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第22話 悪巧みの毒リンゴ

 ラヴィがこれからする話。

 町での聞き込みとクライスの推測から導き出された答え。

 恐らくそれが、ブラウニーの荒れた原因。

 そして話す相手は、ブラウニーでは無く。

 使用人長のデッセンだった。


「【例の男】に関して、耳寄りな情報が有りまして。」


「どなたの事ですかな?」


「小さい頃のブラウニー様を助け、その後度々お屋敷に出入りしていた男の事です。」


「確かに、その様な客人はりましたが……。」


「何の事だ、デッセン!俺は知らないぞ!」


「覚えておられないのも無理は有りません。高熱にうなされておりましたから。」


 ここからは、デッセンが事の顛末を語り始める。




 あれは、ブラウニーがまだ小さかった頃。

 良く市場に遊びに行っていたブラウニーが、或る日突然高熱を出して倒れた。

 市場に駆け付けたデッセン達が屋敷まで運び、医者に診察させるも原因は分からず。

 その時、『王室お抱えの医者』と名乗る男が尋ねて来た。

 わらにもすがる思いで、フチルベはその医者を招き入れ。

 ブラウニーを診て貰うと。

 ブラウニーはたちまち、スッと熱を下げた。

 感謝したフチルベは、男を大いにもてなした。

 それから、度々男はフチルベ邸を訪れる。

 ブラウニーに悟られない様。

 何故か男は、ブラウニーを避けていた。

 デッセンが段々怪しむ様になった矢先。

 男と2人で秘密裏に会話していたフチルベは、びっくりした声を上げ。

 慌てて荷物を纏め、男とモッテジンへ向かった。

 それから一度もフチルベは、ここに戻ってはいない。

 フチルベが旅立った後、ブラウニーは荒れ始める。

 しばらく訪れなかった市場に行っては、色々な店にいちゃもんを付け。

 店主を困らせる様になったのだ。




「坊ちゃん、申し訳ありません。何故か大旦那様から、客人の事は内緒にする様申し渡されておりましたので……。」


「そんな事が……。」


 ブラウニーはガクッとした。

 本当にその男の事を知らなかったらしい。

 このタイミングで、ラヴィは本題を切り出す。


「実はその男、『敵国のスパイではないか』と言う情報を掴みました。」


「何ですって!」


 デッセンは動揺を隠せない。


「ブラウニー様は昔、市場で倒れ高熱を発した。そうですね?」


「え、ええ。」


「恐らく毒を盛られたんでしょう。ブラウニー様。市場に遊びに行っていた時、たび々店主からフルーツを頂いてませんでしたか?」


「あ、ああ。体に良いからとリンゴを……。」


「それです。店主に成り済ました男が、フチルベ様に近付く為仕組んだんです。」


「え!理由は!知っているのか!」


 ブラウニーは声を荒げる。


「推測は出来ます。今の事態を見ればね。」


 自信たっぷりにラヴィは言う。

 クライスに、『そう言う話口調の方が、説得力を増す』と助言されたのだ。

 なので、クライスの真似をしてみた。

 いつもそう喋る様に。


「モッタの実力者であるフチルベ様の信頼を勝ち取り、リンゴの販売権を握る様話を持ち掛け。領地を混乱に陥れようとしたのですよ。」


「そうすると何か!俺はその男に利用されたってのか!」


「はい。フチルベ様は、あなたを溺愛していたそうではないですか。あなたの生命の危機を救えば、フチルベ様の心を掴むのは容易いでしょう?」


「く、くそう……。」


 ブラウニーは悔しそうに、その場へ崩れ落ちる。


「でも客人は私達にも優しく、とてもその様な方には思えませんが……。」


「それです。《害の無さそうな人間が一番有害》、人間心理を逆手に取ったんですよ。」


「そ、そんな……。」


 デッセンも肩を落とす。


「そして、その証拠が有ります。〔あれ〕は有った?」


 ラヴィは打ち合わせ通りに、アンへ話を振る。


「ええ。これよ。」


 そう言ってアンは、幾つかの紙を取り出す。


「申し訳ありません、屋敷の中を探らせて頂きました。」


 アンは紙束を、ソファを挟む様に設置されたテーブルの上へ並べる。


「フチルベ様も用心深い方だったのでしょう、男とのやり取りを文面に残していた様です。この通りに。」


 指差した紙には、男とのやり取りが生々しく綴られていた。

 初めは大した事の無い内容だったが。

 段々、恩着せがましくなって行く。

 そして、リンゴの販売権を求める内容で終わっていた。


「『このままでは、この男に実権を握られる』と感じたのでしょう。ブラウニー様を守る為にも。『販売権を自分が握らなくては』と考え、行動を起こしたと考えられます。」


 がっくりしたままの2人に、アンは続ける。


「家を飛び出した原因が何も分からず、ブラウニー様は高熱で倒れた市場が原因だと考えて、店主達に八つ当たりをしていた。」


 ……。


「騒ぎを起こせばフチルベ様が戻って来ると思って。違いますか?」


 ……。

 ……。

 ……。


 ようやくブラウニーが口を開いた。


「そうだよ。親父はおかしくなったんじゃないか、その原因が俺だと思いたくなかったんだ……!」


「坊ちゃん……。」


「……済まなかったな、俺の八つ当たりに巻き込んでしまって。」


 シュンとしたまま、ブラウニーはラヴィに謝る。


「でも、客人はその毒を治療したんでしょう?スパイだなんて……。」


 尚も信じたがらないデッセンに、アンは言う。


「錬金術を悪用する卑劣な奴は、少なからず居るのです。私が代表して謝ります。」


 アンのポケットから銀の小人がひょこっと現れ、テーブルに着地すると立ち上がって頭を下げた。


「何と!錬金術師様でしたか……!」


「錬金術を使えば、毒盛りも解毒も容易く出来るんです。この小人の様に。」


「錬金術師全てが悪者では無いんです。それだけは、ご理解頂きます様……。」


 セレナも頭を下げた。


「分かってるよ。あんた達も、あの男に助けられたんだろう?」


 勿論、クライスの事だった。

 指輪が塊になった件は、これで納得が行った。

 ラヴィとクライスが余りに仲睦まじかったので、悪戯したくなったのだ。

 それは全幅の信頼の証だから。




「で?これからどうすれば良い?」


 わざわざこんな話をするんだ。

 案が有るのだろう。

 ブラウニーはそう考え、ラヴィに尋ねる。


「あなた方は普段通りにして下さい。あの男に感付かれない様。」


「俺達に出来る事は、それ位か……。」


「何を仰いますか!普段通りの生活なんて、本当は難しいんですよ。」


 ラヴィが一番その事を知っていた。

 何事も無い日常。

 それが突然終わってしまった彼女にとっては。


「私達が何とかしますから。その為に旅をしてるんです。」


「頼もしいな、全く。」


 本気で口説きたくなる女だ。

 ブラウニーにそう思わせるラヴィ。

 そんな女が、ただの行商人であるだろうか?


「あんた、本当は何者だ?」


 自分の心を悟られまいとして、ぶっきらぼうにブラウニーは尋ねる。

 それに対し、さらりとかわす様にラヴィは笑って言った。




「ひ・み・つ、ですっ!」

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