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第186話 手分けして

 一行の様子を、家屋の陰から見ていたモグラもどき。

 しっかり確認すると。

 体に似合わないウサギの様な後ろ足で、ピョンピョン飛び跳ねて行く。

 そして何処かへ消え去った。




 エミルの話を聞いた一行。

 メイの話も合わせると。

 メイが魔力を感じたのは、部屋の隅に空いた穴からで間違い無さそうだ。

 さて、これからどう動くか?

 アイデアを出し合うが、どれも決め手に欠ける。

 何か材料があれば。

 皆がそう思い始めた時。




 ブルルッ!




 急にメイの毛が逆立つ。

 それも全身。

 ギョッとするラヴィ達。

 クライスはそれを見て考える。

 その間に、再び。

 ブルルッ!

 また逆立つ。

 これは……!

 思い当たるクライス。

 メイも同じ事を考えていた様だ。

 クライスはすぐに、皆へ指示を出す。


「ラヴィ!テノ!アン!3人は小屋の中を探ってくれ!」


「え、ええ。良いけど。」


 急な指名に少し引くが、ラヴィは返事を返す。

 続いてクライスは。


「セレナとロッシェは、俺と来てくれ!」


「え?何処へ?」


 ロッシェは戸惑うが。

 そのまま駆け出すクライスに、慌てて付いて行く。

 セレナも一緒に。


「うちもー!」


 クライスに付いて行こうとするエミル。

 しかしクライスは。


「ラヴィ達に穴の場所を教えてやってくれ!頼んだぞ!」


 そう言い残し、遠ざかって行く。

 頼まれたからには、仕方無いなあ。

 気を取り直して。


「みんな!うちに続けー!」


 ピューッと小屋の方へ飛んで行く。

 駆け足でアンが続く。

 その後ろからテノも続くが。

 並走するラヴィに念を押される。


「他の人は妖精が見えないからね?気を付けるのよ?」


「お守りをされている気分だな……。」


「何か言った?」


「いや、何でも。」


 一回りも年下の少女に、注意を受けるとは。

 今の姿を部下が見たら、何と言うだろう。

 尻に敷かれているとでも?

 想像するだけで情けなくなるが。

 今は考えるのをよそう。

 そう思い直して、エミルの後姿を追うテノだった。




「クライス!こっち!」


「はいよ!」


 細い路地をどんどん進んで行く、クライス側。

 メイが先頭を走る。

 その間も、何回か毛を逆立てている。

 十分な説明も無いまま走らされる、ロッシェとセレナ。


「どう言う事だよー!」


 叫びながら、曲がり角を駆け抜けるロッシェ。


「考えるより動け、よ!」


 セレナも華麗に曲がって行く。

 右に、左に、左に、右に。

 迷走した挙句、到着したのは。

 宿屋の裏。

 食糧庫?

 外観からすると、その様に見える。

 勝手口の様なドアが、僅かに開いている。

 その奥から、ギラリとした目線がチラリ。


「あれよ!」


 メイが突入する。

 クライスがドアをガバッと掴み、勢い良く『バンッ!』と開く。

 そして3人も突入。

 そこには。




 一方のラヴィ達は。

 エミルだけ勝手に小屋へ入ったので、どう言い訳を作って侵入するか悩んでいた。

 そこへ。


「お!あの時の姉ちゃん!」


 立ち話をしていた男達の内の1人。

 テノの顔をジーッと見ながら、ラヴィに近付く。

 そしてテノの反対側へ回り込む。

 アンの存在に気付くと、愛想笑いを振り撒く。

 しかしアンは、引きり笑いで返すだけ。

 逆に牽制されると、ラヴィの正面に回り話し掛けて来る。


「どうした?こんな所に突っ立って。」


「お忘れになったのですか?」


「あ、ああ。例の件か。」


 例の件。

 怪しい影、通称ジャマーを撃退すると言う約束。

 ただのリップサービスとばかりに思っていた。

 それが、こうして約束を果たしに来てくれるとは。

 さては、俺に惚れたか?

 妄想を爆発させる男。

 年はテノより何才か上に見えるが。

 そのデレデレした顔からは、本当の年齢は分からない。

 それ程だらしない緩み顔。

 コホンとアンが咳払い。

 おっと、いけねえ。

 自己紹介でも。


「俺は【デレスキー】。ジャマー対策本部を仕切る、自警団団長だ。」


 ラヴィ達3人も軽く挨拶。

 テノは、半分無視されている感じがするが。

 それよりも。

 入り口の向こうから手招きするエミル。

 チラッ、チラッと見える為。

 思わず『ちょっと待て!』と叫んでしまうテノ。

 途端に、痛い人を見る様な目付きをするデレスキー。

 だから気を付けてって言ったじゃない。

 妖精は空気を読まないんだから。

 そう思うラヴィだったが。


「詳しく話を聞かせて貰えませんか?」


 デレスキーを、営業スマイルで魅了する。

 そして、小屋へ入ろうとする動きを見せる。

 それでやっと、デレスキーが真剣な目になる。


「おお、そうかい。何も無いが、取り敢えず適当に座ってくれ。」


 中へ案内するデレスキー。

『どうも』と言いながらラヴィ。

 そしてテノ、アンと入って行く。

 テーブルを挟んで、3対1で並べられる椅子。

 1の方に、デレスキー。

 3の方に、ラヴィ達が掛ける。


「さあ、何でも聞いてくれ。」


 どっかりと腰を下ろしているデレスキー。

 その前から小屋に居た連中は、デレスキーの後ろに立たされている。

 申し訳無く思うラヴィ達。

 しかし、『ここだよー!ここだよー!』と穴の辺りをクルクル回っているエミルが気になって仕方が無い。

 止まりなさい!

 部屋の隅をギロッと睨むラヴィ。

 ひっ!

 硬直したエミルが、ヒュルルル、トスン。

 床に落ちる。

 ラヴィの視線を追っていた、立たされている男の内の1人が。

 発言する。


「凄いな、姉ちゃん。そこがおかしいんだよ。」


「おかしい、とは?」


「何かが出入りした後があるんだ。ほら。」


 穴の傍の床を指差すと。

 何かが通った様な、こすりの後が。

 それを近くで見る振りをして、むんずとエミルを捕まえると。

『分かったから、大人しくしてなさい』と威嚇する様に囁く。

『はひっ』と返事をした後、シュンとなるエミル。

 可哀想に思い、アンがそっと膝の上に抱き上げる。

 涙目だったエミルも、ようやく安らぎを取り戻す。

 私が悪いんじゃ無いわよ?

 一人、悪者にされそうになるが。

 それを否定する様な顔付きで、ラヴィが椅子へ戻る。

 そして、涼しい顔でデレスキーに言った。


「お任せ下さい。必ずや、退治して見せましょう。」


「えらい自信だな。大丈夫なのかい?」


「ええ。もう既に、目星は付いていますから。」


「本当か!」


 思わず大声になり、ガタっと立ち上がるデレスキー。

 その驚いた顔を、下から見上げるラヴィ。

 クライスが追い駆けたのは、そいつ絡みに違いない。

 そうよね?

 大丈夫よね?

 少し心配になりながらも、クライスに望みを託すラヴィだった。

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