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第18話 小さな別れ、小さな出会い

 領地〔モッタ〕からメインダリーへと向かう影。

 その襟から、また金の雫がポトリと落ちた。

 金の小人となったその雫は。

 影が遠ざかるのを確認して、トコトコと歩いて行く。

 逃亡の身となった敵国の貴族ミセルが、セントリアに向かう直前の事だった。




 静養の為。

 リーフ卿はしばらく、施政を信頼出来る側近に任せる事とした。

 側近は、リーフ卿が幽閉された時に領地内の辺境の村へ追放の身となっていたが。

 復帰の噂を聞いて、ロウムへ駆け付けて来たのだ。

 リーフ卿は弟の罪を許し、しかし領民への配慮も有って自分の世話係を命じた。

 自分の目の届く所に置いて、再起を果たせる様見守るつもりだった。

 弟はその気持ちを知ってか知らずか、せっせと動き回っている。

 変なひがみは当分抜けないだろうが。

 それでも『このままではいけない』と自覚しているのだろう。

 行動に移すだけ進展は有った。

 リーフ卿は側近に、『施政の中心をユーメンダに戻す事』と『ロウムは重要な軍事的拠点とする事』を明言。

 側近もそれに従い、ユーメンダへと旅立って行った。




「すっかり世話になったな。」


 無事に子供達を取り戻したヤンクは、一行へ頭を下げる。

 自分に出来る事は。

 リーフ卿の意志を村人に伝え、トッスンの発展の為に尽くす事。

 そう考えた。

 その切っ掛けをくれた一行に感謝し、一行が旅立つ日に自分も村へ帰る決意をしたのだ。


「こちらこそ。」


 ラヴィも頭を下げる。

 結局ヤンクとは、身分を明かさず行商人として別れるつもりだった。

 その方がヤンクの為だ、と。


「もし村に寄る事があれば、熱烈に歓迎するぞ。」


「またお会い出来る事を、楽しみにしています。」


 セレナも応えてお辞儀をする。

 ヤンクは、後方でせっせと旅の準備をするクライスとアンを見やる。

 彼等には、敢えて何も聞かない事にした。

 あれだけの事をして、ただの行商人である筈が無い。

 リーフ卿も認める人物だ、何か大変な事態に直面しているのだろう。

 そう感じた。


「またな!」


 ヤンクは『さよなら』では無くそう言って、再び会える日を楽しみにトッスンへの帰路に就いた。

 ラヴィとセレナは手を振って見送った。

 丁度姿が豆粒程になった頃、クライスが準備を終えた。


「俺達も行こうか。」


「ええ。」


 次の目的地は、隣のモッタ。

 アンがセレナに尋ねる。


「そう言えば、モッタは何が有名なの?」


「あそこは山脈が近いから、フルーツが取れるわね。美味しいわよ。」


「へえ、そうなんだ。」


「因みにレンドは水がきれいだから野菜、サファイは広い平原があるから穀類ね。」


「そう言うのに詳しいね。」


「領地の特産などは、しっかり把握しておかないと。政治の基本よ。」


「俺達には余り関係無かったからな、政治は。」


 クライスが、そう口を挟む。

 対してラヴィが、ため息まじりに言う。


「何言ってるの。大領主には大体、お抱えの錬金術師が居るものよ。当然父様にもね。」


「分かってるよ。『俺達2人には』って事だよ。」


「宗主で有る私達は、誰にも仕えないの。中立を保ってるのよ、なるべくね。」


「この旅も仲間として、だからな。」


「だから敬語じゃ無いのね。」


「不満か?」


「いえ、対等な立場の方が気が楽よ。王族の血って、結構面倒な物よ。」


「分からなくは無いがね。特殊なのはお互い様だからな。」


 逆に特別な立場だからこそ、こうやって言い合えるのかも知れない。

 そう言う人間が居る事を、とても有り難く思う一行だった。




 ロウムから街道沿いに進む事、何日か。

 山脈はなかなか大きく見えて来ない。

 それだけ高いのだろう。

 その代わり、周りの景色が段々と森の様に鬱蒼として来る。

 変な輩が出て来てもおかしくは無い。

 そう考えていた時。

 案の定、そう言うのに出くわした。


「や、やい!怪しい奴!大人しく俺達に従え!」

「従え!」


 それは、兵士の様な恰好をした少年3人組だった。

 年は10~15才位だろうか。


「よーく言えたね。偉い偉い。」


 そう言って、頭を撫でようとするラヴィ。

 弟みたいに思えたのだろう。


「ば、馬鹿にするな!俺達は兵士だぞ!」

「……のつもりだぞ!」

「だぞ!」


 恐れないラヴィにたじろぎながらも、木の棒を構えて威嚇する3人。

 その姿が、余計にラヴィの心をくすぐったらしい。


「どうしてそんな意地悪を言うのかな?お姉ちゃんは悲しいぞー。」


『そんなキャラでした?』と言った顔のセレナ。

 アンも同じ様な顔をする。

 クライスだけは、別の事を考えていた。


「君達、親は?もしかして家に居ないんじゃないのか?」


 ギクッとする3人。

 ハッとするセレナ。

 まさか……。


「領主様の命令で連れて行かれた、とか?」


 顔が強張る3人。

 図星の様だ。


「何でそんな事言うんだよ!」


「ここは恐らく、君達の村に近い。なのに、村の方から生活臭がしない。怪しむのも当然だろ。」


 俺達臭うのか?

 違うよ、例えだよ。

 どうする、俺達じゃかないっこないよ。

 ひそひそと相談する3人。


「お姉ちゃん達ね、旅してるんだ。物を売り歩いてるんだよ。怪しく無いよ。」


 そう言って、荷物の中身を見せるラヴィ。

 確かに、荷物の中にはダミーの売り物が入っていた。

 検問が何時有っても良い様に、予め用意していた物。

 最年長に見える少年が、入っている袋を覗き込む。

 中をガサゴソ探るが、特段目に付く物は無い。

 それで、ラヴィの言う事を一応信用した様だ。


「……変な事しないな?」


「しないしない。」


「付いて来い。こっちだ。」


 おい、良いのか?

 しょうが無いだろ、このままにしても。

 あんちゃんが良いなら、俺は良いよ。

 そう言う会話が聞こえて来る。


『取り敢えずはオッケーかしら。』


『でもどう言う事でしょう?親が居ないなんて……。』


『村に行けば分かる事さ。』


『何が有っても良い様にしておきますね、兄様。』


『ああ、頼むよ。』


 一行も子供達に聞こえない様に、ひそひそ話をする。

 嫌な予感がするクライス。

 的中して欲しく無かったが……。

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