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第122話 現実へ戻ると

 ハッとラヴィが目を覚ますと、クライスがビンタをする所だった。


「タ、タンマタンマ!目ぇ覚めてるからぁ!」


 慌てて両手を前で振り振り。

 構わず振り下ろされる掌。

 うわっ!

 目を閉じてしまうラヴィ。

 ……ん?

 そろぉっと目を開けると、寸止めされていた。

 ホッとするもつかの間、クライスに食って掛かる。


「ホントは気付いてたんでしょ!」


 クライスはメイの方を見て言う。


「ほら、言っただろ?冗談が通じないって。」


「そうみたいね。」


『ふーん』といった感じで、ラヴィを見るメイ。


「た、試したの!?」


 目を丸くするラヴィ。


「クライスを揶揄からかっただけよ。」


 プイと顔を背けるメイ。

 でも背中はプルプル震えていた。

 どうやら笑いをこらえているらしい。

 どちらに対して笑っているのかは謎だが。


「それで?何発叩いたの?」


 右頬を押さえて、ラヴィはクライスに尋ねる。

 そんなに腫れ上がっていないから、少ないとは思うが。

 それにしても痛い。

 早く冷やしたい位だ。


「そうだな……2発?」


「3発でしょ。」


 ようやく笑いが収まったメイが言う。


「3発も叩いたの!」


「仕方無いだろ。目が覚めないんだから。」


「それだけ、あいつの催眠能力が強かったって事でしょ。」


 淡々とメイは分析する。


「あのタヌキの事?」


「そうよ。あんた、寝顔は可愛いのね。嫉妬しちゃうわ。」


「んーーーーー!」


 メイの揶揄う様な発言に恥ずかしくなり、拳をグーにして殴りたくなる。

 でもその前に聞きたい事が。


「メイ、あんた今『あいつ』って言ったわよね?こうなる事を知ってたんでしょ!」


「当然。クライスもね。」


 そう言ってクライスをチラ見。

 クライスはフッと顔を明後日の方へ。

 そしてボソッと。


「ラヴィを《適任者》って提案したのはメイだぞ。」


「あら、あんたも同意したじゃない。」


「まあ、キーリが居るからな。宿主を攻撃されたら、黙っていないだろ。」


 なるほど、それで『食えぬ奴』って言ったのね。

 今回はキーリに同情せざるを得ない。

 こちらの意図通りに動く様、誘導されたのだから。

 そこでふと思い出し、クライスに尋ねるラヴィ。


「そう言えば、あの変な境目は?」


「ああ、あれか。消えたよ。」


「そう……。」


「と言うか、元々そんな物無いんだけどな。」


「え?」


「その時点で既にはまってたのさ。夢魔の計略に。」


「?」


「境目が見えてるって事は、催眠効果が表れたと言う事。後はぐっすり眠らせれば良い。」


 要は、夢を見せる為のスイッチがあった。

 オンになったから境目が見えた。

 そしてその場でバッタリ倒れる。

 夢の中へご案内。


「その状態が、これさ。」


 少し離れた所を指差すクライス。

 そこには、まだぐっすり眠ったままのソウヤが居た。


「そろそろ起こすか。聞きたい事もあるしな。」


 そう言って傍まで近付き、胸ぐらを掴むと往復ビンタを始める。

 痛々しくて、目を伏せるラヴィ。




「ぐっ……ここは?」


 ソウヤが目を覚ましたのは、ビンタが5往復目に入る前だった。

 目の前に、あのにっくき男。

 しかも吊り上げられている。


「は、離せ!」


 クライスの両手を無理やり振りほどいて、ズザザアアッと後ずさりするソウヤ。

 警戒心剥き出し。

『何だい』と言った顔のクライス。


「俺は起こしてやったんだぜ?感謝して欲しいね。」


「む、むむう……。」


 言い返せないソウヤ。

 確かに、女が消えてから影と追い駆けっこしていた。

 らちが明かずハアハア息が上がっている所で、急に空間がグニャリ。

 影が消えたかと思うと、渦の中心に巻き込まれた。

 そうして気が付くと。

 この状況。

 クライスが話を続ける。


「あんた、あいつに言われたろ?協力しろみたいな事を。だからあんなバリケードをこしらえた。」


「し、知らんな。」


 とぼけるソウヤ。

 構わず続ける。


「どうせアストレル家にも、今までの事が報告されてるんだろ?既に。」


「さ、さあ。」


 タヌキ人がそんな事を言っていた気がするが、すっ呆けるソウヤ。

 ため息を大きく付き、クライスは言う。


「親父とやらは偉く怒ってたぞ?『裏切ったなー!』って。もう帰る場所が無いんじゃないのか?」


 ギクッ!

 し、しまった!

 生かされてたのか!

 てっきり抹殺されたと思ってたのに!

 ソウヤは、想定外の事態になっている事を思い知らされる。

 更にクライスの発言。


「支配者に連絡が行ったと言う事は、お前はもう用済み。違うか?」


 その通りだ。

 俺は古巣にも、この先にも行き場が無い。

 しかし。

 ソウヤは。


「俺にもプライドがある!お前等には屈しはしない!」


「恩を感じていない、か。まあ、殊勝な心掛けだな。」


 でもそれは、強者側に立っている時しか通じない。


「良いさ。その辺はキーリに聞くとしよう。」


「キ、キー……?」


「タヌキ人と同類さ。こいつの中に住んでる、な。」


 そう言って、クライスはラヴィの頭をつつく。


「またあんた、私の夢に割り込むつもり?良い加減にして欲しいわね。」


 呆れるラヴィ。

 その方が手っ取り早い、と譲らないクライス。

 しばし押し問答が続く。

 そのやり取りを見て、もう逃れられないと悟るソウヤ。


「分かった、分かったよ。俺の知っている事、全部話そう。その代わり、俺の身の安全を保障してくれ。」


 そう告げるソウヤの顔は、スッキリしていた。

 押し問答がピタリと止み、ソウヤの手をガシッと掴んで『ありがとう、ありがとう』と喜びを露わにするラヴィ。

 余程嫌だったらしい。

『聞ければ良いか』と切り替えるクライス。

 すると、街道の遠くから人影が。

 時間が掛かっているのを気にして、ロッシェがバリケードの一部を撤去して追い駆けて来たのだ。

 クライス達の傍まで来ると、第一声が。


「おっせーよ。何やってんだよ。」


 語気が少し荒かったのは気のせいでは無い。

 それ程心配していたのだ。


「ごめん……。」


 シュンとするラヴィ。

 しおらしい態度に、オロオロするロッシェ。


「そ、そんなつもりじゃ……。」


 誤魔化す気は無かったが。

 つい態度に出てしまう。

 素直なロッシェに、クライスが気を落ち着かせる様に言う。


「問題は特に何も無かったよ。バリケードを撤去してくれ。ここは通れる。」


「そ、そうか?」


 返事も曖昧。

 引き下がる良い言い訳が出来た。

 スタコラと引き返すロッシェ。

 すぐにでも、旅人がわんさかやって来るだろう。

 賑やかになる前に、ソウヤから話を聞かないと。

 街道の外へソウヤを連れ出し、聞き取りの体制を作るクライスだった。

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