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第178話 一行、再編

 上手く行く事を知っていた。

 だから躊躇無く、術を行使した。

 クライスのその言葉が本当なら、魔法使いは全てを知っている……?

 場に居る者の内、それにいち早く気付いたのはアン。

 そしてラヴィ、ユーメント。

 遅れてセレナも。

 ロッシェだけは別の事を考えていた。


「魔法使いの異名がどうして伏せられてるんだ?『次元のマルマル』って何だよ?」


「いやあ、一応性別不明らしくてな。『魔女』とか断定が嫌なんだとさ。」


「ふうん。」


 頭を掻きながら答えるクライスに、何と無く納得するロッシェ。

 そこじゃないでしょ!

 メイは、突っ込みたくてしょうが無い。

 ご主人の事もそうだけど!

 普通は『お前が何で異名を知ってるんだ?初耳だぞ?』って聞くもんでしょ!

 どうやらここに居る連中は、感覚が麻痺しているらしい。

 クライスと魔法使いがセットであるかの様に。

 双方互いの事を知り合う仲の様に。

 それが相当な違和感を放っている事に、何故反応しないの?

 メイは不思議で仕方無かった。




 アンは、メイの疑問に気付いていた。

 しかし黙っていた。

 ここで話しても、恐らく濁されるだけ。

 明確には答えてくれない。

 兄様が魔法使いの元へ行くのなら。

 しがみ付いてでも、その傍に。

 一蓮托生。

 それが一番の近道だと、勘が指し示している。

 魔法使いがどこまで知っているのも気になるが。

 直に分かるだろう。

 そう思い直して立ち上がり、クライスに宣言する。


「兄様、私もお供します。絶対に譲りませんから。」


 アンの目の奥には、メラメラと炎がともっている。

 頼もしく思う一方、『巻き込みたくなかったのに』と言う後悔の念も。

 自分には止められないと知っている。

 だから、答える。


「その為に来て貰ったんだからな。頼りにしてるよ。」


「ありがとう!兄様!」


『拒絶されるかも』と言う一抹の不安があっただけに、クライスの方から宜しくと言われ涙ぐむアン。

『この兄妹は相当複雑な関係なのだろう』と、ユーメントは察する。

 自分もそうなのだから。

 同じ事を、ラヴィも思っていた。

 だから、ここは。


「ここに呼んだって事は、当然私達も連れて行くんでしょうね?」


 バッと立ち上がり、付いて行く気満々の質問でけしかけるラヴィ。

 他の者も続く。


「ラヴィが行くなら、私も!」

「おいおい、俺を除け者にすんなよな!」


 その中でただ1人、迷う者が。


「私はどうしたら……。」


 皇帝であるユーメント。

 ただでさえ本来の自分は、王宮を空けて旅をしているのに。

 留まるべきか、付いて行くべきか。

 悩むユーメントに、クライスが言う。


「ここに居ては不味まずいでしょう?留守にしている筈なんですから。」


「し、しかし……。」


「警護隊の方が混乱しますよ?『偽物じゃないか』って。」


「た、確かに言う通りだが……。」


 一番悩ませるのは。

 彼等とは一応、敵対している者同士。

 仲良く旅をしても良いのだろうか?

 立場の違い。

 それが迷いを呼んでいる。

 そこへ意外と、ロッシェが話し掛ける。


「一応俺、生まれも育ちもヘルメシアなんで……。気にしなくても良いんじゃないっすかねー。」


「そ、そうなのか?」


「はいー。『要らねえ』って言ったのに、向こうから騎士の称号を押し付けられただけなんで。『騎士になれればどっち側でも良い』ってんじゃ無いんですけどねー。」


「奇特な立場なのだな。」


「だからクライス達の中へ混ざる事に、しがらみなんて無いと思うんですよ、俺は。」


「そなたがそう言うのなら、そうなのだろうな。」


 ナイスアシスト!

 心の中で叫ぶラヴィ。

 この場合、誰よりもロッシェからの言葉に説得力が生まれる。

 実際そうして来たのだから。

 ここで心に、譲る余裕が出てくれれば良いけど。

 ラヴィは思った。

 それに応える様に、ユーメントは決心した。


「クライス殿、私も同行させては貰えまいか?」


「元々頭数に入っております。《或る事情》故。」


「事情?」


「はい。今は申せませんが。」


 予定調和のクライスの答えに、安堵するユーメント。

 そこへラヴィが1つ条件を付ける。


「なら皇帝と言う立場を忘れて、一人の人間として接しさせて貰うわよ。良いわね?」


「早速タメ口かよ!俺、一生懸命敬語を使ったのに……。」


 ガックリするロッシェを放って置いて、『飲むの?飲まないの?』と圧迫面接。

 ラヴィ達のやり取りを見て、『そうあるべきかもな』と考えるユーメント。

 その方が、旅に支障をきたさなさそうだ。


「分かった。飲もう。私の事は〔ユー〕とでも……。」


「駄目駄目!直球過ぎて身元がバレ易いでしょ!」


「しかし、名前に近い方が呼び易いのでは……。」


「私!全く関係無い偽名を付けられたのよ!セレナも!ねえ?」


 戸惑うユーメントとは対照的に、『慣れよ、慣れ』とばかりにラヴィが迫る。

 そして急に同意を求められたセレナは。


「初めは違和感が有るかも知れませんが、自然と慣れますよ……?」


 これで良いですか?

 アイコンタクトをラヴィに送るセレナ。

 上出来!

 反応するラヴィ。

 そして。


「クライス!良い名前を考えて頂戴!」


「俺?」


「私の名前だって、あんたが名付け親じゃないの。忘れたの?」


『とびっきりカッコ良いのをね!』とラヴィから注文が付き、チラッとユーメントの方を見るクライス。

『お任せするよ』と答えるユーメント。

 仕方無い。

 考えるか。

 時間も無いし、どうするか……。

 顎に右手をやり、ああだこうだと悩んで。

 クライスの口から出た単語は。




「……【テノ】はどうでしょう?或る世界で《王》を意味する言葉を、もじった物ですが。」




「良いね、それ!それにしましょ!ね!」


 適当にゴリ押すラヴィ。

 しかし、ユーメント本人も満更では無いらしい。


「テノ、か。良い名だ。」


「じゃあ宜しくね、テノ!」


 そう言って、ラヴィが握手をしようと前に出る。

 そして右手を出して来る。

 立ち上がって両手で握手をするユーメント、改めテノ。

 新たな仲間誕生の瞬間だった。

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