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第169話 拝謁

 玉座の間から、椅子の後ろにある出入口へ。

 そこからずっと、アーチ状にり抜いた様な廊下が。

 前から来た人とすれ違うのに、問題が生じない程度の幅。

 大きな物は運べない気がする。

 それにしても、空気がひんやりしている。

 周りは石造りなので、そのせいかも。

 廊下のところ々に松明たいまつの様な明かりがともり、風の影響か揺らめいている。

 何処かに換気口でも有るのだろうか。

 空気の流れを、明かりに感じる。

 廊下はうねりながら、更に奥へと続いている。

 時には直角に曲がり、時には緩やかなカーブ。

 その間にも分岐が多い。

 まるで迷路。

 それを迷わず、皇帝が進んで行く。

 付き従う警護隊。

 後を追うしか無いラヴィ達。

 10数分歩いただろうか。

 前が急に明るくなった。

 どうやら部屋へと突き当たり、中に光が差し込んでいるらしい。

 それにしても、置き去り状態の元スラッジ民は大丈夫だろうか。

 何もされていないと良いけど。

 折角ここまで連れて来たのに、離れ離れになってしまった。

 申し訳無い気持ちが、ラヴィの心をぎる。

 しかしクライスは平然とした顔。

 この状態は織り込み済みなの?

 そう尋ねたくなるラヴィ。

 その暇も無く、部屋の前に立ち止まらされる。




 一行の前に、木製の扉。

 そこには、皇帝を表すらしい紋章が大きく彫られている。

 扉を何故かノックする皇帝。

 そしてこう言った。


「お客人をお連れしました。」


 驚くラヴィ達。

 すると部屋の中から声がする。




「ご苦労。中へお連れしろ。」




「ははっ!」


 皇帝に付き従っていた騎士達が、扉を開ける。

 皇帝が先頭を切ってサッと入ると。

 入り口の傍で左ひざを付く。

 そして『どうぞ中へ』と右手を廊下から部屋へ流し振り、頭を下げる。

 戸惑うラヴィ達。

 トクシーとデュレイが『失礼』と言いながら頭を下げ、部屋の中へ入る。

 仕方無くトクシー達の真似をして、ラヴィ達も入る。

 クライスは部屋の奥に見える人影に向かい、声を掛ける。


「人以外も宜しいでしょうか?仲間なのです。」


「構わんよ。アリューから、その辺りは知らされている。」


「そうですか。ありがとうごさいます。」


 言葉を交わした最後、クライスはこう付け加えた。




「心遣い感謝します、《皇帝陛下》。」




「流石クライス殿。お分かりでしたか。」

「え!どう言う事よ、クライス!」


 感心するヘルメシア側、びっくりするグスターキュ側。

 クライスはここに来た事が無い筈。

 影武者の存在を知る訳が無い。

 勿論安全面の為、トクシーもデュレイも影武者が居る事を教えていない。

 過去の経験則からか、それとも卓越した洞察力からか。

 反応が入り混じった中、メイとウィドーがやって来る。

 そして、エミルも。

 本物の皇帝、シルベスタ3世こと〔ユーメント・フォウ・シルベスタ〕がエミルに反応する。


「可愛い訪問者だな。君がエミルかい?」


「うちが見えるの?変なの。」


 そう言って、エミルがスウッとユーメントに近付く。

 何かが飛んで行くのを見て、『これ!』と影武者が止めようとするが。

 逆にユーメントは歓迎。


「君の事は特に、アリューが手紙に書いていたよ。『妖精は確かに居ました!』とね。」


「アリュースが?喜んでたの?」


「ああ。『自慢出来る』ってね。」


「わーい!」


 ユーメントの前で、クルクル宙返り。

 行動で喜びを表すとは、妖精らしい。

 ユーメントとは対照的に、影武者や警護隊はキョトンとした顔。

 陛下の前でうごめいているもやの様な物、あれが妖精だと言うのか?

 姿がはっきりと見えないので、不思議で堪らない。

 フフッと笑う、セレナとラヴィ。

『落ち着きなさいよ』と説教モードのアン。

 彼女等は見えているのが分かる。

 でも何故?

 陛下は見えているのか?

 新たな疑問が湧いて来る。

 場が混乱する前に、制した方が良さそうだ。

 そう判断したクライスは、エミルに声を掛ける。


「そろそろ控えてくれないか?メイとウィドーも我慢しているんだ。」


「あ、そう?じゃあ仕方無いね。」


 ユーメントに手を振って、クライスの頭に座るエミル。

 同時に、右肩にメイが。

 左肩にウィドーが陣取る。

 まるで猛獣使いの様な恰好のクライス。

 奇妙な光景に、思わず笑い出すユーメント。


「アハハハ!凄い!凄いぞ!君の様な人物には会った事が無い!アハハハ!」


 腹を抱えて笑っている。

 トクシーが『失礼ですぞ!』と囁くが、お構い無しに。

 機嫌を損ねていなければ良いが……。

 トクシーは、恐る恐るクライスの方を見るが。

 平然とした顔。

 アンもてっきり怒ると思っていた。

 相手が皇帝だから、と言う訳でも無いらしい。

 こんな所に押し込められて、碌な娯楽も無かったのだろう。

 その憂さ晴らしになるのなら。

 そう思っているのだろうか。

 まだ笑っているユーメントだが。

 影武者の『我等はもう下がります故』と言う言葉で、すぐにいつもの調子へと戻る。


「ご苦労。何かあれば、また呼ぶ。」


「承知しました。」


 そう言って部屋から下がる、影武者と警護隊。

 部屋の奥にある書斎机、そこに見え隠れしている椅子に。

 ユーメントは座る。

 そして話し出す。


「いやはや、かなりの期間大笑いしていなかったものでな。許して欲しい。」


 そう言って、クライスに頭を下げる。

 一国の王が。

 会釈をするとは。

 まだ正体を知らないハリーとリンツは、今までの部屋のやり取りでますます混乱する。

 構わず返答するクライス。


「いえ、ストレス発散になれば何よりです。」


「ありがとう。」


 感謝の意を表するユーメント。

 そして、話を続ける。


「ここは見ての通り、執務室だ。普通の客や用事なら、影武者が玉座の間で応対するのだが……。」


「重大な案件の時は、陛下が直接お会いになるのです。」


 トクシーが補足する。

 ついでに、ユーメントへ注文。


「あの掛け声、何とかならないでしょうか。」


「掛け声とな?」


「陛下!客人が呆れていましたよ!私が変人扱いされるではありませんか!」


 必死のトクシー。

 それに同調するデュレイ。


「毎回文言を考えるこちらの事も、考えて頂きたい。」


「仕方無かろう。直球な表現は極力避けねばならん。」


 つれない返事のユーメント。

 やはり、あの絶叫は意味があったのだ。

 セレナはそう理解した。

 だとすると、暗号……?

 ふむふむ。

 考え出すセレナを、現実へ戻そうとするラヴィ。

 セレナの肩を掴み、体を揺すりながら言う。


「まだ用事が済んで無いでしょ!クライスの影響を受け過ぎ!」


「それは兄様に失礼じゃない?」


 ラヴィの文句に反論するアン。

 ガルルル……。

 睨み合う2人を他所に。

 話を進めようとするトクシー。


「陛下。我等がここへ参ったのは、例の件です。」


「そうだったな。まあ座ってくれたまえ。」


 椅子に座りながら、部屋の壁に沿って設置されているソファへ皆を誘導するユーメント。

 執務室の入り口から見て。

 左側に、ラヴィ達グスターキュ側。

 右側に、トクシー初めヘルメシア側。

 正面奥に、書斎机とユーメント。

 部屋の真ん中には豪華なテーブル。

 どうやっても部屋の外からは運び入れられない大きさ。

 恐らく、ここが造られると同時に運び入れられたのだろう。

 年季の入った装飾。

 その上にはフルーツの山盛り。

 貴族の屋敷にある物としては定番。

 特段珍しくも無い。

 思わずエミルが手を出そうとするが。

 クライスが止める。


「止めとけ。変に部屋を動かしたく無い。」


「ほう、スイッチまで見抜くとは。」


 感心するユーメント。

 思わず確かめたくなった。

 クライスに、こう尋ねる。




「君が《幻の錬金術師》だね?」

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