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第175話 会談で浮かぶ問題が、幾つか

「ここでしか見送れなくてごめんね。」


「良いよ、まだお話が有るんでしょ?」


「うん……。」


 煌めきの民の今後を決める詳しい話は。

 デュレイ家屋敷の再建でてんやわんやの、職人街でする事になった。

 ここで一旦お別れ。

 議事はまだ残っている。

 旅立つケイと、とどまるラヴィ。

『またねー!』と手を振りながら、王宮の入り口へと元気に進んで行く。

 それに軽く手を振って応える。

 ケイ達の姿が見えなくなるまで、ラヴィは立ち尽くしていた。

 そして頭を切り替える。

 あの子達は、未来へ向かって歩き出した。

 ならば私も。

 すぐに執務室へと戻って行った。




 ケイの証言から、ソーティのスラッジへの出入りが常習的である事が確定。

 残念ながら。

 彼は今、何処に居るのだろう?

 それも気にしなければいけないが。

 他にもやるべき事がある。

 ケミーヤ教の動きを牽制しながら、最低限日和見派を取り込まれない様にする事。

 ヤフレ家の協力を取り付ける事。

 そして何より、無事に謁見出来た事を報告しなければならない。

 トクシーは、アリュースへ。

 ラヴィ達は、グスターキュ帝国国王へ。

 つまりここを離れ、一度引き返さないといけない。

 かなりのタイムロスとなるが、仕方無い。

 特にロッシェにとっては、とても痛い。

 トクシーの口添えもあって、姉探しを手伝ってくれる様皇帝に取り付けた。

 但し、1つ条件が。

 それは『クライスがエッジスへ赴き、現地の錬金術師に手を貸す事』。

 何かのトラブルがあって、思う様に行っていないらしい。

『彼程の腕前なら、局面を打開出来る』と踏んだユーメント。

 騎士とは言え敵国の、しかも半人前の願いをおいそれと聞いては。

 皇帝の威厳に関わる。

 保たねばならぬ面子が有る。

 ユーメントの精一杯の譲歩だった。


「済まねえ!ここは俺を助けると思って、飲んじゃあくれねえか!」


 両手のひらを顔の前で合わせ、拝む様に『頼む!』と必死のロッシェ。

 クライスは悩む。

 協力するのはやぶさかでは無い。

 問題は、使者としての役目だ。

 帰還時に1人でも足りなかったら、王族反対派が警戒するだろう。

 特に通らざるを得ないダイツェンの支配者、アストレル家は。

 沈黙したままだが、何か仕掛けて来るかも知れない。

 帰り際は油断し易い。

 そこを突かれると苦しいので、出来れば馬を使って駆け抜けたい。

 クライスの離脱は、それ程の戦力ダウンを意味するのだ。

 そこで問題を解決しようと、名乗りを上げるデュレイ。

 彼も、ラピが守っているブロリアに一度は戻らねばならない。

 ホッとさせてやりたい。

 なら自分が、クライスに成り済まして一行に加われば問題無い。

 どうせ進む方向は同じなのだ。

 替え玉の件は、これで纏まった。




 ムヒス家の人間に付いては、ガティの別荘で暫く過ごす事となった。

 ムヒス家の治める【シゴラ】はシルバから南西方向、チンパレ家の支配する【ラミグ】を挟んで向こう側にある。

 その南側にワインデューが接する。

 作戦上、ラミグを何とかしないと。

 ヤフレ家と連携出来ないし、ムヒス家も領土へ戻れない。

 攻略しようにも、ケミーヤ教が邪魔をするだろう。

 戦力を整える必要がある。

 それにはテューレでの問題を解決し、錬金術師達を呼び戻した方が早い。

 話し合った結果、その結論に達した。

 別荘で暮らすのは、メルドとハリーの親子。

 お付きのリンツ、そしてウィドー。

 警護隊も巡回する事になったが、一番の胆は魔物の存在。

 ウィドーはクライスから、ムヒス家を守る様に念を押されている。

 出来なければ、死以上のものが待ち受けている。

 そう脅されては、従わざるを得ない。

 何たる屈辱。

 しかし、死以上のものなんて想像出来ない。

 完全屈服。

『お、俺が付いてるんだから!大船に乗った気でいろよ!』と強がるのが、せめてもの憂さ晴らしだった。




 デュレイが気になると言った、騎士クラスの貴族3人。

 1人は、ゲズ家に出入りしていた者。

 1人は、グスターキュ帝国侵攻の人選をした者。

 最後は、皇帝の弟で三男のフレンツ・ノイエ・シルベスタに仕えし者。

 彼等の動向が、どうも掴み辛い。

 一癖も二癖もある連中。

 敵か味方かの判別も付かない。

 その中に、ソーティをそそのかした者が居るかも知れない。

 懐柔しに、こちらへ近付いて来る可能性も。

 警戒する必要がある。

 デュレイはそう判断し、ユーメントへ進言した。

 承諾するユーメント。

 これ等についても情報を集める様、警護隊に指示した。




 後は。




「作戦を成功させるには、同時並行で事に当たる方が良いのだがな。」


 ユーメントが漏らす。

 とにかく人手が足りない。

 あちこちで起きる問題、一気に解決出来れば……。

 そう考えると、ユーメントがボヤくのも無理は無い。

 ふと出た、トクシーの一言。


「魔法使いが協力してくれたなら、或いは……。」


 強力な力を持つと言われている。

 故に行方を捜して味方に付けようとする者、歴史上に数知れず。

 それでも見つからない、不思議な存在。

 しかし。

 デュレイは或る者を見る。

 そしてそれは、他の者にも伝染した。




「ん?顔に何か付いてるか?」




 クライス。

 視線が集まるのも当然。

 話を聞くに、旅出つ前から使い魔にちょっかいを掛けられていたらしい。

 そして今も、メイが傍に居る。

 彼しか居ない。

 魔法使いが興味を示しているのは。

 駄目元で、クライスに聞いてみるラヴィ。


「あんたから魔法使いに頼めないかしら?」


「どうやって?」


「そ、それは……。」


 クライスからの当然の返しに、困惑するラヴィ。

 他の者も下を向く。

 魔法使いに対する接触方法がない。

 話す事が出来なければ、頼む事も無理。

 そこで、出しゃばるのは。


「あたいが居るじゃない。何の為に付いて来たと思ってんのよ。」


「こ、こら!」


 自慢気に胸を張りそう語るメイに、珍しく焦るクライス。

 気付いていたらしい。

 使い魔を通せば話が出来る事を。

 何故黙っていたか?

 会いたく無かった。

 厳密に言えば、《合わせる顔が無かった》。

 ちょっかいを掛けられてもかわし続けたのはその為。

 今更どの面下げて……。

 クライスのその心中は、使い魔であるメイにしか分からなかったが。


「出来るって!どうする?」


 ほれほれほれ。

 たじろぐクライスが面白くて、つい揶揄からかってしまうラヴィ。

『兄様を困らせないで!』と文句を言いつつも、何故黙っていたか気になるアン。

 身内にも内緒にするのは、とても不自然。

 疑いの目が、一斉にクライスの方へと向けられる。

 どうやら屈したらしい。

 観念した顔をするクライス。


「分かった、分かったよ。聞いてみるけど、駄目元だって事が前提だぞ?」


 クライスの言葉に、頷く一同。

『頼む』と声を掛けると、『キイィン!』と言う甲高い音と共にメイが光り出す。

 一瞬まばゆくなったと思うと。

 光量が松明たいまつ位まで落ち、そのまま光り続ける。


「繋がったわよ。」


 メイの言葉と共に、何処かで聞いた様な声が天井から聞こえる。




『やっと呼んでくれましたね、金を錬成する者よ。』




「この声は……!」


 ラヴィが気付く。

 キョウセンの宿で、魔法使いが支配する地域〔闇の戯れ〕への立ち入り許可を出した者と同じ。

 中性的な声質。

 そして続けて聞こえて来る。


『時間が無いでしょう?要件を言いなさい。』


「済まないが、今非常に不味まずい状況に置かれている。力を貸して貰えないだろうか?」


『良いでしょう。その代わり、1つ条件が有ります。』


「こっちもかよ……。」


 条件を満たさないと要求を呑んでくれない者が多いな。

 虫の良い話は、そう転がっていない。

 つくづくそう思うクライス。


「取り敢えず言ってくれ。内容が分からない事には話にならない。」


『正論ですね。分かりました。とても簡単な事ですよ。』


 魔法使いはそう告げると、続けて条件を提示。

 確かに簡単。

 聞いた者には。

 でもクライスには……。

 それは。




『ボクへ会いに来る事、それを確約しなさい。それだけですよ。』

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