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第144話 一応、解決

「さ、さあ。」

「何の事やら。」


 とぼける兵士達2人。

 その目は泳いでいる。

 男は問いただす。


「さっき自分で言っただろう?《仕掛けが消えているのは不味まずい》ってな。その仕込み主じゃないのか?」


「い、いやあ……。」


 汗ダクダクになる2人。

 尚も問い詰める。


「怒鳴られる?誤作動?変な単語が飛び交ってたが、関係有るんじゃ……。」


 ドスの効いた声。

 低音を強調した様な響き。

 威圧感が増す。

 足がガクガクしてきた。

 どうして!

 こんな小僧に!

 恐怖している!

 動悸が激しくなる。

 呼吸も荒い。

 ハア……ハア……。

 クラクラする頭。

 切迫して来た状況。

 もう耐えられない!

 2人がそう思った時。




「もうその辺で良いのでは。」




 ドアが開いて入って来たのは、鎧を着た騎士。

 胸の紋章を見ると。

 王族にまつわるもの。

 しかも上位に位置する。

 これは……。

 そこまで思って、意識が途切れた。

『味方が入って来た』と、安心したのだろう。

 実際はそうでは無いが。




「クライス殿も、お人が悪い。」


 入って来たのは、トクシーだった。

 その後ろから。


「意地悪さは、今に始まった事じゃ無いわよ。ずっとこんな調子。」


 ベーッと舌を出しながら、ラヴィが出て来る。

 その後、ぞろぞろと人が。


「凄いわねー。」


 言葉巧みに相手を煽るのを、隣の部屋で聞いていたハリー。

『そうでしょそうでしょ』と自慢気のアン。

 たまげたままのデュレイと。

『こんな奴を相手にしてたのか』と、新たに思い知るソウヤ。

 メイは、退屈そうに馬車で待っているエミルとウィドーの相手をしていた。

『自分の出番はもうお仕舞い』と言った感じで。


「まずは、ご苦労様。」


 クライスの頭をポンと叩くラヴィ。

 その手をクライスが払うと、スッと下がってフフッと笑う。

 クライスの態度に大分慣れてる。

 ハリーにはそう見えた。

 負けじとハリーも、すかさずトクシーの傍へ寄って行く。

 王子様ポジションに、どうしても置きたい様だ。

 困り顔のトクシー。

 それを見て、ようやく笑うデュレイ。

 旅には笑いも必要だと、実感する瞬間。

 それは、クライスも同様だった。




「うーん……。」


 兵士達が気付くと、体を縛られている。

 床に座らされて。

 身動きが取れない。

 もがく際に生じた音で、振り返る男。


「お、目が覚めた様だぜ。」


 それは。

 1階での聴取の時、客の振りをして応対していたロッシェ。

 傍で頷いていたのはセレナ。

 師弟コンビだった。

 所謂いわゆる、仕込み。

 外で揉めていたのは、リンツとイント。

 兵士に詰め寄ったのはフユ。

 皆、クライスの指示通りに動いたまで。

 そうして、警備の兵に紛れている敵兵を炙り出した。

 転移装置が無くなったと知れば、必ず確かめに来る筈。

 そこを押さえて、情報を引き出す。

 それにまんまと引っ掛かったと言う訳だ。

 察した兵士達は、口々に言う。


「何も喋らんぞ!」

「俺達は命令通りに動いただけだ!本当だ!」


 それに対し、クライスはあっさりと。


「だろうな。それに紛れていたのは、お前達だけじゃ無いだろう?」


 そう言われて、顔を背ける2人。

 それが答えだった。

 クライスが続ける。


「もうこの状況を知らせに、動いた様だな。こっちも早くするか。」


 そう言って、各自に馬車へ向かう様指示。

 特にトクシーとセレナには、すぐに馬車を道路へ出す様言った。

 何か考えがあるのだろうと汲み取った仲間は、素早く行動開始。

 ラヴィとアンに『さあ』と促されて、ハリーとリンツも向かう。

 それを追い駆ける様にデュレイも。

 ソウヤには、クライスが待ったを掛ける。


「あんたはここで離れた方が良い。お別れだ。」


「どう言う事だ?」


 不思議がるソウヤ。

 まだ帝都には着いていない。

 ここも安全とは言えない。

 それでも。


「これから少し、大変になるんでな。」


 もうすぐ起こる事をヒソヒソと囁かれ、『ヒイッ』と声を上げるソウヤ。

 流石にそれは、付いて行けない。

 仕方無く、ここから単独行動へと移る事にした。

 イントにクライスが言う。


「暫くこいつを匿ってやってくれませんか?」


『これは報酬です』と告げて、部屋の隅にあるタンスに手を触れる。

 瞬時にそれは金色に変わる。

 唖然とするフユに、クライスが言う。


「これを換金すると良い。前よりもっと良いタンスが買える筈だよ。」


 コンコンと叩く音は。

 それまでの木製では無く、完全に金属の響き。

『これには匿う謝礼も含まれていますので』とイントに説明。

 聞いていないのか、イントは金のタンスに駆け寄り。

 本物か確かめる。

 眩い輝きに目が眩んだのか。

 現実を感じさせない、《錬金》と言う事象を見せつけられたからなのか。

 その目はギンギンに輝いていた。

 逆に、兵士達は押し黙ってしまった。

 最後にクライスは、フユに尋ねる。


「そう言えば。君は宿の主と、どう言う関係なんだい?」


 まだ戸惑ってはいたが。

 徐々に落ち着きを取り戻していたフユは、明るく答えた。


「赤の他人です。でも、親以上の方です。」


「そうか。」


 安心して、フユの頭を撫でるクライス。

 無理に虐げられていると心配していたが。

 親身になってくれる人か。

 良かった。

 まだ金のタンスを撫で回しているイントを見て、ちょっと信じられないが。

 心置き無く旅立てる。

 そう思った。


「じゃあ俺達は行くから。今度来た時は、是非利用させて貰うよ。」


 クライスはフユに言った。

 残念そうな顔をしたが、すぐにフユは気丈に振る舞う。


「またのお越しを、お待ちしています。」


 その口調は希望に満ちていた。

 また会えると信じている。

 その時は改めてお礼を言わせてほしい。

 そう言う希望。




「用意、出来ています。」


 宿から出て来るクライスに、スタンバイしているトクシーが言う。

 頷くとクライスは、馬車に寄り添う様指示。

 ラヴィとセレナは、リンツと共に馬のメークの隣に。

 ハリーはトクシーの隣に。

 ロッシェは馬車の右隣へ。

 アンは馬車の左隣へ。

 デュレイは既に荷車の中へ。

 メイはメークの頭の上に。

 エミルとウィドーは荷車に乗った。

 メークの前に立つクライス。

 そして。




「来る!」




 叫ぶクライス。

 ギューーーーーン!

 のっぺらぼうの蛇の様な、滴り落ちるスライムの様な。

 金色の物体。

 帝都の方角から素早く伸びて来て。

 バクンッ!

 馬車ごと皆を食った。

 伸びきった胴体が、瞬時に縮まる。

 シュルルルルルーーー!

 シュンッ!

 そしてそれは、パッと消えた。




 果たして、一行はどうなったのか?

 そして、飲み込んだ者の正体は?

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