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第4話

 

 《【スキル:妖精の加護】によりLevelの上限が外されました。未使用の経験値を適用しますか?


 YESorNO?》


 最初から声による強化の確認をしているのには訳がある。


「うん、お願い……」


「ピィ? ピピ?」


 黒い曇天の下、溶け固まった廃棄物の地面の上で体育座りで黄昏れ、古い時計頭から新しく蛇の遺体から見つけた現代日本のフルフェイス頭にした男は心底凹んで、頭の中に保護し懐いてくれた妖精に慰められていた。


 彼女は彼のフルフェイスの割れたアイシールドの部分から顔を出し頭の方に手を伸ばして撫で続ける。


 理由は彼女のステータスだ。読者諸君にも洲倉 風が見た彼女のステータスをご覧頂こう。


 ────────《ステータス》───────


 種族:【スクラップ】フェアリー


 Level:13/15


 経験値:205/500


 体力:132/132 【高】


 スタミナ:250/300【高】


 魔力:700/700【低】


 攻撃力:120/120【高】


 防御力:120/120【高】


 スピード:700/700【高】


 生命力:150/150【高】


 《スクラップ化:魔力にマイナス補正【-500】。魔力以外のステータスに補正【+100】。【凶暴化:元種族の補正により無効。性格に若干の変化あり】》


 【契約者:洲倉 風 《親愛度:100/100》】


 ────────《スキル一覧》───────


 立体機動効率:立体機動効率を上昇させ、スタミナの消費を超激減させる。スタミナとスピードに補正【+30】。50/100


 飛行性能:飛行性能を上昇させ、スタミナの消費を激減させる。スタミナとスピードに補正【+30】。70/100


 逃げ切った者(ランナー):自分より格上の相手から逃げ切った者に与えられる。逃げた先に勝利を見出せ。スタミナとスピードに補正【+40】。


 超神経:超高速の中で動き回った者に与えられるスキル。ある一定の速度に達した瞬間に世界は君を忘れ、世界に自分を刻み込める。スピードに補正【+100】。


 スクラップ魔法:スクラップを召喚する魔法。魔力に適性種族以外に対するマイナス補正【-300】。15/100


 光魔法:妖精王国(フェアリーテイル)の妖精にのみ許された魔法。破邪の力。スキル経験値なし。


 妖精の祝福(フェアリーギフト):三回だけ使えるスキル。特定の人物に特殊スキル:【妖精の加護】【妖精の愛】【妖精の心】を与える事が出来る。契約者の全てのステータスに補正【+50】


 ──────────────────────


 うん、御愁傷様である。絶望である。自分の掌に収まってしまうような小さな妖精がマイナス補正を受けて魔力が700。


 しかも本来なら状態異常の【凶暴化】による補正も、デメリットを元種族補正によって無効化し、恐らく性格が悪戯好き程度になった状態で自分より遥か高みにいたのだから、落ち込んで当たり前だ。


 ざまぁ!


 さて、疑問に思う方もいるだろう。何故彼女は強酸雨に溶けなかったのか?


 避けたのである。


 空中を踊る様にして雨の弾幕を掻い潜り、そのスピードで持ってストーダ大廃棄場の地下第一階層まで行き、雨が止むのを待っていたのだ。その間、自分にちょっかいを出してきたモンスターを蹴散らし、時には逃げて悪戯を仕掛けながら。


 そして、雨が止んだ瞬間に出て来た時に目にしたモンスター。彼に彼女は興味を持ち、恋に落ちた。


 《了解。……Levelが上がりました。現在のステータスを表示しますか?》


「はい! 急ぎで!」


「ピィ!?」


 急に天上に向かい叫び、俯いていた顔を上げた事により、スクラップフェアリーは彼の頭の中に遠心力で突っ込んだ。


「あ、悪い。大丈夫か?」


「ピィ〜……!」


「ご、ごめん」


 頭の中から恨めしい声でさめざめと泣き出した彼女に「やってしまった……」とヘルメット頭を片手で撫でながら謝るスクラップ。


 自分より年下と思った者には比較的優しい面を覗かせる。理想兄のスクラップなのであった。


 《……こちらが、現在の貴方のステータスです》


 こちらは嫉妬という意味での恨めしい声を出しながらスクラップに伝える声。


 今度は私情を挟んできたね。目の前でイチャイチャされるのは? やっぱり嫌? 恋人に謝るみたいなシチュにしか見えない? 正ヒロインは私? 駄目、職務怠慢? 降臨する? 仲間になる?


 じゃあその装備(妖精殺し)は何だ? JK?


 ────────《ステータス》───────


 種族:スクラップゴースト《個体名:洲倉 風》


 Level:07/20


 経験値:50/70


 体力:225/225【最高】


 スタミナ:235/235【最高】


 魔力:450/450【最高】


 攻撃力:235/235【最高】


 防御力:236/236【最高】


 スピード:235/235【最高】


 生命力:01[×5=2|<9々/〆|2々48=5【究極】


 《妖精化:魔力に補正【+50】。不老。【相互生命(リンクライフ):何方も生きている限り死なない。お互いが生きている間は傷付いても即時治癒される】》


【契約主:スクラップフェアリー】


 ────────《スキル一覧》───────


 強酸防御:酸による肉体の損傷を無くす。防御力に補正【+10】。9/100


 昏睡耐性:あらゆる現象、攻撃に気絶しなくなる。防御力に補正【+5】。1/100


 運動効率:運動効率を上昇させ、スタミナの消費を軽減させる。スタミナとスピードに補正【+10】。67/100


 来訪者:他の世界よりやって来た来訪者自身や魂に与えられるスキル。一部スキルが優遇される。スキル経験値なし。


 未練:死者限定のスキル。この世にやり残した未練が残っている者に与えられるスキル。未練が満たされた時、君は進化する。10/100


 ステータス閲覧:来訪者専用のスキル。自分のステータスのみ閲覧できる。スキル経験値なし。


 ○○の声:来訪者専用のスキル。あらゆる問いに答え、明確な正解を返す声が聞ける。スキル経験値なし。


 妖精の加護:Levelの上限が種族値の最高Levelの4倍になる。獲得する経験値が倍になる。妖精は誠実な者のみに加護を与える。全てのステータスに補正【+50】。


 妖精の愛:体力とスタミナ、魔力が回復し続ける。妖精王国(フェアリーテイル)への(ロード)を開ける。妖精は真の愛を知る者だけに愛を示す。全てのステータスに補正【+100】。


 妖精の心:契約した妖精と添い遂げる。状態に《妖精化》が常時発動。魔力に補正【+200】。純真無垢な妖精の心は愛する者のみに送られる。


 強敵殺し(ジャイアントキリング):自分より格上の敵を倒した者に与えられるスキル。どんな方法であれ、勝利は勝利だ。攻撃力に補正【+10】。体力に補正【+10】。


【常時発動】【自分よりLevelの高いモンスターに与えるダメージ量がX倍になる。


 X=(《スキル取得時に倒した敵のLevel》−《スキル取得時に相手を倒した時の自分のLevel》)】

 ──────────────────────


「……は?」


 チートここに極まれり。


 何と1日にして最強(ローマ)はなってしまった。


 これ君の仕業? え? 違う?


 ……完全に彼の純然たる実力と運により掴み取った結果らしい。


 と言うか未練が10増えてるぞ。キスか、可愛い子にキスされて10も増えるか。


「俺の未練て、女の子とイチャイチャする事だったのか……!」


 戦慄した様子で光る板を両手に持ち凝視する。


 そしてふと立ち上がり、板を上に掲げて宣言した。


 すると空を覆っていた雲から晴れ間が見え、陽光が主人公に降り注ぐ。その光景はまるで漫画の主人公が声高らかに宣言する名シーンの様。


「よし、ピピ子。強くなるぞ、俺は!」


「ピピピ? ピピィ?」


 フルフェイスの中から喋るフェアリー。彼女の言葉を訳せば、「ピピ子? 私の名前?」と言ったところだ。


「強くなって、女冒険者とイチャイチャするんだ!」


「ピィ!? ピィピ、ピピィ!! ピピピ!?」


 ……うん、なんか前向きになった。アレな方向に。しかも正妻ポジに何気無く収まったフェアリーは、フルフェイスから飛び出し彼の顔の前で「浮気は許さない! でも名前ありがと!」 と身体全体で表現していた。


 ん? ステータス一覧を消したが、顔は上を向いたまま? 声に何を聞く気だ?


「声さん! 進化先はどうなった!」


 あぁ!? また!? 何でこんなに勘が冴えてるんだ!?


 《……》


 あれ?


「あれ? 声さん? どうした!」


 声の主から応答がない。何故だ?


 ん? 手紙? 「降臨します。戻りません。妖精マジ許すまじ」


 ……ぇええええええええええええええ!!!!????


 雲間から降りる陽光を、人は「天使の梯子」と呼んでいる。それは天使が人間界に降臨する際に見られる現象だと、信じられていた。


 ここ異世界では、その通りの意味で使われる場合がある。


「ん? なんか空から、降りてきた? 見えるかピピ子?」


 だああぁぁぁあ!!?? しかも妖精殺しが無い!? 本気だ!? マジだ!? ヤバい、止めねば!!


「うお!? 何だ!? あっちにもなんか降りてきた!?」


「洲倉 風さん?」


「うお!? な、何すか?」


「どうも、天使です」


「え?」


「妖精を殺しにきました」


 待て待て待て!! 終わっちゃう!? この物語、終わっちゃう!?

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