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第171話 開示と報告

 親書に書かれていたと言う、《二国共同の偽装工作》。

 その中身とは?

 興味津々の出席者一同。

『他言無用』とのユーメントからの警告がまず有り、一同承諾の後に大筋が語られる。

 内容は、以下に。




 まず、グスターキュ帝国側からヘルメシア帝国側へ或る要求が来た〈事にする〉。

 それは領土の割譲及び多額の賠償金。

 大き過ぎる負担に、皇帝は頭を悩ます〈振りをする〉。

 評議会を招集し話し合うが、場は紛糾〈するだろう、王族反対派がそうさせる筈〉。

 そうこうしている内に、突然『人質処刑』の報。

 返答を待てないグスターキュ側が、強硬手段に出る〈体を取る〉。

 当然アリュースも処刑された〈と嘘の情報を流す〉。

 ここで弔い合戦とばかりに、グスターキュ帝国へ攻め入る軍を編成。

 将軍に王族反対派を据える。

 コンセンス家が支配するスコンティの西隣、【ヤフレ家】の支配地域【ワインデュー】から攻め込む作戦を取る。

 グスターキュ側もそれを察知し。

 ワインデューと向かい合わせで、サファイ及びメインダリーの西隣の領地【ネシル】に本陣を構える。

 一触即発、緊張が高まるその時。

 本当の作戦が始動。

 グスターキュ軍が、ネシルからワインデューへ侵攻。

 ヘルメシア軍が迎え撃とうとするが、軍内部に潜む王族擁護派の兵士達が反対派の将軍達を拘束。

 同時に、反対派を裏から操っている怪しい組織を炙り出す。

 そして一気に殲滅。

 事後処理は、作戦成功の後に話し合われる。

 以上。




「さて、問題は……。」


 ユーメントは考え込む。

 この、偽装工作からの殲滅作戦を成功させるには。

 ヘルメシア帝国内部での敵味方の選別、及びヤフレ家への協力の取り付け。

 そもそも12貴族の内で立場を明確にしている者以外、残りがどちら側に付くのか。

 それとも明言を避け続けるのか。

 推定が困難。

 何せ数は。

 12貴族と王族を除いても、ビンセンス家やデュレイ家の様な格のある家柄が数十存在するのだ。

 皆、微妙な立場に居る事は間違い無い。

 表明するだけでも紛争を生みかねない。

 大勢がはっきりすれば別なのだろうが、その状態まで持って行くのが一苦労。

 何か情報があれば、もっとスムーズに事が進むのだが……。

 ユーメントがそう考えている時。


「宜しいでしょうか。」


 サッと右手を挙げ、デュレイが発言の許可を求める。


「何だ、デュレイ?」


「お話が有ります。陛下の思案に関係する事です。」


「ほう、申してみよ。」


「ありがとうございます。」


 発言許可に対する礼を述べた後、『ようやく集めた情報を開示出来る』と心を引き締めるデュレイ。

 そして、皆に向けて話し始める。

 発言が長くなるので、以下に。




 わたくしエメロー・デュレイは、数年前この王宮で或る情報に触れました。

 それは正に《皇帝及び王族の暗殺》、であります。

 情報をもたらした相手は、暗殺計画の首謀者に魔境から呼び出されたと言う魔物。

 逃げ出して来たと言う魔物は激しく傷付き、それは裏切り行為に対する報復との事。

 余りに凄惨な外見から、情報は本物と確信しました。

 そこで魔物に手当ての対価として、自分とのすり替わりを持ち掛けました。

 そして私は下野げやした後、各地を旅し支配者に関する情報を集めて回りました。

 核心部分に辿り着こうとしていた矢先、不覚にも敵側に捕らえられてしまいました。

 檻に監禁されている時、ビンセンス達がこの身を救ってくれました。

 彼等から陛下に謁見する為ガティへ向かっていると聞き、『今まで集めた情報を陛下へ報告する時が来た』と判断し同行させて貰いました。

 その間にも、得た情報に合致する動きへと遭遇。

 確信を得た次第です。

 以上が、陛下の御前に参上するまでの経緯であります。

 ここからが本題。

 我が得た情報は以下の通りです。


 〈一〉 12貴族の内、王族擁護派は〔スラード家〕〔イレイズ家〕〔ノイエル家〕、王族反対派は〔アストレル家〕〔チンパレ家〕〔ムヒス家〕〔ナラム家〕【ゲズ家】、日和見派は〔コンセンス家〕〔ヤフレ家〕【フォウセン家】【クメト家】であります。

 〈二〉 王族内にも反対派に属する方がおります。ズバリ、《四男のソーティ・ベック・シルベスタ様》です。

 〈三〉 騎士クラスに属する貴族の内、殆どは日和見派です。明確な立場は、今後も取らないでしょう。彼等は支配欲を持ち合わせておりませんので。ただ気になる者が《3名》おります。それはまた後でお話ししましょう。

 〈四〉 魔法使いに関しては、この件には無関係です。寧ろ興味の対象は《あるお方》です。その方の行動次第では、味方にも敵にもなりましょう。

 〈五〉 王族反対派を裏から操る者達は、【ケミーヤ教】なる宗教めいた集団を自称。奴等は『グレイテスト』なる者を崇め、その子孫である《女》を頂点として活動しています。奴らの最終目的は、流石に得られた情報のみでは図りかねます。王族の権力の座からの追い出し、はたまた国家転覆、あるいはこの世界の混沌の到来……。


 報告は、以上であります。




 次々と明らかになる、衝撃の事実。

 王族反対派が、想定していたより増えた。

 しかも王族の中にも存在すると言う。

 そして暗躍する集団の正体。

 ケミーヤ教なる物を率いる女。

 それがワルスと言う奴なのか?

 ユーメントで無くても考えてしまう。

 これはかなりデリケートな事案。

 対応を1つでも間違えれば、国の崩壊に繋がりかねない。

 その中でも、ユーメントが気になっていた事。

 それは。


「王族反対派で挙げられた者の内、ゲズ家は評議会を欠席していたが……。」


「でしょうね。」


 デュレイはそう答える。

 かつてスラッジへデュレイが潜入し探していたのは、ゲズ家の娘。

 或る女中が連れ出した。

 救う為か、人質にする為か。

 同時期に、ゲズ家内部が混乱。

 跡取りと目されていた一人娘を失った事で、力を弱めていった。

 その前後で、奴等が接近して来た様だ。

 ゲズ家は王族反対派に取り込まれるも。

 それで権力が回復した訳では無く。

 その内、評議会にも出席しなくなった。

 なのでゲズ家は王族反対派では無く、日和見派とユーメントは見ていたのだ。

 しかし、デュレイの見立ては違う。

 クライスとも話し合った結果だ。

 ウィドーがスッポンの魔物からゲットした情報も併せて。


「残念ながら、ゲズ家は既に存在しないかと。」


「何?」


「滅ぼされたものと思われます。」


「卑しくも12貴族の一角が潰されただと!」


 ガタッと立ち上がり、『バンッ!』と書斎机を両手で叩いて声を荒げるユーメント。

 そこまでこの国は追い込まれているのか!

 切迫した状況を実感せざるを得ない。

 他にも残念な事が。


「我が弟が敵にくみするなど……しかも体が虚弱なのだぞ、ソーティは!」


 ユーメントの言いたい事は分かる。

 要するに、敵が仲間に引き入れても役立たずの存在。

 あいつには何も出来ない。

 そう言う認識。

 トクシーもそう思っていた。

 何より、アリュースと仲睦まじく手紙を交わしていた。

 そんな事はあり得ない。

 しかし、クライスが口を開く。


「陛下。その態度こそ、敵の思うつぼですよ。」


「ん!」


 思わずクライスを睨むユーメント。

 気にせず続けるクライス。


「誰もがそう思う、『そんな事ある筈が無い』と。だからこそ彼は適任なのです。欺く駒としては。」


「駒、だと!」


 弟を、王族を侮辱された気がした。

 烈火の如く怒るユーメント。

 トクシーやデュレイがなだめ様とするも、聞く耳持たず。

 初めて見るユーメントの激高に、オロオロするハリー。

 ラヴィはスクッと立ち上がると。

 セレナの制止も聞かず、つかつかとユーメントの前に歩み出る。

 そして。




 パシーーーン!




「少しは冷静になりなさいよ!皇帝でしょ!」


 ユーメントの頬を右手で張ったその勢いで、ラヴィが説教。


「あなたが冷静を欠く事こそ敵の狙い、ちょっと考えれば分かる事じゃない!敵の要求通りなリアクションをしてんじゃ無いわよ!」


 あくまで強気なラヴィの発言。

 その言葉でハッとする。

 いつの間にか、敵の術中にはまっていたと言うのか?

 私とした事が!

 まさか、それを気付かせる為にわざと焚き付けた……?

 クライスの方をちらっと見るユーメント。

 ニンマリ顔のクライス。


「安い挑発に乗っちゃって、だらしないったらありゃしない。」


 そうボヤきつつ、元の席へと戻るラヴィ。

 皇帝相手でも容赦しない。

 それが王女、マリー。

『とんだじゃじゃ馬でしょう』と、ユーメントに声を掛けるクライス。

 その言葉に、キッとクライスを睨むラヴィ。

『人の事を言えないじゃありませんか』とセレナに呆れられると、すぐにうつむく。

 そして何事も無かった様に進めようとする。


「それで?クライスには心当たりが有るの?」


 病弱とは聞いていた王子が、敵になっても大した事無かろうに。

 そう思えたが、クライスが言うなら何か有るのだろう。

 さっさと絡繰からくりを明らかにさせたかった。

 でないと、心の衛生上かなりの負担になりそうだ。

 答えるクライス。


「ああ、勿論。恐らく錬金術の《禁忌》の1つを使用した。」


「禁忌?」


 ラヴィがおうむ返し。

 物騒な単語がクライスの口から出て来た。

 アンの方を見ると、こちらも心当たりが有りそうな顔付き。

 クライスが続ける。


「錬金術は何も科学や医学だけでは無い。中にはとんでもない秘術もあって、わざと使用を禁止している物もあるんだ。」


「この世界のバランスが崩壊しかねないのよ。」


 アンが口を添える。

 宗主家にそこまで言わせる、その禁忌とは?

 クライスが明かす。




「彼に相応しい禁忌、それは【反転の法】だ。」

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