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第179話 ここを始点に、再び

 ヘルメシア帝国現皇帝ユーメントこと、テノ。

 彼が加入し。

 現時点でのパーティーメンバーは6人と、1妖精と、2匹。

 2匹?

 メイの他にもう1匹魔物が居る事を、忘れてはいけない。

 デュレイの父アドレイムに憑り付いていた、あのスッポン。

 未だにカーテンと金の網にくるまれ、身動きが取れないまま。

 クライスは、全く開放する気を見せない。

 そしてずっとクライスの左腰に下げられていた為、話は全て聞いていた。

 魔法使いに会いに行くだと?

 俺はどうする気だ?

 会話の内容は全て記憶した。

 それは奴も承知の筈。

 情報漏洩を防ぐ為、ぶら下げたまま動くのが道理。

 しかし奴の取る行動は、常軌を逸する事がある。

 何に利用されるか分からない。

 何よりも。

 逃げ出しあいつ等と合流した所で、情報を吐き出させた後俺をあっさりと消すかもしれない。

 身の振り方を考えては来たが。

 振りようが無いと言う結論に達するスッポン。

 このままじっと動かないのが吉。

 この小僧が俺を呼ぶまで、耐えるしか無い。

 そう言う場面に遭遇する事を願おう。

 その時は、大きな貸しを作ってやる。

 俺の身が安泰になる様に。

 ハハハハ!

 心の奥でそう笑うが、無性に空しくなるスッポンだった。




「じゃあ早速、これに着替えて貰おうか。」


 クライスは、部屋の隅に置いてある大きな袋をゴソゴソと漁る。

 帰国前の買い出しで、何故か用意する様指定されていた物。

 旅人用の服。

 しかもまた行商人。

 今回はフード付き。

 テノの為に、顔を隠せる物にした。

 この時点で、テノの加入は予定通りだったと言う事が分かる。

 こんな細部まで、魔法使いは指示を……。

 ごにょごにょとクライスに話した内容は、多岐にわたっていた。


「こっちを見ないでよ!」


 書斎机に隠れて、女性陣が着替える。

 それをメイが、のぞかない様見張る。

 エミルも男の娘妖精なので、同様に遠ざけられた。

 それが少し不満なエミル。

 妖精に着替えを見られたく無いなんて、変なの。

 うちが見えてなかったら、堂々とするくせに。

 そう思っていたからだ。

『男として見られてるんだ、結構な事じゃないか』とクライスに言われ、やや不満が収まったが。

 テーブル側では、男性陣がとっとと着替えを済ませていた。

 テノの格好を見ると、皇帝の威厳は見え隠れする程度になっている。

 かなり誤魔化せている。

 これなら旅に支障は出ないだろう。

 安堵するテノ。

 そう言えば、皆の年を聞いていなかったな。

 女性には失礼に当たるかも知れないが、はっきりさせておいた方が良いだろう。

 テノが話を切り出そうとした頃には、女性陣も着替えを終えていた。


「もし良かったら、年を教えて欲しいのだが……。」


 テノの発言に、案の定ギョッとするラヴィ。

 それを聞いてどうする気?

 顔にはっきり表れている。

 やはり、抵抗があるか……。

 そう思いながら、テノが説明する。


「皆もここへ飛んで来るまでに、幾分か時が過ぎただろう?あやふやになっていると思ってな。」


 確かに、体感時間と実際の時間では乖離かいりが見られる。

 時系列を統一する為に、確認の意味でも有効かも知れない。

 そうクライスに付け加えられると、皆そんな気にさせられる。

『これは罠よ!』と言う、ラヴィの乙女心からの叫びも空しく。

 体感時間を考慮して、年齢の自己申告と相成った。

 クライスは17のまま。

 アンは16になったばかり。

 ラヴィは18に、セレナは19に。

 ロッシェは20のまま。

 テノは29。

 因みにアリュースは27。

 ここで意外な事が判明する。

 そう、今までの旅の面子ではロッシェが一番年上だったのだ。

 その次がセレナ。

 続いてクライスとラヴィ。

 一番下がアン。

 その辺は曖昧にして来た。

 女性陣が嫌がるのも有るが。

 そんな事を言ったら、身分による差はどうなる?

 そこを気にしないのなら、年の差など些末さまつな事。

 どうでも良いし、面倒臭い。

 わずらわしいだけ。

 だからラヴィは、語気を強めて言った。


「この先、この手の話題は無し!良いわね!」


 それは暗黙の了解となった。




「さて、そろそろここを離れようか。」


 クライスが切り出す。

 じっとしていると、警護隊が怪しんで駆け付けるかも知れない。

 それは避けたい。

 ゆっくり休むのは後でも良い。

 事は一刻を争う。

 既に、こちらへ向かう足音が聞こえるのだ。

 皇帝不在で、クライスのみの執務室。

 見回りに来るのは当然。

 メイをテノに預けるクライス。


「こいつを宜しく。」


 皆すっかり、テノに対して敬語を使わなくなっていた。

 それは、正式に仲間となった証拠。

 対等な立場、一人の人間として見てくれる事がテノには有り難かった。

 テノの右肩にちょこんと座るメイ。

 しっくりと馴染んている様だ。

 それだけの期間、共に旅をしたと言う事だろう。

 クライスは、エミルを伴って執務室を後にする。

 その背中に、メイは言葉を投げかける。


「しっかりとあたいの魔力を感じなよ!」


「分かってるさ。お前は合流の為の目印だからな。」


 クライスはそう言うと。

 前をしっかり見据え、右手を高く掲げて手を振りながら退室した。

 続いて、『またねー!』と言いながらエミルも退室。

『ご苦労様です』と言うクライスの言葉が、遠くから聞こえる。

 警護隊がすぐそこまで迫っている事を、知らせてくれている。

 残された時間は、殆ど無さそうだ。




 ぽつんと部屋に残された5人。

 ラヴィがテノに聞く。

 その声は、焦りからか上擦うわずっている。


「私達は何処から出るの?」


「それは、こうするのさ。」


 前にエミルが触ろうとして、クライスが止めた時。

『変に部屋を動かしたく無い』と言わしめた物。

 真ん中の豪華なテーブルに置いてある、フルーツの山盛り。

 その中にある青いリンゴをテノが掴み、クルッと時計回りに回す。

 すると。

 ガコンッ!

 グゴゴゴゴ……。

 地響きを伴って、入り口から向かって左のソファが横にスライド。

 その下から、隠し階段が現れた。


「ずっとここに籠っている訳では無い。気晴らしをする為に、しば々これを利用するのだよ。」


 道理で、この鬱屈した部屋でも元気にしている訳だ。

 ラヴィ達は納得した。

 テノが急かす。


「これはすぐ閉まるのだ。早く通ろう。」


 先頭を切ってテノが。

 促されるままに、ラヴィ達が続く。

 ゆっくりと元の位置に戻るソファ。

 そして、青いリンゴが反時計回りで元の状態に戻った時。

 執務室から人の気配が消え。

 ソファは何事も無く、在るべき場所に在った。




「ありがとうございました。」


 クライスは玉座の間で、影武者に〔国賓の証〕を返却する。


「もう宜しいので?」


 そうクライスに尋ねる影武者。

 ニコッと笑って、クライスが言う。


「ええ。今から陛下の命の通り、エッジスへ向かいます。」


「そうですか。御無事をお祈りしております。」


「感謝します。それでは。」


 クライスは影武者に会釈をすると、エミルを連れて王宮を後にした。

 こうしてクライスの旅が、再び始まった。

 他の仲間は、区切り無く旅が続いている感覚だが。




 執務室へ戻って来るまで。

 ラヴィ、セレナ、ロッシェ、アン、トクシー、そしてデュレイの帰路の旅。

 皇帝が騎士を伴い、協力を取り付ける為にワインデューへと向かった旅。

 それぞれ結構な困難を伴ったが、無事に事を成し遂げた。

 その過程は、ここでは敢えて触れない。

 全てを語るには、長くなるかも知れないから。

 本筋では無いが、重要な話。

 それは《外伝》として、別の物語として紡ぐ事としよう。

最後に紡ぐとした《外伝》。

ラヴィ達の帰還の旅を『その1』として。

ユーメントの交渉の旅を『その2』として。

それぞれ掲載しています。

これからの主人公達の行方に関係の有る内容となっていますので、

そちらも是非、御一読下さい。

宜しくお願いします。

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