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第119話 迷走、また迷走

 きょろきょろしながら歩くラヴィ。

 気が付いた時には気にならなかったが。

 改めて周りを見渡すと、おかしな事ばかり。

 家や店は並んでいるのに、人っ子一人居ない。

 それどころか、鳥や小動物も見かけない。

 シーンとした中、トコトコ歩く影達。

 歩く音も無く、静かなものだ。

 なので、ラヴィとソウヤの足音がとても大きく聞こえた。

 2人共歩き易い靴を履いているので、それ程大きな足音にはならない筈なのに。

 そう言えば、風は?

 木々がさわさわと音を立てそうなものだが。

 身体には感じない。

 無風?

 空も見上げてみる。

 雲一つ無い。

 青い空が突き抜けている。

 木や草は生えているが、季節感は滅茶苦茶。

 春夏秋冬、何でもあり。

 この空間のぬしの好み?

 考える程、分からなくなる。




 それに対して。

 ソウヤは怯えていた。

『囮にする』が本当なら、もう俺は用済み。

 消される?

 いや、そうはさせん。

 絶対にここから出てやる。

 こいつを利用して。

 タヌキ人の攻略ばかり考えていて、周りを見る余裕が無い。

 見るのは先に進む影、それと利用価値がありそうなラヴィのみ。

 他の事は今更どうでも良かった。

 ここは現実の町では無いのだから。




 同じ所をグルグル歩いている気がする。

 ラヴィは気付いた。

 景色が一周している。

 何処かでループしている?

 なら、その切っ掛けの場所がある筈。

 影に付いて行きながら、ラヴィはその境目を探す。

 目の前ばかりしか見ないソウヤと、そこで差が付いた。




『あっ!』


 道に生えている草々。

 その中に、わずかなずれを見つけたラヴィ。

 どうする?

 このまま影に付いて行っても、きりが無い。

 一か八か。


「えいっ!」


 ずれであらわになっている境目に向かって飛ぶ。

 そこでスウッとラヴィの姿が消える。

 影の方を見ていたソウヤは、ラヴィを見失う。


「!」


 慌てて周りを見渡すが、何処にも居ない。

 しまった!

 景色の中に何かあったのか!

 悟った所で、もう遅い。

 いつの間にか、ラヴィの影も消えていた。

 ソウヤは自分の影と共に、この空間に取り残された。




「ふうっ。」


 境目を通り抜けたは良いが。

 今度は、異様な光景が広がっていた。

 太い木々が生い茂る、鬱蒼うっそうとした森。

 全体が薄暗く、自分の影が戻っているかどうか確かめられない。

迂闊うかつに動いては駄目』と、その場で考え込むラヴィ。

 周りを見ても、ループしてそうには無い。

 しかし、出口の様な物も見えない。

 さて、どうする?

 すると目の前に、スポットライトの様な光が差し込んで来た。

 地面を照らすと、それは何処かへ進み始めた。

 いざなわれている様な気がして、ラヴィは覚悟を決め付いて行く事に。

 スピードは、丁度ラヴィの歩みに合わせてくれている様だった。

 時々、腰位の高さの草を掻き分けて。

 ラヴィは明かりを追い駆けて行く。

 しばらく歩いて行くと。

 急に開かれた広場の様な空間に出た。

 その真ん中に大きな切り株があり、ソウヤの言っていたタヌキ人が座っていた。

 直径50センチはあろうか。

 その切り株に座っているせいか。

 遠くでは小さく見えたタヌキ人は、近付くにつれて大きくなっていった。

 残り2メートルの距離まで近付いた所で、ラヴィは歩みを止める。

 座っているのに、2メートルはあろうかその高さ。

 切り株も少々大きくなっている様に感じた。

 それに違和感を感じ、警戒するラヴィ。

 すると座っていたタヌキ人が立ち上がり、ヌッと顔をラヴィの方へ突き出して来た。


「まさか、ここまで辿り着くとは。」


 誉めてやろうと言わんばかりの顔。

 ニタァと不気味に笑う。

 余りの不快さに背中がゾッとするラヴィ。

 付き出した顔を引っ込めると、タヌキ人は話し出した。


「俺はここの守護者である【ガラ】だ。まあ、名乗った所で意味は無いが。」


「それは私が出られないって事?」


「そうだ。お前の事は分かっているぞ。……おっと、喋らなくとも良い。名前は……。」


 そう言って目を閉じるガラ。

 カッと目を見開いて言った。


「【キリカ】。そうだな?」


「!」


 目を丸くするラヴィ。

 驚いたからだ。

 何に?

 あれ程勝ち誇った顔で言い放ったのに、かすりもしなかった事に。

 それをガラは正解だと勘違いした様だ。

 話を続ける。


「お前は男と、この空間に入って来た。しかしそいつとはぐれて途方に暮れる内に、偶然ここへの入り口を見つけた。」


 え?

 全然違うんだけど。

 どう言う事?

 迷走するガラは、得意気に続ける。


「旅の途中なんだろ?残念だったな、ここで終わりだ。」


 そう言うと、右前方を見るガラ。

 そこには、ラヴィの影。

 ラヴィと同じ格好で立っている。

 そこへ。


「こうしてやる!」


 ガラはキラキラ輝くナイフを後ろ手から出して、影の両足の甲に突き立てる。


「痛っ!」


 同じ箇所に激痛が走る。

 そして足を上げられなくなった。


「地面に固定してやったわ。次は……?」


 今度は取り出したナイフを右肩に突き刺す。


「うっ!」


 またしても激痛が走り、右腕が上がらなくなった。


「さて、次は何処が良いかなあ?何処があ?」


 ナイフを再び取り出し、右頬から首筋、そして心臓の前へ。


「こーこーだーなーぁ?」


 ガラはニタリ。

『ひっ!』と思わず声を上げるラヴィ。

 そのリアクションで決めた様だ。




「さぁーよぉーなぁーらぁー!」




 そしてシュッと、ナイフを影へ。

 思わず目を閉じるラヴィ。

 色々考える暇も無く、終わった。

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