスへ到達、しかし疑問が

 エッジスへと急ぐ、クライスとロッシェ。

 街道の周りは草が伸びては縮み、縮んでは伸びる。

 木々も同様。

 前に〔闇の戯れ〕で見た光景と同じ。

 あの時は、『時間が進んだり戻ったりしている』と解説を受けた。

 しかしここは、そうだとは思えない。

 街道の外の景色は確かにそう見える。

 でも街道そのものには、何の変化も無い。

 何故?

 その疑問は、エッジスへ到着すると益々大きくなった。




「あれ?何とも無いぞ?」


 ロッシェは声を上げる。

 エリントは魔力の影響を強く受け、町を囲む柵はおろか暮らす人々にも症状が現れていた。

 対してエッジスの町は、他の町と何の違いも無い。

 魔力の影響が見られない。

 人は忙しく行き交っているが、その行動に何の支障もきたしていない。

 どう言う事だ?

 みんなどうして平気なんだ?

 不思議そうな顔のロッシェ。

 こいつなら、答えを持っているだろう。

 尋ねても、平気な顔でさらっとかわされるかも。

 しゃくだが、仕方無い。

 疑問を晴らしたい。

 ロッシェは、〈クライスに尋ねる〉と言う行為で妥協した。


「おい、クライス。」


「何だ?」


 億劫そうに返事をするクライス。

 町の中を観察していたのだ。

 それを分かっている上で、ロッシェは続ける。


「エリントは魔力のせいで、グネグネうねってただろ?ここは何で、そうならないんだ?」


「ああ、それか。もっともな疑問だな。」


 町中の観察を一旦止め、ロッシェと向き合うクライス。

 錬金術師では無い一般人なら、誰もが当然の様に持つ事だからだ。

 ここで明らかにしても、問題あるまい。

 元々、語り部としてくっ付いて来ている様なモノだから。

 ロッシェには知る権利が有る。


「俺が今からする事を、ちゃんと見ていろよ。それっ!」


 クライスはそう言うと、右手を天に掲げてかき混ぜる様にぐるっと回す。

 手の平から金粉が舞い、空中を漂い始める。

 そしてそれが空一帯を覆い尽くすと、ブワアッと町の外へ広がった。

 すると金粉は、テューアが在るであろう方角から。

 太い水の流れの様に帯状となり、町の外周に沿う形でエリント方面へと過ぎ去って行った。

 一連の様子をジッと見ていたが、ロッシェにはさっぱり分からない。

 金粉が宙を舞って、一定方向へ流れて行く。

 それは把握した。

 それが質問と、何の関係が……?

 悩むロッシェ。

 考え込んでいる間に、不思議な光景を目にした住民が。

 クライスの元へと集まって来る。

 その数、数百人。

 辺境の町にしては、人口が多過ぎる。

 集まった皆、子供から年寄りまで。

 膝を付き、頭を下げる。

 その中から、長老らしき人物が前に進み出て。

 クライスの手をガッと掴み。

 一言、声を掛ける。




「お帰りなさいませ。」




「ただいま。」


 そう返事するクライス。

『ちょ、ちょっと待てー!』とロッシェが割り込む。

 顔をしかめる長老。

 それにも構わず、クライスに詰め寄るロッシェ。


「お前、来た事が有るのかよ!ここに!」


「随分昔にな。」


「何だよー、そう言う事なら最初から言ってくれよー!」


 ホッとするロッシェ。

 何も知らない土地で、完全に余所者のロッシェは少し心細かったのだ。

 今までの展開からして、ここも錬金術師だらけ。

 普通の人間は殆ど居ないだろう。

 孤立感が半端無かった。

 なので、『クライスとここの人間が知り合い』と言う事実が。

 少し安心材料となった。

『疎外感は幾らか回避出来る』と。

 町に入ってから、ずっとドキドキしていたので。

 クライスが返事をした時、暗い顔だったのを見逃していたが。

 長老に『皆へ頭を上げる様促して下さい』と頼むクライス。

 それを受け長老は、『挨拶は終わった、皆持ち場へ戻って良いぞ』と群衆へ声を掛ける。

 おもむろに立ち上がり、散り散りになる群衆。

 残された、2人と長老。


「ここで話すのも何ですから、我が家へ案内致しましょう。どうぞ、こちらへ。」


 そう言って歩き出す長老。

 テューアの状況を聞いておきたい。

 クライスは長老の後へ続く。

 結局この時点では疑問を解消出来ず、消化不良のまま付いて行くロッシェだった。




「さあ、お入り下され。」


 そこは、町の中央付近からやや北西寄り。

 テューアに近い場所。

 辺境の町に相応しく無い規模の建物。

 まるで12貴族が暮らしているかの様な広さ。

 それ程大きい屋敷。

 敷地は、囲う塀の様な物を持たず。

 周りに芝の様な草が生えている。

 敷地の境界から玄関まで、数歩で到着。

 石畳を歩いた後は、木で出来た玄関のドアを開け。

 静かな屋敷内へと進む。

 その中には、幾つもの大きな部屋が有り。

 廊下を歩きながらロッシェがチラッと覗くと。

 ベッドが置いてあったり、会食が出来そうな大きなテーブルと数々の椅子が並べてあったり。

 中には、見た事の無い鮮やかな輝きを放つ武具が飾られた部屋もあった。

 廊下は真っ直ぐ、平屋建てなので階段も無く。

 かと言って地下室も見当たらない。

 屋敷にしては不思議な造り。

 その理由は、突き当りの部屋へ入る事で判明する。




 そこは、長老が執務を取る部屋。

 寝室には広く、応接室には狭くと言った感じ。

 左右両壁には本棚が置かれ、隙間無くびっしりと文献や書物が詰まっている。

 向かい側の壁だけレンガ造りで、2種類の窓がめ込んである。

 大きさは共に、縦横1メートル程。

 1つは右側に設置され、普通のガラス窓。

 もう1つは左側に在って、何故か虹色に輝いている。

 窓の手前には、執務用の机と椅子。

 幅2メートル、奥行き1メートル弱と言った所か。

 何やら、やたら文字が書かれた紙。

 それがうずたかく、左右の端に積まれている。

 紙の塔は高さ30センチ程で、倒壊するかしないか微妙な線。

 如何にも誰かに、『バリバリ働いているぞー』とアピールしている様な部屋。

 部屋内を見回し、余りの凄さにため息を付くロッシェ。

 見慣れた様子でたたずむクライス。

 ここでクライスは。

 町へ入ったばかりの時に提示された、ロッシェの答えを示す。

 虹色の左側の窓を指差し、ロッシェに言う。


「その窓を覗いて見な。俺がさっきした事の謎が分かるから。」


 さっきした事って、金粉を撒いた事か?

 それと俺の疑問に、何の関係が……。

 そう思いながら、窓の外を見るロッシェ。

 その瞬間、思わず大声を上げる。




「な、何だこりゃあ!」




 窓の外には。

 巨大な流れが映し出されていた。

 グオングオンと上下左右に波打ちながら、町の前でパックリ割れて。

 町の敷地内を避ける様に、エリント方面へと流れて行く。

 クライスがばら撒いた金粉と、同じ動きをしている。

 まさか、これは……!

 口をあんぐりさせたままのロッシェに、クライスが話し掛ける。


「どうだ、分かったかい?お前の疑問の答えが。」


「あ、ああ。魔力の流れを、何らかの方法で割いていたんだな。」


「そう。今度はこっちを見てみな。」


 今度は普通のガラス窓を指差すクライス。

 そこでロッシェが見た物は。

 高く。

 何処までも高く。

 伸びている塔。

 塔と言うより、ポール?

 旗をなびかせる為に使用する様な。

 それが、テューアの方へ続く道の両脇に。

 数本ずつ並んで立っている。

 更に良く見ると。

 テューアへ続く道は、街道とは呼べず。

 切り立った崖の様に、両側の底が見えない。

 その延長上、広く横に広がる浮遊大陸の様な大地。

 端はやはり崖の如く。

 見える範囲の中央に、虹色の大きな四角が。

 幅は明らかに大きく。

 見た所ざっと、自分の身長の5倍はあるだろうか。

 高さは……ここからは天辺てっぺんが見えない。

 後は、近付いてみないと分からない。

 ただ1つ言えるのは。

 四角の真ん中、縦に亀裂の様な物が見える事。

 門と言うから、物理的な物を想像していたロッシェ。

 木製か?

 石造りか?

 まあ、『そんな物で魔物の侵入を防げるか?』と自分自身で突っ込みを入れていたが。

 それ以外の空間は、何故か真っ黒。

 夜以上に、光を確認出来無い。

 漆黒と言う表現が似合いそうだ。

 クライスの方へ、バッと振り返るロッシェ。

 明らかに説明を求める顔付き。

 しかし。

 折角長老がここに居るんだ、彼に語って貰おう。

 説明の役目を譲るクライス。

 それは、長老としての面目を保たせる意味合いも有ったが。

 何もかも自分が説明したら。

 どうしてそこまで詳しいんだ?

 ロッシェにそう突っ込まれそうで、それをかわしたいと言う思惑もあった。

 理由を語るには、もう少し情勢の変化が必要だ。

 けりが付いてから。

 隠し通しはしない。

 でもそれを公にすると、ロッシェの態度が豹変するかも知れない。

 他の人達も。

 それを恐れていた。

 怖かった。

 でももう、全てを打ち明ける時期が迫っている。

 魔法使いが動いているのが、その印。

 だから……。




「さて。この町が平穏である理由と、テューアに付いてでしたな。」


 コホンと咳払いをして、神妙な面持ちになり。

 長老は語り始める。

 不思議な不思議な、【遺物】に付いての話を。

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