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第137話 検問の町シッティ

 ハリーの目論見は、あっけなく崩れた。

 婚約を解消しようとしたら、父が捕まってしまった。

 自分の軽率な行動が、身内を危機に陥れてしまうなんて。

 ずっと暗い顔をしている。

 その横顔を見るのが、トクシーには辛かった。

 励ましなんて、何の効果も無い。

 逆に心を暗くしてしまうだけ。

 皆それを知っていた。

 だから、ただ早く帝都に到着する事を願った。




 シルバに入って最初の町、〔シッティ〕。

 ここは検問所の様な役目も果たしている。

 あちこちに立っている、ヘルメシア軍の兵士。

 怪しい者を見つけたら、すぐに駆け付けるセキュリティーシステム。

 町の規模は、そこそこ大きい。

 隠れられる場所も、他の町より多い。

 そこを突かれて、町の隅に潜まれては堪らない。

 町の境目は柵の代わりに2階建ての橋脚が組まれ、上下左右を自由に行き来出来る様になっている。

 外からも中からも透けて見えるので。

 橋脚の外周と内周を兵士が交代で見まわる事で、かなり透明性が高く保たれている。

 この町で敵の侵入を出来るだけ防ぎ、帝都の警備負担を軽くする効果もある。

 守らねばならない絶対領域。

 それがシッティ。

 逆を言えば。

 ここに裏側の拠点を築いてしまえば、帝都を自由に攻め放題となる。

 風俗的な店が皆無なのは、その為。

 退屈な町なので、ボディーチェックを受けたらさっさと通り抜けるのが旅人の常識。

 急に大所帯となった一行は流石にそうも行かなく、何処かへ泊る事になった。

 これからの行動を確認する話し合いもしたかった。

 同行・同伴だったのが、同盟に格上げされたのだ。

 意思疎通は図っておきたかった。




「おい、そこの!止まれ!」


 敵側の兵の格好をしているせいか、宿探しでうろついている間しょっちゅう見回りに声を掛けられる。

 そこでトクシーが、馬車から降りて応対。


「済まぬが、宿を探している。良い場所はないか?」


 トクシーの鎧にある紋章で、兵士が反応する。


「し、失礼しました!」


 そう言って、飛んで離れる兵士。

 叱られると思ったのだろう。


「本当に尋ねているのだが……。」


 困った顔をするトクシー。

 また馬車へ乗り込む。

 その繰り返しが何回か続いた。

 流石に疲れて来る。


「早く腰を落ち着かせたいものだ……。」


 ボヤくトクシー。

 その様子を見て、若干明るくなるハリー。

 自分も役に立ちたいと思ったのだろうか。

 馬車から思いっきり叫んだ。




「あたしは12貴族の娘よ!あたしが泊まるのに相応しい宿は、今すぐ名乗り出なさい!」




 シーン。

 反応なし。

 がっかりするハリー。

 気を遣って、頭を撫でてやるトクシー。

『ありがとう』と言いながら。

 頬を赤くするハリー。

 トクシーの手から何を感じたのだろうか。

 父性か。

 それとも愛情か。

 そんな時。




「あ、あのー。」


 リンツにススッと近寄る少女。

 年は、アンやハリーと同じ位だろうか。


「お困りでしたら、私共わたくしどもの宿はいかがでしょう?」


 もじもじしながら言う。

 営業活動は不慣れなのだろう。

 ラヴィが少しウキウキしながら尋ねる。

 同じく疲れていたので、早く宿を決めたかったのだ。


「定員はどれ位?」


「はい、50名程です……。」


「へえ、かなり大きいわね。」


 少女の返答に、ラヴィは考える。


「よし、ここにしよう!」


「待って!それだけでは流石に決められません!」


 セレナが駄目出し。

『ちぇーっ』と言った顔をするが、また質問に入るラヴィ。


「部屋の間取りは?」


「1つの部屋にベッドは2つです。後、テーブルや椅子もやや大きめサイズです。」


「大人数で泊まるには好条件って訳ね。」


「それが私共の売りですから。」


 そう答える少女。

 しかし、何か引っ掛かる。

 アンがそれをただす。


「どうしてあなたは名乗り出たの?聞く限り、繁盛してそうな宿じゃない。営業紛いな事をしなくても……。」


 そこだ。

 この町の立地なら、旅人はわんさか通る。

 スルーが旅人の常識であっても、それを上回る需要がありそうなものだが。

 他に人気の宿があって、そこに客を取られているのか?

 しかし、意外な答えが帰って来た。




「町一番の大きさです。それは間違いありません。それ故に注目を浴びてしまい、泊まる方が減っているのです。」




「どう言う事?」


 ラヴィが首をかしげる。


「『大勢が泊まれる』と言う事は、『身元がはっきりしない客も多い』と言う事です。」


「ああ、『素性を妙に勘繰られて居心地が悪い』って事ね。」


 少女の言葉に、ラヴィは少し納得する。


「はい。軍の兵士達の監視が、他所よその宿より厳しいので。」


「変な奴等の拠点にされたら、敵わないものね。」


「ここの所、特に監視の目が厳しくなる一方で……。」


「しわ寄せね、完全に。」


 皇帝が暴露した暗殺騒動。

 その為、シルバ内部の警備が厳しくなった弊害。

 それがこんな所に。

 責任の一端を感じるラヴィ。

 少女は続ける。


「あともう1つ、理由があります。申し上げにくいのですが……。」


「何?ちょっとやそっとじゃ、驚かないわよ。」


 ラヴィが『ん?言ってみ?』と言った顔をする。

 少女は告げる。




「変な噂を立てられて迷惑しているのですが、半分は事実です。どうもお客の中に、《お代を払わず、消えた様に居なくなる》方が出ているのです。」

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