表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/320

第142話 転送

 ああ!

 じいや!

 行ってしまった!

 優しかったのに!

 家族同然だったのに!

 何て事!

 ハリーは失望しかけていた。

 しかし。




「……あれ?」




 リンツの姿は、そこにある。

 ベッドの上に。

 尻餅を付いたまま。

 ほうけていた。

 すぐにクライスが言う。


「ロッシェ!彼を引き摺り下ろせ!」


「な、何か分からんが、よっしゃ!」


 咄嗟に反応し。

 ガシッとリンツの左腕上部を掴み、力一杯引っ張る。

 ズザザザザアアアア!

 ドズッ!

 3秒も掛からず、ベッドから離す事に成功。

 同時に、メイがクライスの右肩に乗る。

 カッとメイが光ったと思うと、クライスは右手でベッドのシーツをバンッと叩いた。

 撃ち抜く様に。

 瞬間、ベッドが光って。

 ヒュッと目の前から消えた。




 目をパチクリさせて、ハリーを抱えながらラヴィは声も上げられない。

 ストッと、クライスの肩から降りるメイ。

 崩れ落ちる様に振ら付くクライス。

 その右脇を、トクシーが支える様に抱える。

 済んでの所で倒れるのを免れたクライス。

 その顔色は青ざめていた。

 ゆっくり床に座らせるトクシー。

 アンは鞄から小瓶を取り出し、クライスに飲ませる。


「全く、兄様は。また無茶をして。」


 ゴクゴクと飲み干すと、多少顔色が良くなった。

 セレナがしゃがんで声を掛ける。


「魔力を大量に使って、何かなさったのですね?」


 疲れているのは承知。

 でも、クライスに尋ねざるを得なかった。

 それは、この場を収める為でも有り。

 ハリーを安心させる為でも有った。

 クライスは、何とか話し始める。


「セレナは前に見ていたから、分かっていると思うけど。」


「あの時、ですね。」


 リゼ達スティーラーズが治めていた、作り物の村。

 その建物を、金製の馬と馬車に変換した時。

 同じ様な光景があった。

 あの時は使い魔のオズを供給源に、魔力を大量消費した。

 今回は、メイを使って。

 何かをした。

 魔力を大規模に使う何かを。


「その前に。ハイセムさん、体は?」


「お陰様で。御心配をお掛けしました。」




「じいやーーーー!」




 思い切りリンツの胸に飛び込むハリー。

 胸にグリグリ頭を擦り付け、喜ぶ。

 その姿に、目がウルッとなるトクシー。

 終始ポカーン状態のフユ。

 そして現実を取り戻す。


「ベ、ベッドが、ベッドが……。」


 オロオロするフユ。

 それを尻目に。

 得意気なメイ。


「今回はあたし、大活躍だったでしょ?」


『どう?どう?』と言わんばかりに、ラヴィの足元に詰め寄る。

鬱陶うっとうしいなあ』と思いながら、説明の続きをクライスに求める。

『分かった分かった』とラヴィを制して、クライスの解説。




 メイが体当たりした時から、救出作戦は始まっていた。

 まず、ドカーンと当たった瞬間に。

 憑り付いている魔物とクライスを、メイを通じてリンクさせる。

 と同時に、リンツの意志が魔物を拒絶。

 リンツと魔物のリンクを、瞬間的に剥がす。

 そのタイミングは、魔物が転送を試みる時。

 結果、リンツ本体は残り。

 魔物だけが転送された。

 続けざまに。

 魔物とクライスのリンクを利用して、膨大な魔力を一度に供給。

 魔方陣諸共、ベッドを転送先へ飛ばした。

 過剰供給の為、自動的に魔物とクライスのリンクも切れた。

 一気に負荷を増大させ、魔方陣を暴走させたと言う訳だ。

 これでもう、ここから転送は出来ない。

『宿泊客が消える』と言った事も無くなるだろう。

 それでもまだ問題は残っている。




「これで解決じゃないんですか?」


 フユが尋ねる。

 ベッドを失ったのは損害だが、もう騒ぎが収まると思っていた。


「宿の主は、兵士達に現状を訴えたんだろう?」


「はい。」


「でも取り合って貰えなかった。」


「その通りですが。」


「何故か?間者が居たからさ。」


「間者?」


「魔方陣を仕掛け、転送を繰り返した連中の仲間が。兵士に混ざってるって事さ。」


「えー!それじゃあ……。」


「グルだった、だな。」


 そ、そんなあ!

 町を守っている兵士が、私達を守ってくれないなんて!

 酷い!酷過ぎる!

 フユは怒っていた。

 下の用事が片付いたのか、主のイントが上がって来た。

 そして。

 プリプリ怒っているフユを変だと思いながら、『どうです?』と周りに尋ねる。

 困った顔をするラヴィ達。

 仕方が無いので、セレナが代わりに話す。

『自分が話した方が、まだましだろう』と言う判断だった。

 それは正解だった。

 クライスやラヴィが話せば、こちらに当たって来ただろうし。

 トクシーやデュレイが話せば、怒りのやり場に困ってフユに八つ当たりしただろう。

 その辺の塩梅が丁度良かったのが、セレナだった。

 都合の良いポジション。

 イントが頭を抱え出す。


「取り合ってくれなかったのは、そう言う事情が……。だとしたらどうすれば……。」


 困った顔をするイントとフユ。

 そこで満を持して。

 クライスがお願いする。




「ハイセムさん、後は頼みましたよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ