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第219話 魔法使いと一問一答

 トントントン。

 小屋の前に立ち、玄関のドアをノックするクライス。

 ガチャッと開けたのは、オズ。

 まだ執事の格好のまま。

 すぐに中へ引っ込み、メグを呼んで来る。

 トコトコやって来たメグは、クライスに言う。

 能天気に。


「話は纏まったかい?」


「ああ。早速目的地へ向かうよ。頼む。」


「でも良いのかい?あれだけで。」


「何がだ?」


「【本当の事】は、半分位しか伝えてないだろ?」


「仕方無いさ。今すべき話じゃ無い、だろ?分かってるくせに。」


「一応、確認したかっただけさ。」


 そう雑談するクライスとメグ。

 旧知の仲の様に。

 遠くからそれを見つめる一同。

 会話の内容は聞こえて来ないが、やたら親し気な様子に不思議がる。

 殆ど面識は無い筈だが……。

 しかしこれからそれぞれが成す事の前には、些末な事に過ぎない。

 そう考える事にした。




 クライスが、メグを連れてやって来る。

 その後ろには、メイと。

 キツネ犬に戻ったオズ。

 メグが一同に伝える。


「ソーティにはメイが、ラヴィ達にはオズが同行する。良いね?」


 頷く一同。

 早速、ソーティの右肩にメイが飛び乗る。

 ラヴィの右肩にはオズが。

 どうやら使い魔の定位置は右肩らしい。

 小さいので、それ程負担は無いが。

『質問を受け付ける』と言った、メグの言葉に従い。

 尋ねる者が独りずつ前に出る。

 そしてメグの耳元で囁く。




 まずはテノ。


『ガティへの遷都を助言したのは、ズバリあなたですか?』


『違うよ。どうしてだい?』


『ケミーヤ教の連中や、錬金術師からの助言とは思えませんでしたので。失礼しました。』


 一礼して、その場を下がる。




 次はロッシェ。


『姉さんの居場所を知っていたら……いや、知ってますね?』


『まあね。でもそれは君が、自分の力で取り戻す事柄さ。』


『分かりました。』


 メグは言った。

 《取り戻す》と。

 それは、姉さんの救出が叶うと言う事。

 もう迷わない。

 ロッシェの目の奥に火がともった。




 続いてアン。


『お話の中で、気になる点が有ったのですが。』


『ほう。何処だい?』


『黒歴史の男があなたに、解呪の時期を頼んだ辺りです。』


『良く聞いていたね。』


 感心するメグ。

 話の内容によると。

 男は魔法使いに願ったが。

 王族の血が絶えぬ様、それが解呪の然る時期。

 だとすると。

 ケミーヤ教の関係者が、側室としてヘルメシア王家へ潜り込んだ時が。

 その時期ではないかと。

 アンは考えた。

 ならば、ここに居る者の内……。

 そこまでメグに囁くと、右人差し指で口を塞がれる。


『それ以上は無用。察しの通りだよ。でも黙っていた方が良い。事が済むまではね。』


『……分かりました。』


 そう返事して、アンは下がる。




 セレナが前に進み出る。


『ラヴィの野望は、達成されるでしょうか?』


『それは《従者》としての質問かい?それとも《仲間》?《友達》?』


『……【家族】、です。』


『良く言った!』


 セレナにとって、ラヴィは掛け替えの無い人。

 この旅で、その事を実感した。

 だから《家族》と答えた。

 それに満足し、資格を満たしたと考え。

 メグは告げる。


『君は《見届け人》に選ばれた。これで答えになるかな?』


『……はい!』


 セレナの声は明るかった。

 その答えだけで十分。

 頬を緩ませながら、セレナが下がる。

 それを怪しい顔付きで見ながら、最後にラヴィが。

 ソーティは、『尋ねる資格が無い』と辞退していた。

 そんな権利が与えられたら、殺してしまった人達に対して申し訳が立たない。

 そんな思いからだった。

 ラヴィはオズをソーティに預け、メグの右腕を掴んで一同から遠ざかる。

 十数歩歩いた所で、ようやくひそひそ話をし始めるラヴィ。

 どうしても内緒で、聞いておきたい事があったのだ。

 それは。




『ここで、はっきりさせませんか?』


『何をだい?』


『クライスとの関係です。随分親しい間柄の様ですが……。』


『使い魔を通じてちょっかいを掛けてたからね。まあ色々と。』


『そこが不思議なんです!アンも居るのに、何でクライスだけ……!』


『君の発言の意図が分からないな。』


『あなたがクライスを、この世界の生贄に選んだんじゃあ……!』


 そこまで言って、言葉に詰まるラヴィ。

 クライス、クライス、クライス。

 みんなクライスばっかり頼って。

 クライスばっかり苦労して。

 ここまで来て、更に彼へ負担を掛けようとする。

 何故、彼が背負わなきゃいけないの?

 彼だけが、どうして……!

 最早、表現のしようが無い感情。

 辛かった。

 王女としてでは無く。

 一人の女性として。

 それでようやく、メグも察する。

 ラヴィの心持ちが。

 最後には消えてしまうのではないか?

 この世界に殺されてしまうのではないか?

 彼を失うのが怖い。

 そう考えると、前に進めない。

 いつの間にか、ラヴィにとってクライスの存在は。

 それ程大きなモノになっていた。

 初めは、軽い気持ちで『頼る』なんて考えていた。

 でも、彼の事を知れば知る程。

 今までの境遇、これからの境遇。

 辛くて余り有る。

 報われない人生の様に感じた。

 それはあんまりでしょ?

 懸命に生きて来たのに。

 特殊な力を持っただけで、彼も人間なのよ!

 不憫過ぎる。

 それは憐みの気持ちでは無く。

 慈しみを越えた境地。

 それを人は、【愛】と呼ぶのだろうか。

 メグは唐突に、ラヴィの身体を引き寄せる。

 びっくりするラヴィ。

 身体がガタガタ震えていた。

 それは、メグが抱きしめる前から。

 皆から離れて、質問を始めた時から。

 皆に震えを悟られぬ為、ラヴィはわざと距離を置いたのだ。

 その健気さ故にメグは、ラヴィをギュッと抱き締め。

 彼女の気持ちを落ち着かせる様に言う。


『世界が選んだんじゃ無い。彼が自ら望んだ事なんだよ。』


『え?な、何を言って……。』


『黙って聞いて。これから起こる事は、良い事ばかりじゃ無い。納得行かないかも知れない。でもそれは、彼が願った結果なんだ。だから……。』


 そしてメグは、こう締めくくった。




『これ以上、深く考えないであげて欲しい。それが結果として、彼の報われる道なんだから。』




『は、はい……。』


 ラヴィは、そう答えるしか無かった。

 気が付いたら、目から涙が。

 ツツーッと。

 慌てて駆け寄るセレナ。

 心配になって、アンも駆け寄る。

 2人に囲まれ、『大丈夫だから』を繰り返すラヴィ。

 メグを含む4人は、そのままクライス達の元へと戻って行った。




 こうして質疑応答は終わった。

 いよいよ、最終へ向かっての旅が始まる。

 皆、やり遂げようという意思で満たされている。

 引き締まった面構え。

 ケミーヤ教の連中が見たら、さぞかし憎たらしく思う事だろう。

 そいつ等にとっては、天敵の誕生と同意だから。

 時は満ちた。

 メグが、幻の湖と外界とを繋ぐ。

 そこからは。

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