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第134話 旅の恥は掻き捨て?

 ひょんな事から、一行に加わる2人。

 短い間ではあるが、旅の供となる。

『せいぜい怪しまれない様にするのね』とメイに忠告されるトクシー。

 その辺は心得ている。

 何せ自分には、重要な任務があるのだから。




 馬車を走らせるトクシー。

 その鎧姿に、ハリーは興味を持った。


「その胸の紋章、どっかで見た事あるわね。」


 何気無い質問。

 それでもトクシーは神経を尖らせる。

 そのまま答えを返せば、面倒になる事この上無い。

 少し考えて、トクシーは言葉を選んだ。


「ある高貴なお方にお仕えしているのだ。」


「へえ!あたしの婚約相手も、さる高貴なお方に当たるのよ。」


「ほう……。」


 つい相手を気にしてしまうトクシー。

 こんな年端もいかぬ娘と契りを結ぶとは、如何なる人物か。

 惹かれるのも無理は無い。

 得意気にハリーは言った。


「何と王族の人!皇帝の弟君、ワンズ様よ。」


「え!末弟の!」


「そう。お父様に聞かされた時はびっくりしたわ。まさか、ねえ。」


 政略結婚か!

 トクシーにはそれしか思い付かない。

 さしずめ、反対派に取り込もうと言う魂胆なのだろう。

 何と下劣な!

 険しい顔をするトクシーが気になったのか、歩く速度をゆっくりにしてラヴィが馬車に近付く。


「どうしたの?何かあった?」


「いえ、特に何も……。」


 押し黙るトクシー。

 そう言えば、この方も同じ様な事情を抱えていると聞いた事がある。

 自分の口から語るべきでは無い。

 騎士道がそう示している。


「ふーん。ねえクライスー。」


「あっ!」


 折角の気遣いが台無しになってしまう。

 焦るトクシー。

 ラヴィは『地獄耳のクライスなら内容を聞いている』と思って、スウッと寄っていった。

 しかしクライスの答えは冷たかった。


「どうした?」


「馬車の上で、ビンセンスさんが少女と密会してたみたいなんだけど。」


『酷い言い掛かりですぞ!』


 ラヴィの尋ね方に悪意を感じ、心の中で叫ぶトクシー。

 クライス殿!

 どうかお執り成しを!

 トクシーの祈りが通じたのか、クライスはラヴィをあっさりあしらう。


「お前さんの方が、紳士の御老人と密会している様に見えたが?」


「な、何言ってんの!セレナも一緒に居るでしょ!」


「それ、言い訳になって無いぞ。」


「だって、気になったんだもん!色々と!」


 このまま旅をするのも何だからと、世間話をしながら歩く事にしたラヴィ。

 リンツは両手に花状態。

 ラヴィはセレナと脇を挟み込む事で、質問から逃れられない様にしていた。

 しかしその状態を逆手に取られ、クライスにやり込められてしまった。


「もう良いわよ!意地悪ぅ!」


 プンスカ怒って、リンツの後ろへと戻るラヴィ。

『済みません』とクライスに謝る、先行するセレナ。

『これで良いでしょう?』と、トクシーにウィンクするクライス。

 黙って頷くトクシー。

 助かった……。

 胸を撫で下ろすのもつかの間。

 今度は、その仲睦まじい様子が気に入らないハリーから質問攻勢。


「ねえ、どの位旅をしてるの?」


「どの位?」


「期間よ。こんなに仲良いんだから、結構な時間一緒に居るんじゃない?」


「そう言えば、結構経つのか。」


 アリュースの元を旅立ってから。

 思い起こす事は無かった。

 それだけここまでの道のりが、内容的に濃かったと言う事だろう。

 なので、返答に困るトクシー。

 まごまごする姿を面白いと思ったのか、質問はまだまだ続く。


「このみんなと、どう言う関係?」


「いや、簡単には話せない事で……。」


「じゃあ、あの女の人とかに何で敬語を使うの?」


「それもちょっと答えかねる……。」


「だったら、何の質問なら答えてくれるの?」


「いや、まあ、その……。」




「何をオロオロしてるんだい、あいつは。」


 少女が折角話しかけてるのに上手く答えを返せない様子。

 それを荷車でこっそり聞いているソウヤはイライラ。

 逆に、実直なままのトクシーを垣間見れて嬉しいデュレイ。


「あいつはそう言う奴なのだ。不器用なのだよ。」


「そんなレベルじゃねえよ、あれは。」


「騎士らしいではないか。」


「駄目だね。少女とは言え女だ。トークで楽しませるのも男ってもんだぜ。」


 まああんた等には分からんだろうがな。

 ソウヤは、そう言いた気。

 女性心理に疎いのは、別に騎士ならではとは行かないが。

 護衛任務に色恋沙汰は要らない。

 そう言う考えなのだろう。

 でもそんな人生、詰まらんとは思わないのか?

 あいつなら同意してくれそうだがな。

 そっとロッシェを見やる。

 あいつはどちらかと言うと、俺の方に近い。

 何時まで、騎士ごっこ何ぞやってられるかな?

 ついフッと笑う、ソウヤだった。




 飛び疲れたのか、セレナの頭で休んでいるエミル。

『こら!』と言うラヴィを気にせず、のんびり。

『私は大丈夫ですから』と諫めるセレナ。

 その会話が後ろから聞こえて来るリンツ。

 彼女達は何と話しているのだろう?

 リンツにはエミルが見えないし、声も聞こえない。

 だからそんな疑問は至極当然。

 でもハリーは違った。

 前の様子が気になる。

 視線を送るハリーを横から見ていると、『この子もまだあどけない表情を見せるのだな』と安心するトクシー。

 何の因果か、政争に巻き込まれて。

 それでも可哀想とは思わない。

 思えない。

 それは、貴族に生まれたからには逃れられない事。

 現に、あちらの王女様は……。

 そう考えて、ふと思い出す。

 そう言えば、何故妖精を捕まえようとしていたのか?

 すっかり聞きそびれた。

 この際、聞いてみようか。

 トクシーが口を開きかけた時。




「何、あれ!」




 ハリーが前方の空を指差す。

 そこには、真っ黒な群集が見えた。

 浮かんでいる何かに、別の何かが群がっている。

 異様な光景。

 もうすぐ、シルバに入って最初の町へ着くと言うのに。

 既に何かが始まっていた。

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