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第128話 天然の防壁を横切ろうと

 次の日の朝早く。

 一行はステイムの町を後にした。

 街道を進んで行く。

 周りの景色が段々殺風景になって来た。

 初めは背の高い木が少なくなって行く。

 次は背の低い木が。

 そして草々が。

 地面が露わになって行った。

 地面はいつの間にか砂地へと変貌。

 砂が周りを取り囲む頃には、進む道が高架の様になっていた。




 石で出来たアーチの連続。

 横から見ると、眼鏡橋が連結している様に見えるだろう。

 しっかりした造りではあるが、何せ道幅が狭い。

 馬車が対向して来たら、恐らくどちらも通れなくなる。

 トクシーによると。

 本来は、貨物など道幅を取る通行車はこの道を通らない。

 別の広い道がある。

 しかしそれは、目の前に広がる砂漠を遠回りして行く通路となっている為。

 これ以上時間を食う訳には行かず、止むを得ずこちらを通る事にしたとの事。

 逆にこちらは人しか通らない暗黙の了解があるので、敵側をあざむく思惑もあるらしいが。

 敵はそんなにあっさり騙せない。

 だから、その言い訳はおまけ。

『そう言う事にしておこう、その方が気が楽だから』と、クライスが言ったのだ。




 それにしても、暑い。

 砂漠になるだけはある。

 しかもこの石橋は延々と続いている。

 先が見えない。

 時々砂埃も舞い上がり、少女達にはいささかキツかった。

 この砂漠の広さは、丁度盗賊の巣があった森と同程度。

 だから貨物移送は向いていない。

 人が旅する分には何とかなる距離。

 馬は当然バテる。

 メークは苦しそうな顔をしている。

 ラヴィが思わずクライスに言う。


「何処かで止まらない?この子を休ませたいの。」


 しかしクライスは答える。


「止まっても同じ事だよ。その場で体力を消耗するだけ。それ程ここは暑いんだから。」


 冷たいとは思わないが、クライスの発言に少しカチンと来たラヴィ。


「じゃあどうしろって言うの!」


「進むしか無い。今の内に、出来るだけ。」


「どうしてそんなに焦るの!」


 そこでようやくトクシーが口を挟む。


「申し訳無い。この途中にも町はあります。オアシスが。それに……。」


『無い事を祈りますが』とトクシーは続ける。




「ここは竜巻が発生するのです。正に砂嵐です。巻き込まれたら、ただでは済みません。」




「そんなに危険な道なの!」


 思わず大声で叫ぶラヴィ。

 申し訳無さそうにトクシーが言う。


「ここを通らず遠回りすれば、1週間もの差が出ます。御容赦を。」


「え!」


「ここは天然の防壁なのです。ダイツェンが帝都へ簡単に手出し出来ないのも、その為です。」


 そこまで言われると、言葉を飲み込まざるを得ない。

 ラヴィは心配そうにメークを見る。

 首が汗でびっしょり。

 アンが時々栄養剤入りの水を飲ませているものの、それでも発汗が激しい。

 並大抵の馬なら、とっくに動けなくなっているだろう。

 それでも頑張って歩んでくれている。

 こうなると、早くオアシスに到着する様祈るしか無い。

 自分も額の汗をぬぐい、セレナの汗もいてあげるラヴィだった。




 そして漸く。

 向こう側に、何か別の景色が見えて来た。

 それは緑色で、さわさわ揺れていた。

 近付いて行くと、ヤシの木に似た植物。

 この世界に熱帯気候はほぼ存在しない。

 この様な特殊な場所だけ。

 その中で、ぽつんと存在する緑の貴重さ。

 正に癒し。


「やっと休めるよー。」


 エミルが喜ぶ。


「あんた、時々荷車で休んでたでしょ?何言ってんの。」


 アンにそう突っ込まれ、誤魔化す為に宙返り。

 くるくるくるりん。

 ゴホゴホ。

 砂を吸い込んだらしい。


「余計な事をするから……。」


 またアンに突っ込まれると、エミルは荷台に隠れた。

 妖精が見えないデュレイとソウヤは、そんなやり取りなど気にしない。

 荷車の中の方が、外で風を浴びれないだけ余計に暑いのだ。

 汗だくで、仕方無いのでお互いを仰ぎ合う。

 それでも暑いのだが。

 そんな中、クライスだけは別。

 汗一つ掻かず、涼しい顔で歩いている。

 普通の人間なら、間違い無く汗は掻く。

 なのに。

 時々、ラヴィは思う。

 クライスは本当に人間なの?

 常人を軽々超えていて、予想が付かない。

 規格外なだけなの?

 それとも……。

 そこまで考えて、止めた。

 トクシーの、『町の入り口です!』と言う叫び声が聞こえたからだ。

 やっと休める。

 休ませる事が出来る。

 早く水浴びをしたかった。




「そう言えば、メイは?」


 町に入った所で、セレナが気付く。

 使い魔のメイが居ない。

 いつの間にか。

 町の周りはヤシもどきで囲まれていて、それが垣根の代わりとなっている。

 と同時に、砂防林の役目もしている。

 町の中は。

 地面もしっかりしていて、建物は風で飛ばされない様厳重に木組みされている。

 砂漠のど真ん中にある以外は、至って普通の町。

 しかし、メイは気になる事があった。

 こう言う場所は、〔魔の遊び場〕同様、魔力が地中から噴き出ている。

 その恩恵を、植物は受けている。

 生きて行けるのは、魔力の噴出に伴い水も湧き出ているからだ。

 その肝心の魔力が、どうも弱っている。

 そんな風に、メイは感じたのだ。

 だから一行に先駆けて町に乗り込んだ。

 何か原因がある筈。

 魔力の吹き出し自体は止まって無さそうだから、他に原因が……。

 その時。




「きゃあああああっ!」




「な、何だ?」


 ロッシェが突然の悲鳴に反応する。

 あれはメイの声。

 仲間に声掛けする。


「あっちから聞こえたぞ!」


「ロッシェ、頼む!」


 クライスがすぐにそう言うと、『よっしゃ!』とすっ飛んで行った。

 水飲み場のある休憩所でメークを休ませているラヴィは、一抹の不安を感じる。

 ここでも何かあるの?

 平和な時は、中々やって来ないわね……。

 これからの苦労を、考えたくも無かった。




「どうした!」


 メイの元へ辿り着くロッシェ。

 その目の前には。

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