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第121話 夢の住人

 心の何処かで、薄々は感付いていた。

 あの口調、『儂』と言う一人称。

 でも確証は無かった。

 でも、ようやく安心した。


「キーリ!」


 老紳士がポンッと煙に包まれたかと思うと、子供の象の様な姿になった。


「どうしてここに?」


 ラヴィは尋ねるが、キーリはガラを指して言った。


「こいつが目を覚ませば、すぐに分かるわな。」


 そう言って、前足でゴロンとなっているタヌキを蹴飛ばす。


「うっ!ううーん……。」


 そう唸った後、ガラが目を覚ました。

 そしてキーリを見ると、開口一番。




「お前はばく!そうか、お前が!」




「ほう、知っておったか。流石に夢魔むまの端くれだな。」


「むま?」


 ラヴィが聞いた事のない言葉。

 キーリが答える。


「夢魔とはな。人間などに悪夢を見せ、生気を吸い取る悪魔じゃ。」


「悪魔って、魔物の事?」


「おっと、この世界ではその様な概念だったな。失敬。」


「魔物って、悪いの?」


「この世界でも悪事を働くのが居るだろう?その責任転嫁の矛先となっておるだけじゃよ。」


 基本的に本質は、人間と一緒。

 良い者も悪い者も居るが、それは他者評価にるもの。

 自分に利益となれば神とされ、不利益をこうむれば悪魔と称される。

 ただそれだけの事。

 そんな風に少々哲学的に説明され、理解が追い付かないラヴィ。

 更に追い打ちを掛けるキーリ。


「世界はここだけでは無い事は分かるな?その様々な世界が繋がる場所、それが夢の中。儂はそこの住人じゃ。」


「うーん……。良く分からないけど、つまり色々な世界を行き来出来るって事?」


「そう。夢の中なら、な。」


「じゃあ、私を引っ張り込もうとしたのは、夢の中って事?」


「それはちと違う。夢にも質があってだな……。」


 話し込むラヴィとキーリに、割って入るガラ。


「同じ夢魔同士なのに、何故俺の空間に干渉出来たんだ!」


「それは……。」


 言いかけるキーリ。

 ふと思い直し、答えた。


「内緒じゃ。」


「えーーーー!」


 がっかりするラヴィ。

 キーリの秘密が知れそうだったのに。


「ラヴィ、お前さんにはまだ早い。あの小僧の事もあるしの。」


「クライスが関係有るの?」


「まだそこまで知らなくとも良い。じきに分かるじゃろ。旅を続ければな。」


 まるで終点を知るかの様な口ぶり。

 気になって仕方無いラヴィ。


「ともかく、じゃ。こ奴の空間に干渉して、偽の情報を流した。名前や旅の事、それにあの《影》もじゃ。」


「影?私の?」


「待て!あれは俺が本体から切り離した……!」


 そこは否定したいガラ。

 ナイフを刺した時も、本体はちゃんと痛み苦しんでいた。

 そんな訳は無い!

 しかしそのプライドは打ち砕かれた。


「入ってからすぐじゃ。お前が切り離す前に儂がすり替えた。偽の影とな。」


「じゃあ、一緒の影に付いて来ていた男のも……?」


「あれはこいつの仕業。あれに力を貸す義理も無いしな。」


「そ、そう……。」


 ソウヤの事が少しだけ気の毒になるラヴィ。

 ラヴィとキーリとの会話が気に食わないガラ。

 突っ掛かって行く。


「何故、人間と夢魔が仲睦まじくしている!お前も、その端くれだろう!」


「ほう、大口を叩く様になってきたな。立場も考えずに。」


「お、俺は納得行かないだけだ!お前だって生気を……。」


「ああ、頂いてるさ。同じ、お前等夢魔からな。」


 夢魔同士の言い争いになって来た。

 説明が欲しいラヴィ。

 そわそわする様子を見て、キーリが答えた。


「先程言ったであろう?全ては他者評価だと。儂は、悪夢を見せる夢魔が邪魔なだけ。だからこ奴等が悪夢で生み出す質の悪い生気を横取りして、度々追い出しておるのじゃ。」


「けっ!良い様に思われてるよなあ!『悪い夢を食べてくれる、有り難い存在』ってな!」


「おお、その様な世界もあったのう。」


 ラヴィは何とか話に加わろうとする。


「獏って、その世界の呼び名?」


「そうじゃ。こっちに現れた時に獏だと名乗ったのじゃが。妖精共め、『バクバックンの方が可愛い』とかかしおって。」


「ああ、それが定着しちゃったのね……。」


 妖精は、時に罪作り。

 訂正が面倒臭くなったのだろう。

 ラヴィへ最初に名乗った時には、妖精界では既にバクバックンでお馴染み。

 仕方無かったのかも。


「じゃあ、これから訂正する?」


「良いわ良いわ、気を遣わずとも。存外気に入っておる。」


「ふーん。」


 案外、夢魔と妖精は気が合うのかも知れない。

 そう思うラヴィだった。




「で?これからどうするの?」


 ラヴィはキーリに尋ねる。


「ふん!幾ら干渉出来ると言っても、ここは俺のナワバリ!出られる筈が……!」


 そう自信満々に答えるガラ。

 キーリはあっさりこう言った。


「さっき小僧に連絡した。『片付いた』とな。もうすぐ引っ叩くじゃろ。」


「え?それはどう言う……きゃっ!」


 空間が少し揺れた。

 空の方から声がする。


『もう少し、掌に魔力を込めてみるか。』


『もっとキツ目に叩いた方が良いんじゃない?』


『でも目を覚ました時、頬が腫れてると俺が文句を……。』


『言われても良いじゃないの。』


『お前、他人事だと思って……。』


『さっさと次、打ち込む!』


『へいへい。』


 クライスとメイの会話。

 それで、どうするかが分かった。

 ちょっと!

 加減!

 加減しなさいよ!

 嫌、嫌あーーーっ!




 バチーン!




 大きな張り手の音が空間にこだました。

 一気に揺らぐ空間。


「また夢で会おうぞ。こ奴の事は心配するな。この世界に来られない様にしておくからの。」


 そう言って、老紳士の姿へ変化すると。

 名残惜しそうに手を振るキーリ。

 きちんとした挨拶も出来ないまま、グルグルと回る空間の中心に飛ばされて行くラヴィ。

 大きな渦の中へと吸い込まれて行った。

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