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第165話 内周に沿って

 今までの苦労が嘘の様に、スイスイ進んで行く一行。

 綺麗なたたずまいの屋敷群。

 小石1つ転がっていない、綺麗な道。

 環境が整っているにも関わらず、人の気配は少ない。

 12貴族は普段、それぞれの支配地域に住んでいる。

 ここに来るのは、評議会などの重要な行事に出席する時。

 後は、気紛れに。

 なので、静穏。

 不気味な位。

 内周に沿って続く、弧を描いた様な町並み。

 その中心はいつも見える。

 荘厳な風景。

 立派な城が見える。

 城と言っても、おとぎ話に出て来る様な豪華さ・派手さは無く。

 あくまで実用的な建築物。

 攻めにくい様に、小高く盛られた丘。

 人工的な丘陵地帯を軸に、高低差の激しい石垣。

 屋敷などの住まいは大抵、同じ階は同じ高さの床。

 つまり真っ平。

 その方が、住み心地が良いからだ。

 しかし王宮は違う。

 わざと床をカクカク上下させ、壇を形成している。

 奥まで進み辛くする為に。

 石垣に、それが現れているのだ。

 元は広い平野だったからこそ、出来た芸当。

 相当な労力を費やして建設されたのだろう。

 そこまでして、スラッジを封印したかったのか?

 昔の皇帝に、並々ならぬ執念を感じるラヴィ。

 だからこそ気になる。

 デュレイの、『元スラッジ民を連れて行く方が報告し易い』と言う発言が。




 遠くに見える、見覚えのある影。

 間違い無い、クライス達だ。

 ラヴィ達は、無事に事が済んだのだと安心する。

 そして、合流。


「約束通り、追い付いたぞ。」


「ああ。」


 ガシッと手を組み合う、デュレイとトクシー。

 クライスの右肩に留まって欠伸あくびをしているウィドーに、アンが迫る。


「兄様の手を、わずらわせていないでしょうね?」


「何だよ、ひっでえ言い方。これでも大活躍だったんだぜ。」


 アンにいわれの無い文句を付けられ、『お前からも言ってくれよ』とせがむウィドー。

 仕方無く、アンを諫めるクライス。


「こいつの言う通りさ。かなりの収穫があったよ。」


「なら良いのですが……。」


 フッと顔の緊張が緩み、自然と笑顔になるアン。

 視線を落とすと、クライスの腰左部にくくられている物体が。

 アンの目線に気付くと。


「これか?土産みたいな物かな。」


 ポンと軽く叩いて、答えるクライス。

 そしてニヤリ。

 あ、何と無く分かった。

 また何かに遭遇したみたいね。

 察したアンは、それ以上聞かなかった。

 でも、気になる者が約1名。


「何、それ?」


 難しい顔とワクワクした顔を、交互に繰り返すラヴィ。

 クライスが大事に身に付けているのだ、余程珍重な物に違いない。

 見たいなー。

 ねえ、ちょっとだけ。

 ちょっとだけで良いからあ!

 そう叫びながら、『はいはい、迷惑でしょ?』とセレナに引き摺られて行く。

 その様子を見て、『最近、性格が変わって来てないか?』と思ってしまうロッシェ。

 まあ、あれを見たら分からんでもないが。

 そう考えながら、ロッシェは王宮の方を見やる。

 やっとここまで来たのだ。

 とても長かった旅路に感じる。

 テンションが上がるのは、自分も同じ。

 何せ、皇帝陛下に直接面会出来るのだ。

 姉の捜索の協力を、何としても取り付けたい。

 是が非でも。

 王宮を見るロッシェの眼差しが、一層強くなった。




 逆に戸惑っているのは、元スラッジ民。

 なし崩し的にここまで来てしまったが。

 本当に良かったのだろうか?

 それとも。

 そんな後悔めいた事を考える様では、まだまだ覚悟が足りないと言うのか?

 そう考えると。

 各々(おのおの)黄金の遺物を取り出し、ジッと見つめる。

 クライスが金に変えた、思い出の品々。

 今見ても、綺麗に輝いている。

 そこであの時の感情を掘り起こす。

 決心したじゃないか。

 変わる為に付いて行くと。

 信じよう、彼等を。

 そして、前を向こう。

 そう思い直すと、又大事に仕舞うのだった。




 合流前、クライスとデュレイは。

 スッポンの魔物から記憶を奪ったウィドーに、根掘り葉掘り聞いていた。

 次々と浮かび上がる、とんでもない事実。

 その中には、デュレイの持つ情報を裏付ける物も。

 ここまで来たのなら。

 デュレイは、自分の持つ情報をクライスだけにそっと打ち明けた。

 それを精査し、どう皇帝に報告するか相談する2人。

 カーテンに包まれたスッポンは時々もがくが、結局束縛は解けない。

 逃亡か、静止か、寝返りか。

 選択を迫られている気がしたスッポン。

 その為には、小僧が何者かを把握する必要が有る。

 必ずチャンスは来る。

 その時どう行動するか。

 音や声は聞こえる。

 そこから状況を把握する事は出来る。

 見極めさせて貰おう。

 俺をこんな風にした奴が、どれ程の者か。

 手練れか?

 愚者か?

 考え過ぎる程考えるスッポンを尻目に、『早く楽になりてえなあ』と暢気のんきに構えるウィドーだった。




 そんな話し合いが有った事を。

 ラヴィ達は知らない。

 知らせない方が良いと、クライスが判断した。

 ウィドーにも、堅く口止めした。

『喋ったらどうなるか、分かるな?』と、半分脅迫めいていたが。

 ブルブル震えていたので、こいつは大丈夫だろう。

 クライスは再び、ラヴィ達と歩き始めた。




 クライス達との合流地点から、更に弧を描く様に歩く一行。

 すると遠くに、より一層立派な建物が幾つか見えて来た。

 席から立ち上がって、ハリーが叫ぶ。


「着いた!王族の別邸よ!」


 更に接近する一行。

 なるほど、12貴族の別邸よりも装飾に気合が入っている。

 龍の様な彫り物が。

 窓に、ドアに、あちこちに。

 この国では、龍は神聖さと権力の象徴らしい。

 彫り物の姿はかなりアバウトで。

 腕や足の数が左右で違っていたり、目や鼻の位置がまちまちだったり。

 トクシー曰く、『目撃情報がそれだけ食い違っているのです』だそうだ。

 空想上の者では無く、魔物に近いのか?

 オアシスで出会った、ワイリーの様に。

 まあ、ラヴィにとっては。

 そんな事、どうでも良いが。

 それより気になるのは、建物の間から見える階段。

 王宮へ真っ直ぐ伸びている。

 あれが入り口?

 良く見えないなあ。

 一人突っ走ろうとするラヴィ。

 それを遮る様に、向こうから声が聞こえて来た。




「おーい!」




 こちらへ向かって手を振る、少年が1人。

 両脇に立っているのは、トクシーと良く似た格好をした騎士。

 ハリーが慌てて馬車を下りる。

 そして、少年に向かって駆けて行く。

 顔がほころぶリンツ。

 ラヴィが尋ねる。


「あの子は?」


 リンツの答えは。


「あの方こそお嬢様の婚約相手、ワンズ・ムース・シルベスタ様でございます。」


「へえ、《あれ》が。」


 王族の人間を、『あれ』扱い。

 失礼ですぞ!

 リンツはそう言いかけたが、トクシーに止められる。


「お主の言いたい事は分かるが、彼女はそう言える立場の方なのだ。」


「何ですと!」


 トクシーに付いて来ている敵兵だから、特殊な地位に居るのは分かる。

 しかし、トクシーにそう言わしめる風には見えない。

 ここではまだ、リンツもハリーも気付いていなかった。

 付いて来たのは、トクシーの方だと言う事を。

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