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第13話 辺境の村に架かる闇

 サファイはこちらの味方となった。

 次は、隣のレンド。

 そのレンドを動き回る不審な影の襟元から、ポトリと金が一しずく。

 やがて人の形となり、トコトコと何処かへ歩いて行った。




「くれぐれも宜しくお願いします。」


 出立前に、ラヴィがエレメン卿に念を押す。


「分かっています。それが娘の願いでも有りますから。」


「妖精達には昨日、報告を入れておきました。何か差し入れをしてくれるでしょう。」


 義理堅いクライスは、きちんとシルフェニアとの仲を取り持ってくれた。

 信用には信用で返す。

 実はこれが一番効果的なのだ。




 ばいばーい!

 レンドの境界近くまで付いて来て、見送るダイアナ。

 傍にはケリーが寄り添う。

 2人は一行が見えなくなるまで、そこに立っていた。

 旅の無事を祈って。




「そろそろレンドに入る頃ですね。」


 セレナは辺りを見回して言う。


「入ってすぐの所に、村が有る筈だけど……。」


 地図と、何も無い草原を見比べるラヴィ。

 ここまでは敵の動きは感じられない。

 何か有ったと言うのか……。

 更に進む事、1時間。

『あ!あれでは!』と、アンが何かを見つける。

 それは、村の入り口を示す看板だった。


「えーと。ここはレンドの村【トッスン】、だって。」


 エミルが看板をまじまじと見る。

 しかし看板は何故か、新品同様。


「村の名前は合ってるけど、何か臭うわね……。」


 慎重になるラヴィ。

 罠が仕掛けられているかも知れない。


「錬金術的なトラップは無いみたいだな。でも……。」


 クライスはふと、向こうを見る。


「村人はピリピリしている様だ。」


 家がポツリポツリと建つ中で、窓からジッと隠れ見る村人。

 目が合うと、中にサッと引っ込む。

 何か訳有りの様だ。

『じゃあ』と言って、すぐさま偵察に飛んで行くエミル。

『せっかちね』と言いつつ、そこに座り込むアン。

 続いて皆が座る。

 エミルが戻るまで、ここで待つ事にした。




 また更に経過する事、1時間。

 シューーッと音を立てて、エミルがすっ飛んで来る。


「クライス!あちこちの家を見て回ったんだけど、おかしいんだ!子供が見当たらない!」


「え?」


 皆が驚く。

 察しの付いていたクライスを除いて。


「誰かに駆り出されたのか、あるいは……。」


「誘拐?そんな!」


『酷い!』と言いた気なラヴィに。

 クライスは目配せする。


「余り感情を出さない方が良い。こちらを監視する様、仕向けられているのかも知れない。」


「そ、そう?一応まだ、あの格好のままなんだけど……。」


『こちらの方が警戒心が低かろう』と、行商人の服装のまま旅をしていた。

 それでも、あのぎらついた目はただ事では無い。


「取り敢えずこのまま入ろう。素通りなら、させてくれるかも知れない。」


 それはあくまでクライスの願望。

 何も無いに越した事は無い。

 なるべく一般人とは、事を荒げたく無かった。

 しかし、それはやはり叶わぬ事に。




「おい!止まれ!」

「怪しい奴!」

「調べさせて貰おう!」


 数人の村人に取り囲まれる一行。

 鍬や鎌を構えている手は、ブルブル震えていた。

 村人にとっては、精一杯の脅し文句のつもりだろうが。

 一行には、棒読みの台詞せりふなのが丸分かり。

 リーダーと思われる人物に、ふらついた振りをしてガッと肩組みするクライス。

 不意を突かれてたじろぐ男。

 そこに、ひそひそ話をし始めるクライス。


『お子さん方を、何処か別の場所に隔離されているのは分かっています。』


『……!』


『俺達は訳有って旅をしている者です。〔隔離〕と〔俺達の訪問〕が関係しているかも知れません。力になりたいのです。どうか連行した振りをして、静かに話せる場所へ連れて行ってくれませんか?』


『し、信じられるか!大体お前達にそんな事……!』


『これでも?』


 クライスは男の服に付いているボタンを指差すと、それら5つが全て一瞬の内に黄金に変わった。

 形状も球体に変わったのを見て、『ヒッ!』と声を上げそうになる男。

 クライスは畳み掛ける。


『どうです?これで少しは、その気になって頂けましたか?』


 コクコクと頷く男。

 こいつは、尋常じゃ無い。

 ここまでされると、流石に普通の人間でも分かる。

 言われた通りにしてみよう。

 そう考えて、一言。


『変な事をしようとすると、どうなるか分かってるな?』


『それは、こんな事態にした奴に言ってやって下さい。解決した後でね。』


 ニヤリと笑うクライスが、少し不気味だったが。

 男は周りの人間に命令し、一行を或る場所に連れて行った。




 ボロボロながらも、神様の石像らしき物は綺麗に掃除されている教会。

 連れて行かれたのは、村の入り口から程無い場所だった。

 男が言う。


「これ以上は、まだ奥に入れる訳には行かんのでな。ここで我慢してくれ。」


 言う通りにしただけで詳細を何も聞かされていない者達は、早く説明して欲しがっていた。

 村人達は、どの顔もかなりやつれている。

 それ程、子供の事が心配なのだろう。


「どうなってるんだい、【ヤンク】。」

「《あいつ》の言う通りにしないと……。」

「そうだ、こんな事しても……。」


 もごもご言う周りをよそに、リーダーのヤンクは話を切り出す。


「お前の言う通りだ。俺達は子供を人質に取られてる。検問を条件にされてな。」


「検問?」


「『不審人物が入るかも知れないから、四六時中見張ってろ』とさ。『さもなくば、子供がどうなるか分からんぞ』と脅されてるんだ。」


「それは領主にですか?」


 思わず口を挟むラヴィ。

 ヤンクは静かに頷いた。


「酷いもんだ、今の領主に変わってからは。前はこんな事無かったんだが……。」


「まさか、誰かが仕組んで別の領主を擁立した……?」


 セレナの洞察は当たっていた様だ。

 ヤンクが続ける。


「つい最近なんだ。急にお達しが来てな。」


「まさか、国境沿いの戦と関係が……?」


「戦!そんな事になってるのか、今!」


 セレナの呟きに、『聞いて無いぞ』と反応するヤンク。

 周りの村人も目を丸くする。


「なるほど、上手く情報操作されている様だ。やはりあいつが……。」


 考え込むクライス。

 ここでも、深刻な状況になっているらしい。

 そうと決まれば、速やかに動かねばなるまい。


「ヤンクさんと仰いましたね。私達を、不審者として現領主の所まで連れて行ってくれませんか?」


「え、それは構わんが……。良いのかい、お嬢さん?」


 ラヴィの提案に、ヤンクは躊躇ためらいの色を見せる。

 その肩をポンと叩くラヴィ。


「どの道会わねばならない相手です。どうかご協力を。」


 ラヴィの真剣な眼差しを見て、ヤンクは根負けした。

 周りを見渡すと、『それが良い』と言った顔をした村人達。

 ヤンクは決意する。


「分かった。その代わり、お前達がこれからする事は俺達には関係無い。良いな?」


「十分です。さあ、行きましょう。」




 不審人物として連行される事となった一行。

 現領主とは?

 その前の領主や子供達の行方は?

 知らねばならない闇が、そこにはあった。

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