第131話 陸の孤島で相談す
デュレイの元に集まった一行。
ソウヤだけは、クライスの指示でメイとワイリーによって隔離されていた。
そこで語られた事は。
以下、デュレイの話より。
俺はラピから暗殺計画の事を知り、ラピに後の事を託して王宮を抜けた。
その際、『役に立つだろうから』とラピから小さなガラス球を受け取った。
それはどうもラピを呼び出した奴の所有物で、逃げる時に持ち去ったらしい。
何でも、《賢者の石制作時の失敗作》だとか。
通信等は出来るが。
賢者の石本来の力には程遠く、かなりの制限がある。
ほら、共同墓地で亡者に埋め込まれていた球があったろう?
あれがそうだ。
その球のお陰でラピと連絡出来、リドの姿も見えたんだ。
リドと知り合ったのは、王宮を抜けて暫くした後。
帝都から一路、北に向かっていた時だ。
そこにも妖精の暮らした跡があって、リドはその地に出入りする不審な者を見ていたらしい。
何と、『人間の姿をしていた』と。
普通は入れない筈なのに、頻繁に出入りする人間達。
リドは不思議に思い、気付かれぬ様そっと近付いた。
その時、会話でこんな事が出た。
『門はどうする?後回しか?』
『そうだな。まずはこちら側へ、貴族共を引き入れなければな。』
『数はどれ位だったかな?』
『《アストレル》は完全に取り込んだ。元々の【チンパレ】【ムヒス】は、良いとして……。』
『《ノイエル》は邪魔だな。あれさえ居なければ、簡単に門を開けるものを。』
『後、《スラード》と《イレイズ》は王族擁護側だな。あれも上手く潰したいが。』
『策を考えよう。その他は日和見か。』
『少なくとも王族側に付かぬ様、監視が必要だな。』
『ああ。後は《あの方》が全て上手くやってくれる。』
『あの方は、偉大なる【グレイテスト】を継ぐ者だからな。』
『俺達もお陰で……ん!誰だ!』
そこまでで居場所を気付かれ、地脈を使い上手く巻いたそうだ。
だから、今確定している事は。
王族反対派は『アストレル家』『チンパレ家』『ムヒス家』の3家。
王族擁護派は『ノイエル家』『スラード家』『イレイズ家』の3家。
残りの6家が日和見派。
そう言う事になる。
後、リドが聞いた会話で出て来た『グレイテスト』なる者。
それが鍵を握っている。
その遺志を継いだ者が宗教めいた集団を組織し、暗殺を計画・実行しようとした。
今言えるのはこれ位だ。
俺が調査した内容は、まだここでも話せない。
皇帝陛下のお耳に直接入れねば、意味が無いからな。
済まぬ。
話を聞き終わって、皆考え込んだ。
曽てグスターキュ帝国で諜報活動をし、今はアリュースの元に居るミセルとヨウフは王族側。
それらに出兵を命じたのも、纏めて消す為か?
それとも敵側に捕らえさせ、その失敗を追及して2家を取り潰す算段だったのか?
『敵に殺された』と嘘を流して。
裏で人質に取り、言う事を聞かせるつもりだったのか?
敵側の作戦が深過ぎて、何処までが想定内なのか判別しにくい。
そして新しい人物、グレイテスト。
デュレイも聞いた事の無い名だし、トクシーも同じく。
通称かも知れないが。
そこまで崇拝される程の人物なら、帝国の歴史に残っている筈だが。
ただ、アンには心当たりがあった。
「兄様、向こうのリーダーはまさか……。」
「錬金術師の可能性が高いな。」
クライスの返事。
何処か暗い感じだった。
ラヴィは、クライスの身内に関係の有る人間ではないかと考え。
尋ねる。
「それは、『ベルナルド家に関係する者』だよね?」
クライスは、返事を少し躊躇った。
そして、とうとう口にした。
「昔々に分かれた傍系。それがヘルメシアに渡り、錬金術を伝えんたんだ。」
「そうか……。」
ロッシェが言える言葉は、それだけだった。
予想通り。
グスターキュ側で生まれた錬金術が、敵であるヘルメシア側にも存在する訳。
本来なら独占したい技術が、何故広まったのか。
一族に裏切者が出た。
それしか考えられない。
「それが、黒歴史?」
セレナがアンに尋ねる。
「うん。詳しくは話せないけど、そんなとこ。」
そして、クライスをジッと見つめる。
ただの裏切者だったら、黒歴史にはならない。
他に訳が有るのだ。
でもまだそれは話せない。
自分自身、確認した訳では無いから。
そしてつい、クライスが吐いた言葉。
「置き土産、か。」
一同、意味が分からず、その場では流された。
アンでさえも。
『兄様が言った言葉だから、何か意味が……』と深読みしたが、結局分からず放置された。
実はその意味は深く、核心でもあったが。
今は保留で良かろう。
とにかく、デュレイから情報が齎された。
それを元に分析する。
味方と考えられる王族擁護派の内。
ノイエル家は今、門を相手に奮戦中。
残りの2家の様子が気になる。
日和見派の内。
フサエンが所属するコンセンス家は、家族の身を案じ日和見を継続。
敵である、王族反対派の中で。
アストレル家は牙を向いたが、結局だんまり。
一時的ではあるが、動きを押さえた。
残りは敵側の2家と、日和見の5家。
日和見派の内、確か1家だけ評議会を欠席したと聞いた。
音信不通だとか。
もしかして、反対派にやられたのか?
後は、皇帝の弟3人と魔法使い。
それ等がどの立場なのか。
はっきりさせる必要がある。
「その為にも、陛下に早く謁見せねば。」
力強く、トクシーが話す。
頷く一同。
それぞれ、旅の支度に取り掛かった。
やっと解放されたソウヤ。
相談の内容を確かめようと各々に接近するが、流石に誰も話さなかった。
『詰まんねえな』と思いながらも。
一方では『余り首を突っ込むと抜けられなくなるかもな』と考え、自重する事にした。
オアシスを出、砂漠を越えれば。
やっとシルバへと入る。
それでも、旅の半ばだと実感せざるを得ない一同だった。




