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第1話 出会い

既存の異世界ハーレムチート物とは違った、

気軽に読める感じの王道ファンタジーを書いて行くつもりです。

気に入って下されば嬉しいです。

よろしくお願いします。

 きん

 古くから人々に親しまれ、ほっせられた金属。

 長い年月が経ってもほとんど変化しない事から、不老不死に関連した神秘性を生み。

 また産出量が少ない事から、豊かさと富の象徴として。

 その時々の、貴族や権力者を魅了した。

 あるいは、最も薄く延ばす事が出来る金属の為。

 金ぱくや金として、装飾品や豪華な衣装に用いられた。

 近年では、その優れた化学的性質によって。

 電子機器や歯科治療など、様々なテクノロジーに貢献し。

 人間の生活とは最早、切っても切れない仲となった。



 そんな金が、もし自由に生み出す事が出来たら……。

 誰もがそう望むだろう。

 それが出来た時の、苦しみも知らずに。



 これは、とある世界で。

 偶然か、必然か。

 うれしくも悲しくも、それが【出来てしまった】者の。

 そして、【それしか出来なかった】者の。

 物語である。




 ──────────────────




「長いわねー。まだ着かないのかしら。」


「姫様。あと1、2日は掛かるでしょう。どうか御辛抱を。」


「分かってるわよ、こんな身の上になったんだから。それともう『姫』じゃ無くなるんだから、名前で良いわよ。」


「かしこまりました、【マリー】様。」




 すそひざ下まであろう、純白のドレスに身を包み。

 ウェーブ掛かった、つややかな黒髪が。

 キリッとした顔付きを強調するが如く、ファサァッと優しく肩甲骨辺りを覆う。

 髪とは正反対な、透き通る様な白い肌。

 その上に浮かぶ鮮やかな黒い瞳、シュッとした鼻筋。

 淡いピンク掛かった、魅惑的な唇。

 胸から腰に掛け、ヒップへと達するラインは。

 豊満なシルエットで、魅力的な女性として惹き付ける物が有る。

 何処から見ても、一級品の美少女。

『マリー』と呼ばれる、元?姫様は。

 この辺り一帯の領主を束ねる王【アウラル2世】の第1王女、【マリアンナ・グスタ・アウラル】。

 正当な王の後継者が城を追われる様に放り出されたのは、5日程前。

 妹3人・弟4人の母親である継母達が巡らせた策略によって、或る領主の元へ嫁がされる事となった。

 従う事で、実の弟の身の安全を保障して貰う。

 苦渋の選択だった。

 継母達は今頃、清々しているだろう。

 邪魔者が居なくなって。

 特に。

 時あるごとに文句を付けては自分を毛嫌いしていた、【あの人】は。

 悔しくも有ったが、これは寧ろチャンス。

 マリーには、密やかな野望があった。

【世界統一】。

 争いの無い世の中になれば。

 母親が異なるとは言え弟妹同士、仲良く家族として暮らせると思っていた。

 割と本気で。

 なので、嫁ぎ先に着いたら適当に誤魔化して逃げるつもり。

 馬車で移動する間に、その算段を女中と相談していた。




 マリーよりも慎ましやかな、青を基調としたドレスを着飾ったその姿。

 漆よりもあでやかな赤茶色のストレートヘアは、肩を過ぎる位の長さで。

 馬車の振動で、ふわりと揺らめく。

 目的地まで、黙々と馬車が進む中。

 利発そうなその眼差しで、マリーをしっかりと捉えている。

 その上に在る、引き締まった眉からは。

 やや柔和にゅうわそうな表情とは真逆に近い、『どんな事が有ってもマリーを守る』と言う堅い意志が見て取れる。

 こちらもマリーに劣らぬ、美貌とプロポーションの持ち主。

 女中として仕えている、その幼馴染おさななじみは。

 マリーよりも、年も背格好も上だったので。

 彼女の姉代わりだった。

 代々続く、王族に仕える臣下の家系。

 名を【エレミリア・フォウ・ヒオセンス】。

 稀代きっての女剣士。

 マリーからは、親しみを込めて【エリー】と呼ばれていた。

 何をやるにも、マリーの上を行く。

 悔しいからマリーも頑張る。

 そうしてお互いを高め合って来た。

 エリーは、マリーを守る為に。

 剣だけで無く、槍や弓を使いこなし。

 いざと言う時、身の回りの世話が出来る様。

 家事全般を一通り、精力的に取り組んだ。

 それを分かっていたので、マリーは全幅の信頼を寄せていた。

 マリーの政略結婚の話が出た時、真っ先にお供として手を挙げたのもエリー。

『苦楽をずっと共にする』と誓ったあの日。

 それを果たすなら今。

 迷いは無かった。

 それだけで、マリーは心強かった。




 夕刻に差し掛かる頃。

 急に馬車が止まり、『ギャーッ!』と言う叫び声が聞こえたかと思うと。

『バンッ!』と、馬車の扉が乱暴に開け放たれた。


「とっとと降りないか!」


 強引に降ろされる2人。

 他にお供が何人か居た筈だが。

 馬車の周りを囲んでいるのは、山賊の様な風ぼうの男達だけだった。


「何するのよ!」

「この方が何方どなたか、知っていての所業か!」


「だからだよ、お姫様。」


「さては……ただの賊では無いな?」


 エリーがキッと相手を見据える。

 左手はマリーを守る様に、そっとかざす。


「『賊』と言う事にしといてくれや。その方がお互い、都合が良いだろう?」


「誰の配下だ?」


「話しても仕方無いさ。ここで死ぬんだから……なっ!」


 リーダー格の男が。

 振り上げていた剣を、エリーに向かって真っ直ぐ下す。

 さっと引いてかわし、マリーを馬車へ押し込めようとする。

 マリーはマリーで、『自分の身は自分で守る』と転がっていた棒を拾い上げ。

 襲い掛かろうとする連中の喉元に、スッと合わせる。

 刹那の間の心理戦。

 お互いが一斉に行動へと移る、その時。

【彼】は現れた。




「何してんの?」




 驚く程、頓狂とんきょうな声。

 声が発せられた元を探すと。

 それは何と、馬車の屋根の上。

 何時いつの間に!

 彼は『よっ』と、屋根から軽々と飛び降りる。


「困るんだよねぇ、この辺で変な事されると。」


 ひょう々と語る、彼。

 まるで狩りをした帰りの様な服装で現れた、その男は。

 パッと見、ヒョロッとした体格。

 女性の様な、端正な顔立ち。

 ツンと立った黒髪の長さが、辛うじて彼を男たらしめている。

 どう見ても、格闘家でも無ければ剣士でも無い男。

 多勢に無勢、今はそんな状況。

 山賊相手に、勝てる見込みさえ……。

 なのに何故か、彼からは。

 そこはかとなく、自信と余裕が感じられる。

 賊に扮した敵らしき者達は、それが気に食わなかったらしい。


「ウ・ル・セエ!」


 フッ。

 敵の大男が振るった剣は、彼の体をすり抜ける。

 様に見えた。

 実際は、彼の体に接触した部分が消え失せ。

 刃の先がカランと、地面に落ちていた。


「お前……まさか!」


「その推測、当たりだと良いねえ。」


 相手がひるんだ隙に、スルスルッと彼はそれ等の間を駆け巡る。

 敵が皆気付いた時には、己の武器と防具が無くなっていた。

『え?』と言う、居合わせた皆の驚いた顔。

 そして彼の手元には、大きな金の塊。




『まさか、《あの噂》の……?』




 エリーは覚えていた。

 何処かで聞いた、とある噂を。

 この世界には【錬金術師】が居る。

 金を生み出そうと日夜研究を重ね、その副産物として膨大な知識と珍妙な技を手に入れた集団。

 しかし今まで、金自体を生み出せたのは誰も居ない。

 或る者を除いては。

 その技故に敵味方無く狙われ、姿を隠したとされる存在。

 実在したのか……!


「お……おのれぇ!」


 強がるも、丸裸なので説得力が無い。

 捨て台詞にもならず。

 賊を装った兵達は、すごすごと引き上げて行った。




「ありがとうございました!」


 エリーは得体の知れぬ彼に対し、深々と頭を下げる。


「ちょっと、良い気にならないでよね!あんな奴、私達だけで……。」


 感謝の気持ちを、照れ隠しで掻き消そうとするマリー。

 しかし、エリーに無理やり頭を下げさせられた。

 彼は笑って答える。


「構わないって。暴れられると困るのは本当だし。」


「無礼を承知でお尋ねしますが、あなたはもしや……?」


「まあ、そんなとこ。」


「どう言う事?説明して頂戴。」


 マリーは噂を知らなかったので、何が何だかと言う顔。

 そりゃ、並々ならぬ力の持ち主だけど……。

 ジト目で彼を見つめるマリー。

 そんな事を気にせず、彼は淡々と話す。


「馬車に付いている家紋から察して、王族の方かな?ならしょうが無い、自己紹介しますか。俺は……。」




 有るべくして有った出会い。

 これが、長い冒険の旅の《始まりの始まり》だった。

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