第116話 新規、加入
自分の影に付いて行くソウヤ。
少しすると、何やら立っているのが見えて来た。
それは影では無く。
タヌキの顔をした人間。
それはソウヤに話し掛けた。
「お前か?話があると言うのは。」
ソウヤは、この空間の主だと直感した。
「そうだ。今大変な事になってるんだ。早くアストレル家へ知らせないと……。」
焦るソウヤに、タヌキ人は答える。
「それは俺に任せろ。それよりも、お前には囮になって貰う。」
「ど、どう言う……。」
尋ね切る間も無く、ソウヤはまた気を失った。
クライス達が戻って来ると、早速話を聞こうとするラヴィ達。
新顔のデュレイに挨拶するが、ちょっと浮かない顔をしていた。
ロッシェがラヴィ達にボソッと囁く。
『メインダリーでノウが消えた事が有ったろ?あれと同じ様になったんだ。』
共に現場に居合わせたラヴィとセレナは、それで察した。
喪失感に近い物を、まだ拭い切れていなのだろう。
まだ詳しくは聞くまい。
本人が話したがらないのなら、踏み込むのは野暮だ。
敢えてスルーしようとするが、デュレイは迷いを振り払う様に口を開いた。
『誰かに話せば楽になれる』とでも言うかの様に。
「俺はエメロー・デュレイ。ここに居るビンセンスの友であり、今は居ないリドの友でもある。暫し旅に同行する事に相成った。どうぞ宜しく。」
「よ、宜しくお願いします。」
ラヴィ達は慌てて頭を下げる。
自分から、リドの不在をこんなにあっさり話すとは思っていなかったのだ。
前のヘンの落胆具合を見ていたので、そう思うのも当然だったが。
事実を受け入れる事、辛い事なら尚更難しいのに。
心の強い人だ。
ラヴィは素直に感心した。
ここでクライスにセレナが尋ねる。
「結果は何と無く分かります。無事成功したのでしょう?」
「まあね。荷物も引き取り手がいるし。今回はまだ楽かな。」
そして大体起こった事を話す。
エミルが大活躍した事。
えへんと胸を張るエミルに、『調子に乗るんじゃ無いわよ』とチョップを食らわせるラヴィ。
フフフと笑うセレナ。
繰り広げられる光景を見て、妖精が見える事を理解し。
ただ者では無いと考えるデュレイ。
その疑問を晴らす様に、トクシーがラヴィに話す。
「ラピの件も有ります。デュレイには、身を明かしても問題無いかと。」
『そうねえ』とラヴィは考え込む。
ポンと肩をアンに叩かれ、デュレイには正体を明かす事にした。
そうすれば、向こうの情報が得易くなるし。
何より、騙しながら旅に同行させるのも何だし。
ある程度お互いを知っておいた方が楽だわ。
そう考えた結果だった。
デュレイは、驚きの声を押さえるのに必死。
何せ、敵国の王女に幻の錬金術師。
しかも閣下とも知り合い。
びっくりせざるを得ない。
高貴な方々に、遜らずのうのうと語りかけてしまった。
知らなかったとは言え、何たる失態。
何故かすぐに土下座するデュレイ。
「平に!平に御容赦を……!」
「こんな展開は、何と無く予想してたのよね……。」
『だから考え込んだのよ』と、ラヴィは言いたそう。
トクシーに注文する。
「デュレイさんに言い聞かせといて。『そんなに気を遣う必要なんて無い』って。」
「は、はあ。」
王女とは言え、今は一兵卒として振る舞っているのだ。
接する態度から、敵に正体を知られると厄介。
真っ当な対応だった。
スッとラヴィは離れる。
トクシーはデュレイに言った。
「『近衛兵のラヴィ』として、使者の任務に付いておられるのだ。だから一般人として接してくれ。頼む。」
「お前も敬語ではないか。」
デュレイに言い返されるトクシー。
「こ、これ位は良いのだ。尊敬に値する方だからな。」
適当に言い訳するトクシー。
それが面白くて、つい笑ってしまうラヴィ達。
照れるトクシー。
それを見て感じる。
そうか。
もう、そう言う関係なのだな。
では俺もそれに習うとしよう。
助けられた恩義もある。
自分が得た情報も役に立つだろう。
デュレイはやっと吹っ切れた様だ。
再び一行に挨拶する。
「宜しくお願いします。」
深々とは頭を下げず。
会釈程度。
それがこの中での距離感。
ラヴィ達も手を振って応える。
こうして、デュレイと言う新しい仲間が加わった。
『ありがとうございました!こちらはしっかりと守らせて頂きます!』
デュレイの無事を知らせたクライスの元に、ラピから返事の念が来た。
静かに頷くクライス。
その元に、メイが歩み寄る。
「この先、時空が歪んでいる箇所があるわよ。気付いてるだろうけど。」
そう語り掛けるメイ。
「やはりか。魔力の流れが途切れている箇所で間違い無いな?」
「ええ。時空の断裂の様ね。何と無く誰の仕業か分かるけど。」
「そうか。となると、普通に進む訳には行かないな。」
しかめっ面になるクライスへ、メイが提案する。
「原因を作ってるのがあいつなら、《適任者》が居るわ。」
「ほう。」
メイとクライスが、こそこそ相談をし始めた。
そしてニヤリと笑い合う。
その怪しい笑みに、気付く者は居なかった。




