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第213話 始まりの錬金術師

 メグの口から出た、クライスとアンの先祖。

 始まりの錬金術師。

 それを語る前に。


「まだ顔色が優れない様だね。どれ……。」


 そう言って、おもむろに立ち上がると。

 メグはソーティの傍まで来る。

 ソーティを椅子から立たせて。

 背中を上から下に、スーッと右手でなぞる。

 くるりと半回転させ、メグと向かい合う状態のソーティに。

 今度はへその辺りから喉元まで、ヒュッとなぞる。

 そして右手のひらを頭の頂点へ添え、少し力を込めると。

 ソーティの胴を縦に沿う形で、一瞬虹の輪が見え。

 シュルリと回転し始める。

 メグがなぞった方向へ。

 すぐに虹の輪はソーティの身体の中へ吸い込まれ、外からは見えなくなった。

 すると、ソーティの顔色が見る見る内に改善して行く。

 テノは歓喜し、メグへ礼を言うと共に尋ねる。


「何をされたのですか?」


「ちょっと【気】の流れが乱れていたものでね。修正したのさ。」


「気……?」


「体内を流れる生命エネルギー。《あいつ》はそれを、そう呼んでいたんだ。」


「あいつ、ですか?」


「そう。クライス達の先祖。」


『こう言う芸当が得意な奴だったからね』と、メグは頷きながら席へと戻る。

 着席すると、話の続きをし出す。

 それは、こんな内容だった。




 ある世界での事さ。

 不思議な力を持つ奴が居たんだ。

 己の生命エネルギーを自在にコントロールして、身体強化を図り。

 それを駆使して戦っていた。

 その技を【気功】だと教えてくれたよ、そいつは。

 同じ様に、ボクへ興味を持ったらしくて。

 ボクが使う術に付いて、色々聞いて来たよ。

 それはもう、しつこい位にね。

 そうしている内、共に行動する様になって。

 その世界であちこち旅をしていたんだ。

 あいつはボヤいていたよ。

『何時まで経っても争いは無くならない』ってね。

 その世界は殆ど末期症状だった。

 お互いをののしり合い、けなし合って。

 とうとう双方、トンデモ兵器を繰り出して来た。

 ボクには分かっていた。

 この争いは、両方消えて無くなる事で決着すると。

 一言で言うと、『滅亡』だね。

 あいつはボクに『何とかならないか』と懇願して来た。

 でもさっきも言っただろう?

 ボクは先を知っている、即ち歴史には介入出来ない。

 ボクは、未来を変える力までは持って無いんだ。

 大層残念がったよ。

 そいつの顔を見ているのが辛くてね。

 その世界を離れる事にしたんだ。

 そしたら『一緒に連れてってくれ』って言い出したんだよ。

 普通の人間は、次元間の移動に耐えられない。

 君達にそう言った様に、そいつにも説明したんだ。

 でもがんとして聞かなくて。

『可能性に賭けたい』、そこまで言うんだ。

 だから言ってやったのさ。

『この世界を救える可能性はどうした?見捨てるのか?』ってね。

 そしたらこう言い返されたよ。

 お前がこの世界を離れる事、それが何を意味するのか位分かる。

 救える未来なんか、最初から無い。

 世界の終焉を見届けたく無いから、離れるんだろ?

 そんな言葉で、見事に僕を看破したよ。

 頭も相当切れるみたいだったから。

 こいつなら、もしかしたら……。

 そう思い直す様になってね。

 ただ、無策で危険に身を投じさせたく無かったもんで。

 2人で議論して、次元を越える方法を探ったんだ。

 そして、1つの結論に至った。

 それが、『気を増幅して身体にまとう』やり方。

 こんな言い方だと、分からない者も居るかも知れないけど。

 気は生命エネルギー。

 それはつまり、生きるプラズマ。

『魔力』とこの世界で呼称する物と同等。

 プラズマですっぽり身体を包んでしまえば、恐らく次元の壁を越えられる。

 でもそれは多大なリスクを負う。

 1回限りの大技。

 2度目は無い。

 しかも成功するかも分からない。

 試した人間を知らないからね。

『それでもやる』、あいつはそう言ったよ。

 覚悟の強い目をして。

 そして、実行に移した。

 余程の強運の持ち主だったらしいね、クライスの先祖は。

 ギリギリの所で成功したんだ。

 この世界に辿り着いたのは、その技の効力が切れる一歩手前。

 他の世界の裂け目にも行けたんだろうけど、時間が無くて結果ここになった。

 それだけさ。

 望んで来たんじゃ無い。

 だからそいつをここへ残し、平和な平凡を過ごさせた後。

 最期を看取みとって、別の世界へと移るつもりだった。

 けどね……。




 そこまで話して、メグは一服。

 グビッと紅茶を飲み干す。

 すかさずオズが、お代わりを入れる。

『ありがとう』とメグが礼を言うと、オズは一礼して再び着席した。

 その様子を羨ましそうに見つめるメイ。

 自分も在る日の姿へ戻りたい。

 でもそれは出来ない。

 ここへ来るまでに、一度人間の姿へ戻ったから。

 だから大人しく、テーブルの上に乗っている。

 椅子では、皆の姿が見えないから。

 リアクションのチェックの為。

 メイの反応を見ながら、何処まで話せるかメグは探っていた。

 今後訪れるかも知れない世界で、同じ状況に出くわした時の参考として。

 自分の技の事、他の世界の事。

 それを語る事は、この世界をメグが離れる時の到来を告げている。

 同時に、ラヴィ達が抱える問題の解決が目の前に迫っている事も。

 最終盤。

 会話の中で、それを自覚し出す一行。

 聞く姿勢も真剣になって来た。

 ロッシェなんかは、メグの方へ前のめりに成りかけている。

 はっきり分からなくても、ニュアンスが掴めれば良い。

 どうせ細かい事は、俺じゃ無い誰かの担当だ。

 そんな考えの様だった。

 熱視線を一斉に浴びせられると。

 流石のメグも、気軽な考えでは語れない。

 言葉選びも慎重になる。

 続きを語るには、少々時間が掛かった。

 何処まで話したら良いか。

 どんな言葉だと伝わるか。

 誠意をもって考え。

 そして、再び語り出した。




 状況が変わった。

 この世界で、そいつに意外な運命が待ち受けていたんだ。

 それが、《錬金術師》。

 他の世界にも居るよ、そりゃあ。

 初歩の初歩しか無い世界も。

 神にも迫る程の強大な力を持った者が居る世界も。

 様々さ。

 だから、この世界の様に存在そのものが無い所も当然ある。

 でもそいつは、選ばれてしまったんだ。

 創始者として、もたらす者として。

 そいつは運命を受け入れたよ。

 次元の裂け目を安定化させた後、そいつは旅立った。

 目的地は無かったけど、運命が交錯する点が必ず有る。

 ボクと出会った時の様に。

 そう信じて、幾つかの時が経った頃。

 妖精の森に迷い込んだ。

 そこで或る妖精と出会い、賢者の石の製法と共に。

 錬金術師と言う肩書を手に入れた。

 それから後の事は、クライス達の方が詳しいんじゃないかな?

 そうやって、宗主家の系譜は出来上がったんだ。

 取り敢えずはここまで。

 頭の中を整理すると良い。

 いろんな情報で混乱してるだろうからね。




 一旦、メグの話は終わり。

 着席している者は、顔を見合わせる。

 皆眉間にしわを寄せていた。

 余程小難しかったのだろう。

 ロッシェ辺りは、頭がパンクしそうだ。

 しかし、予想外だった。

 魔法使いは、異世界の存在と言われても不思議は無い。

 寧ろ、そう考えるのが自然。

 でも錬金術師の創始者まで、異世界の住人だったとは。

 妖精が見えるのも、そのせいなのか?

 そうすると……。

 聡明なセレナはつい深読みしてしまう。

 何せ、宗主家では無い自分にも妖精が見えるのだ。

 自分だけでは無い。

 これまでの旅で出会って来た何人もの人達。

 王族にも、12貴族の中にも。

 そして一般人にも、見える者が居たのだ。

 今の話と無関係とは思えない。

 そう考え、一旦円卓を離れるセレナ。

 他の者も、自然と椅子から立ち上がっていた。

 少し離れた所で、相談する事に。

『ごゆっくり』とメグに手を振られたので、遠慮無く。

 ラヴィは、それから敢えて遠ざかろうとしたクライスを捕まえ。

『居るだけで良いから』と、無理やり引っ張って行く。

 そこで、濃密な情報の整理が行われた。

 その様子は……。

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